天童荒太の長編小説(1995年新潮社刊、第9回山本周五郎賞)を原作として、2014年7月4日~9月5日の毎週金曜日22:00~22:54に「金曜ドラマ」枠で放送。全10回。主演は松雪泰子で、ドラマ版は文庫改訂版を基に大石静らによって脚本化され、2014年版のリライトという形でいくつか設定を変えてテレビドラマ化された。
家族狩りの原作
高校教師・巣藤浚介は、恋人と家庭をつくることに強い抵抗を感じていた。馬見原光毅刑事は、ある母子との旅の終わりに、心の疼きを抱いた。児童心理に携わる氷崎游子は、虐待される女児に胸を痛めていた。女子高生による傷害事件が運命の出会いを生み、悲劇の奥底につづく長き階段が姿を現す。山本賞受賞作の構想をもとに、歳月をかけて書き下ろされた入魂の巨編が、いま幕を開ける。
家族狩りの原作を読んだ人の感想
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読者にこの大冊のページをたゆみなく繰らせる作者の力量は、現在の日本の小説界でも屈指のものだ。
『幻世の祈り―家族狩り〈第1部〉』(新潮社)(中条 省平) -
「そういうことをされた人たちが成長したら、何が起きるのだろう?」
天童荒太さんの見た光。(ほぼ日インタビュー) -
普通、主人公の周りのキャラクターはあやふやだったりするものですが、家族構成や行動、仕草まで、ひとつひとつ細かく描かれていました。
篠田麻里子インタビュー(cinemacafe.net)
ドラマ 家族狩り
あらすじ
警視庁捜査一課の刑事・馬見原光毅は、子供による連続一家心中事件を調べるうちに、現場に2種類の臭いが漂っていることに気づき、そのひとつである香水を児童心理司・氷崎游子から感じ取って疑う。一方、游子は高校生の芳沢亜衣との関わりを通じて美術教師の巣藤浚介と出会う。游子の家は認知症の父・清太郎の介護と母・民子の介護疲れで崩壊しつつあったが、浚介や彼の元教え子・鈴木渓徳らとの交流を通じて前向きに変化する。しかし浚介が同僚の清岡美歩に結婚を迫られていた。
馬見原もまた家庭が崩壊し、心を病む妻・佐和子を支えつつ、DV被害を受けた冬島綾女・研司親子との間に、亡き息子と結べなかった関係を見出していた。馬見原は綾女の元夫でヤクザの油井善博に逆恨みされ、綾女たちを守るために奔走する。油井は佐和子に冬島親子の存在をほのめかし、綾女と対決した佐和子は苦悩の末自殺未遂に追い込まれる。
一方、学校が不登校生徒の切り捨てを図る中、游子と浚介は、引きこもりの生徒・実森勇治の心を開いたが、登校した勇治は担任の美歩や他の生徒に傷つけられ再び引きこもってしまう。電話相談ボランティア・山賀葉子の助力の甲斐もなく、実森家の家族は改善せず、ついには一家心中に。浚介は馬見原に任意同行され、事件現場の甘い香りの正体が游子の使うシャンプーと同じで、7年前に担当家族が一家心中した過去を持つ游子が疑われていることを知って衝撃を受ける……。
10話に収まっているのは驚異的。終盤の畳みかけがすごい。(ドラマ 家族狩りの感想)
Tverの名作ドラマ特集で再見(今では配信は存在しない)。
いつもながら眉をひそめっぱなしの 松雪泰子が抱えるヒロインの闇が深く、繰り返し使われている、中央線車輌の光に照らされながら暗い線路横を歩くカットが良い。中盤の 伊藤淳史と邂逅するシーンで、その暗い表情をモンタージュするという凝りようである。
原作は未読だが、 大石静は慎重かつ大胆にアレンジを加えていると思われる。主軸の連続一家心中事件のほか、松雪の家族問題、伊藤淳史と 山口紗弥加の問題、 岡田浩暉親子の問題、 遠藤憲一夫婦の問題、遠藤憲一とヤクザの 谷田歩、その情婦 水野美樹との関係など複数の人間関係を手際よく描き分けている。これに美少女 中村ゆりか(「 まれ」に出演する前年である)など問題児を抱える家庭の描写ほかが細かく伏線付きで入るので、10話に収まっているのは驚異的と言える。松雪を犯人にミスリードする手並みも鮮やかだし、終盤の畳みかけがすごい。
