1950年(昭和25年)8月8日公開の日本映画。当時の新東宝が力を入れていた文芸大作路線の一作で、監督には松竹から小津安二郎が招かれ、小津にとっては初めて松竹を離れて制作した映画となった。ストーリーは大佛次郎の同名小説を原作とし、保守的な姉と奔放な妹とを対比させながら変わりゆく家庭の姿を描いている。1961年にドラマ化もされた。
宗方姉妹の原作
宗方姉妹のあらすじ
京都の寺を間借りする宗方忠親が、娘の満里子に東京での生活を聞いていると、パリ帰りの田代がやってきた。忠親は、妹・満里子の面倒を見たり失業中の夫・三村亮助を抱えてバーで働いている姉の節子の身の上を案じていた。なぜ田代と結婚しなかったのかと満里子が節子に聞くと、自分の気持ちに気づくのが遅かったのだという。夫の亮助は、節子に離婚話を持ちかけ、抗議する彼女を殴ったが、発作で倒れ亡くなった。節子は、田代に夫の死を背負ったままでは再婚できないと打ち明けるのだった。
宗方姉妹の感想
初見。松竹ではなく新東宝で、千石規子と藤原鎌足が出ており、珍しい原作付きでもある(大佛次郎)。キャメラは小原譲治という人で同年に溝口の「雪夫人絵図」を撮っている。ごく短い移動撮影のシーンが前半とラストにあった。
カタクナな古風な姉を演じる田中絹代だが、実は笠智衆と5歳しか違わないにもかかわらず、毛皮コートでアメリカから帰国して取材陣に投げキッスしたことからバッシングされていた時期であり、小津の演技指導もことのほか厳しかったので、ロケバスに同乗した際に死にたいと漏らしていた、と高峰秀子(14歳も歳下)は書き残している。その高峰秀子もベロの出し方でかなりのダメ出しをされていたとか。
しかしまあこの映画で目を引くのは、眼帯でとりわけニヒルにキメた山村聰のDVぶりである。今回本作を見たのは、東京国際映画祭の特別企画で黒沢清がこの映画の暴力に言及していたからだった。ラスト近くで山村の死を確認しに高峰が階段を上がり、悲鳴をあげるシーンも良い(いつもの不在の階段がダークな装置になっている)。
黒沢清が言うように本作の登場人物は断絶していて、決して交わろうとしない。大佛次郎の原作とは大分違うようである。
宗方姉妹のキャスト
三村節子(姉):田中絹代
宗方満里子(妹):高峰秀子
田代宏(神戸の家具屋):上原謙
真下頼子(田代宏の友人 未亡人):高杉早苗
宗方忠親(宗方姉妹<きょうだい>の父):笠智衆
三村亮助(節子の夫):山村聡
前島五郎七 (バーの店員):堀雄二
三銀の客:河村黎吉
教授・内田譲:斎藤達雄
飲み屋三銀の亭主:藤原釜足
藤代美惠子:坪内美子
箱根の宿女中:一の宮あつ子
東京の宿女中:堀越節子
三銀の女中(キヨちゃん):千石規子
宗方姉妹のスタッフ
監督:野田高梧、小津安二郎
原作:大佛次郎
製作:児井英生、肥後博
撮影:小原譲治
美術:下河原友雄
編集:後藤敏男
音楽:斎藤一郎
助監督:内川清一郎
宗方姉妹を観る
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