松本清張の短編小説(小説新潮1963年5月号掲載、同年10月『眼の気流』収録)を原作に、「松本清張 作家活動40年記念 ドラマスペシャル・たづたづし」のタイトルで、1992年1月7日、日本テレビ系列の「火曜サスペンス劇場」枠(21:03-22:52)にて放映。視聴率17.0%。
また『愛のきずな』のタイトルで1969年に東宝で映画化、他に2本のテレビドラマがある。
「たづたづし」は、万葉集の「夕闇は 道たづたづし 月待ちて 行ませ我が背子 その間にも見む」からで、「はっきりしなくて不安である」の意。
たづたづしの原作
たづたづしの原作のあらすじ
最近課長に昇進したばかりの32歳の「わたし」は24歳の平井良子という女性と関係を持つが、自分には夫がいて恐喝傷害で刑務所に入っており、あと1週間で出所すると告白される。社会的立場の崩壊を恐れたわたしは、良子を長野県富士見駅近くの山林に連れ出して首を絞めたが、数日経っても新聞に良子の死体発見の記事が出なかった。徐々に不安になってきたわたしは長野県の地方紙を調べ始めたが、驚くべき記事がわたしの目に入った。
たづたづしの感想
63年発表の清張短編が原作。「愛のきずな」のタイトルで69年に映画化(原千佐子)され、ドラマは十朱幸代版(78年)、本作(92年)、牧瀬里穂版(02年)がある。
タイトルは万葉の「夕闇は 道たづたづし 月待ちて 行ませ我が背子 その間にも見む」から来ている。つまり情深い女の家に通い婚する話である。
農林省の役人(古谷一行の凡庸さがうまい)はふとしたことから幸薄い吉川十和子(君島姓になる3年前)と知り合い、武蔵境駅北口の水車(玉川上水なのだろう)の傍らにある女の家に通いつめ(妻のいる自分の家があるのは南口)、ついに結婚を迫られて窮し、上諏訪まで呼び出して絞殺する。
しかし吉川は記憶喪失になって生き返り、古谷はわざわざ上諏訪まで彼女を連れ戻しに行く(古谷のことを覚えていないのにまた吉川をアパートに囲ってしまう古谷の心理は説明不能である)。
その後、吉川は出所した夫(がいたのだ)とヨリを戻しながらも古谷の子を生んで30年が経過。吉川を忘れられなくて仕事に身が入らず、ぱっとしないままヒラ役人で退職した古谷の、一生を棒に振ったかのような佇まいがラストカットという、なんだか身につまされるストーリーで、男の人生のむなしさ全開である。
たづたづしのキャスト
新田順三:古谷一行
平井良子:吉川十和子
新田美奈子:佳那晃子
平井晃:内藤剛志
江藤課長:津嘉山正種
渋谷一三(営林署長):山谷初男
平井順(良子の息子):山口仁
嵯峨周平、志賀圭二郎、町田真一、松田朗、加藤満、高橋ひろ子、吉本選江、石井富子 ほか
たづたづしのスタッフ
脚本:宮川一郎
演出:嶋村正敏(日本テレビ)
企画:小坂敬、松本陽一
プロデューサー:嶋村正敏、松村あゆみ(日本テレビ)、森敏樹、坂梨港(電通)
音楽:大谷和夫
制作協力:NTV映像センター
製作著作:日本テレビ