初見の際に興奮させられたのは、 藤本隆宏の白アリ駆除業者と 財前直見のボランティア相談員の家屋が、物理的に裏手で繋がっているという 江戸川乱歩的な構造だった(原作ではただの「隣人」という設定なのではないか)。このあたり、なぜか 黒沢清「 クリーピー 偽りの隣人」風ですらあると思う。
ところで、子どもの家庭内暴力が印象的なサスペンスドラマとしては 杉咲花の「 夜行観覧車」(2013)がある。当時の世相かと思って発生件数推移を見ると、2013年から現在に至るまでみごとにうなぎのぼりの状況となっている。特に増えているのは小学生によるものだ。
キャスト
主要人物
氷崎 游子(東京都児童ケアセンター職員) – 松雪泰子(幼少期: 住田萌乃)
巣藤 浚介(桐明学院高校美術教師) – 伊藤淳史
馬見原 光毅(警視庁捜査一課刑事) – 遠藤憲一
氷崎游子の関係者
氷崎 清太郎(游子の父親) – 井上真樹夫
氷崎 民子(游子の母親) – 浅田美代子
山賀 葉子(ボランティア相談員) – 財前直見
駒田 幸一(玲子の父親) – 岡田浩暉
駒田 玲子(游子が保護した少女) – 信太真妃
大熊(一時保護所保育士) – 宮地雅子
青木(氷崎游子の上司) – 樋渡真司
大野 香一郎(山賀と大野の息子) – 私市夢太(少年期: 込江海翔)
大野 甲太郎(「大野白蟻工業」経営者) – 藤本隆宏
巣藤浚介の関係者
鈴木 渓徳(浚介の元教え子) – 北山宏光
清岡 美歩(桐明学院高校現代国語教師) – 山口紗弥加
芳沢 亜衣(桐明学院高校の女子生徒) – 中村ゆりか
芳沢 孝郎(亜衣の父) – 二階堂智
芳沢 希久子(亜衣の母) – 相築あきこ
実森 勇治(男子生徒) – 岡山天音
実森 智代(勇治の母) – 占部房子
実森 貞男(勇治の父) – 佐伯新
鈴木 佳苗(渓徳の妻) – 松浦雅
岡村 仁(桐明学院高校体育教師) – 市川知宏
馬見原光毅の関係者
馬見原 佐和子(馬見原の妻) – 秋山菜津子
石倉(馬見原) 真弓(馬見原の娘) – 篠田麻里子
冬島 綾女(DV被害者のシングルマザー) – 水野美紀
油井 善博(綾女の元夫) – 谷田歩
椎村 栄作(刑事) – 平岡祐太
藤崎 真一(警視庁刑事部捜査一課課長) – 飯田基祐
石倉 鉄哉(真弓の夫) – 佐野和真
長峰(暴力団員) – 菅原卓磨
馬見原 勲男(馬見原の亡き息子) – 岡山智樹
冬島 研司(綾女と油井の息子) – 須田瑛斗
問題家庭の家族たち
光島 マサル(光島家の息子) – 三宅史(第1・9話)
麻生 達也(麻生家の息子) – 富永愛弥(第1・9話)
スタッフ
原作 – 天童荒太『家族狩り 第一部〜第五部』(新潮文庫刊)
脚本 – 大石静、 泉澤陽子
音楽 – 林ゆうき、橘麻美
演出 – 坪井敏雄、 山本剛義、 伊藤雄介
主題歌 – androp「Shout」(WARNER MUSIC JAPAN / unBORDE / respire)
劇中使用曲 – 尾崎豊「I LOVE YOU」
撮影 – 森哲郎
音響効果 – 佐藤秀国
美術 – 青木ゆかり
広告宣伝 – 磯谷昌宏
演出補 – 北川学、近藤一彦、大畑真治、石角紗希、西岡衣舞、松田健斗
プロデュース – 植田博樹、 長谷川晴彦(ROBOT)
制作プロデュース – 安田邦弘
制作協力 – ROBOT
製作著作 – TBS
ドラマ 家族狩りを観た人の感想
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あー、私も伊藤淳史演じる巣藤先生のように 結婚できないかもなぁ
大人と子供と「家族狩り」 -考察ー(「無」から生まれるもの) -
怨霊や怪獣と壮絶な闘いを繰り広げるホラー映画か怪獣映画を見ているような気がしてきた。
引きこもりの心を動かした裏DVD(木俣冬) -
その価値観の押しつけは、支援する人間がうっかり落ち込みかねない落とし穴でもある
「家族狩り」を見終えて:ある井上真樹夫ファンの感想(やわらかな風の吹く場所に:母乳育児を応援)