しとやかな獣

山岡久乃(しとやかな獣)
山岡久乃(しとやかな獣)

1962年12月26日に公開された日本映画。キネマ旬報ベストテン6位。 東京都中央区晴海団地が舞台。新藤兼人の脚本を、大映と仕事をし始めていた川島雄三が首脳部に企画提案して映画化。主人公は、郊外にある文化的な高層団地群の安いタイプのほうに住む4人家族。元日本海軍中佐としての外面を気にする父親は、上品ぶった言葉遣いを崩さない妻を持ち、その息子・実に会社の金の横領を、娘・友子には有名作家の妾暮らしを指南し、その金で暮らしている。彼らを取り巻く登場人物も、偽外人の歌手、不正経理で荒稼ぎする芸能事務所社長、男を騙して旅館経営に乗り出す女など、裏表を使い分け強欲に生きる者ばかり。団地のリビングを定点にワイドスクリーンの効果を巧みに使い、戦後復興から高度成長期を迎えた日本で化かし合い騙し合って生き抜く人々の姿を描く。本編では山岡久乃と伊藤雄之助の家族を軸に展開しており、若尾文子は本編ではあまり登場しない。

しとやかな獣のあらすじ

元海軍中佐の前田時造(伊藤雄之助)は狭い団地の一室で妻(山岡久乃)と暮らしているが、戦後のどん底を経験した彼は子どもたちをあやつり他人の金を巻き上げている。息子の実(川畑愛光)は勤め先の芸能プロから金を使い込んで雲隠れし、社長の香取(高松英郎)が怒鳴り込んでくるが、夫婦は恐縮したふりをしながらやりすごす。娘の友子(浜田ゆう子)は小説家吉沢(山茶花究)の二号になっている。強欲な時造一家にいや気がさした吉沢が知子との縁を切ろうとやってくるが、夫婦は吉沢を言いくるめて巧みに話を納めてしまう。
次にやって来るのは芸能プロの会計係である三谷幸枝(若尾文子)。実や社長の香取を含め、多くの男性と関係を持って金を貢がせ、旅館を開業するための資金を貯めていた。必要な資金が貯まったため実とは手を切ることにしたのである。実は激怒するが三谷は涼しい顔で帰っていく。
銀座のクラブのマダム(ミヤコ蝶々)も、実が吉沢の名刺を悪用して多くの客から金をだまし取っていたことに対して苦情を言いに来るが、時造は追い返す。
翌日には三谷と香取が再びやってくる。税務署員で香取の会社の徴税を担当していた神谷(船越英二)が、三谷のために業務上の不正を働いていたことが発覚して税務署をクビになったことが明らかになったのだ。真面目な神谷も三谷と関係を持っていたのである。神谷が自殺でもしたら警察が動き出し、三谷との関係も、香取が密かに行っていた脱税も公になってしまうだろうと一同は怖れる。
三谷と香取が帰った後、その神谷がやってくる。神谷はこれから警察に行ってすべてを話すと告げて家を出るが、ためらった後に階段を屋上へと上っていく。
やがて団地に救急車のサイレンが聞こえてくるのだった。

しとやかな獣の感想

昨年、若尾文子特集としてテレビ放映されたのを今頃見て、若尾より肉感的な浜田ゆう子のほうが魅力的だったのだが、やはり青年座の舞台でも同じ役を務めた山岡久乃と、高松英郎の悪びれたところのない、すっとぼけた芝居が愉快。
原作・脚本は新藤兼人で、舞台は晴海高層団地(普通の会社員の2倍の収入がないと入居できなかったそうだ)。登場人物は全員小悪党だが、戦争体験者の高度成長期を描いたコメディとして大変興味深い。
たしか家族全員でオレオレ詐欺をやる単発ドラマを見た覚えがあるのだが、あれはこの映画へのオマージュだったのかな。

しとやかな獣のキャスト

三谷幸枝 – 若尾文子
神谷栄作 – 船越英二
前田友子 – 浜田ゆう子
香取一郎 – 高松英郎
前田実 – 川畑愛光
前田時造 – 伊藤雄之助
前田よしの – 山岡久乃
ピノサク・パブリスタ – 小沢昭一
吉沢駿太郎 – 山茶花究
マダムゆき – ミヤコ蝶々

しとやかな獣のスタッフ

監督:川島雄三
原作・脚本:新藤兼人
撮影:宗川信夫
音楽:池野成
美術:柴田篤二

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