1958年のアメリカ合衆国のサスペンス映画。原題は「Vertigo」。監督はアルフレッド・ヒッチコック、出演はジェームズ・ステュアートとキム・ノヴァクなど。パラマウント映画製作。テクニカラー、ビスタビジョン作品。後に、他の多数のヒッチコック作品と共にユニヴァーサルに売却された。日本公開は同年。原作はフランスのミステリー作家、ボワロー=ナルスジャック(ピエール・ボワロー、トマ・ナルスジャック(フランス語版))の『死者の中から(フランス語版)』。タイトルデザインはソール・バスによる。舞台はサンフランシスコを中心に繰り広げられる。
めまいのあらすじ
「スコティ」ことジョン・ファーガソン刑事は、容疑者を追う途中に同僚をビルから転落させ死なせてしまったショックで、高所恐怖症によるめまいに襲われるようになり、警察を辞めてしまう。そこへ学生時代の友人エルスターが現れて、何かに憑かれたかのように不審な行動をする妻マデリンを監視して欲しいと言う。スコティはマデリンを尾行するうちに、彼女の曾祖母であり過去に非業の死を遂げた人物、カルロッタの存在を知る。カルロッタは髪型から首飾りまでマデリンそっくりで、スコティはエルスターから「マデリンはカルロッタの亡霊に取り憑かれている」とする見解を聞かされる。
尾行を続けるうち、彼女は公園から突然海に飛び込み、投身自殺を図った。彼女を救ったスコティは恋に落ちる。スコティは彼女を救おうと、マデリンが夢で見たと言うスペイン風の村へ向かう。到着後、マデリンはカルロッタの自殺した教会へと走っていく。スコティは追いかけるが、めまいのために追いつけず、マデリンは鐘楼の頂上から身を投げてしまう。マデリンの転落は事故と処理され、エルスターは彼を慰めながら、自分はヨーロッパへ行くと告げる。
自責の念から精神衰弱に陥ってマデリンの影を追いかけ続けるスコティは、ある日、街角でマデリンに瓜二つの女性を発見。彼女はかつてマデリンの通っていたカルロッタの旧居のアパートに住む、ジュディという女だという。スコットはジュディとデートの約束を取り付ける。
スコティは第2のトラウマを抱えて、精神衰弱から次第に正気を失っていくが、ジュデイは次第に彼を愛してしまっていた。ジュディはスコティの狂気じみた要望に応え、洋服、髪型、何もかもをマデリンと同じにし、死んだはずの「マデリン」へと次第に変貌していく。
ジュディとスコティの歪な愛は破綻を迎える。ジュディのネックレスは、マデリンがカルロッタのものとして身に着けていたネックレスだった。スコティに「マデリン」として会っていたのは、他ならぬ彼女自身だったのだ。高所恐怖症のスコティを利用した妻殺しの完全犯罪にジュデイは加担していたのである。真相を知ったスコティはマデリンが投げ落とされた教会へジュディを連れて行き、彼女を問い詰める。高所恐怖症を克服して鐘楼の頂上でジュディに迫るスコティ。しかし、そのとき暗がりから突然現れた修道女におびえたジュディは、バランスを崩して転落するのだった。
めまいの感想
ジェイムズ・スチュアートにいっぱい食わせたからくりが、後半に入ってすぐ、キム・ノヴァクの回想によって明かされる。終盤まで種明かしはしない方がいい、とスタッフはさんざん進言したそうだが(ボワロー=ナルスジャックの原作からしてそうなのだ)、ヒチコックは頑としてこの構成を変えなかったという。結果、前半と後半で主客が転倒し、サスペンスの内容も異なる映画になった。上映時間も2時間を越え、前半と後半の美しいノヴァクの心の動きをバーナード・ハーマンの音楽がつないでいる。
有名な「めまいショット」は横倒しにしたミニチュアセットをドリーズームしているそうだが、やはり映画は縦の運動を表現するのに向いていないということか、とあらためて思ったり。
めまいのキャスト
ジョン・“スコティ”・ファーガソン – ジェームズ・ステュアート
マデリン・エルスター/ジュディ・バートン – キム・ノヴァク
ギャヴィン・エルスター – トム・ヘルモア
マージョリー・“ミッジ”・ウッド – バーバラ・ベル・ゲデス
検死官 – ヘンリー・ジョーンズ
めまいのスタッフ
監督 – アルフレッド・ヒッチコック
脚本 – サミュエル・テイラー
原作 – ボワロー=ナルスジャック『死者の中から』
製作 – アルフレッド・ヒッチコック