2010年のスペイン映画で、スペインでは2週連続1位となった大ヒットサスペンス・ホラー。監督は、本作が長編監督2作目となるスペインの新鋭ギエム・モラレス。製作を手掛けたのは、ダークファンタジーの雄ギレルモ・デル・トロ。原題は「Los Ojos de Julia」。主演はデル・トロ製作による「永遠のこどもたち」のベレン・ルエダ。
ロストアイズのあらすじ
夫のイサクと幸せに暮らすフリアは先天性疾患のため徐々に視力を失いつつあるが、同病の双子の姉サラが首を吊って自殺。納得できないフリアは、サラが通っていた盲人福祉センターへ行くが、誰かに後を付けられたことから発作を起こし、ますます視力が衰える。ストレスで発作が起きれば病状が進行してしまうが、フリアはサラが恋人と泊まったホテルで情報を集める。レストランのウエイターによれば、サラは目に包帯をしていて手術をしたと言っていたとのこと。フリアは姿を現さない恋人の存在に疑いを深める。
ホテルの使用人から鈴のついた鍵を渡され、サラの連れの男は誰からも気づかれない透明人間のような男だと聞いたフリアは、背後に気配を感じるが、またしても見失ってしまった。
フリアは、監視カメラの映像をチェックするためにホテル近くの駐車場へ向かうが、なぜかイサクは姿を消し、映像は何者かに持ち去られてしまう。サラの恋人を覚えている唯一の証人も何者かによって風呂で感電死させられた。
全ての黒幕はサラの恋人だと確信したフリアは、再び老婦人ソレダドを訪ねると、彼女は夫に捨てられ、10年面倒を見てくれた息子アンヘルだけがも消えた、という身の上話を始める。
その後、失踪していたイサクがサラの家の地下で首を吊って自殺し、フリアはついに視力を失ってしまう……
ロストアイズの感想
もう20分短くできたら傑作になっていたかもしれないサスペンスで、前半はなぜか「サスペリア」のオマージュなのかと思わせる陰鬱な展開。登場人物が全員怪しく思えてくる中盤はそっくり要らんやろ。後半は随所にヒチコック的な伏線と描写がてんこ盛りになるのだが、クライマックスがかなりしつこく、犯人とヒロインのスタミナ勝負一騎打ちみたいになる。ホラーゲームはホラームービーの模倣だったわけだが、今は一周して映画がゲームを模倣していると思わされる。
ヒロインのベレン・ルエダは「だんだん失明していく」「ショックを受けると一気に視野が狭窄する」という映画的に都合の良い設定で、前半はトイカメラふうの主観ショット、手術して包帯の人になってからは、手で触れられる範囲のものしか映さないフレーミングで描写され、観客を引き込んでいく仕掛け。
犯人は「誰の目にも見えない男」なので(ロバート・ベンチリーのスケッチなどに出てくる「レストランに入ってもボーイが注文を取りに来ない男」だ)、これは窃視についての映画であると言える。見られないはずの犯人は見られた瞬間に存在意義を失うわけで(だから犯人は盲人に固執する)、見られない存在がもっぱら一方的に見る(犯人はヒロインの失明を自分の目で確認することしかできない)ということになるからだ。映画の中盤には、盲女たちの更衣室に迷い込んだヒロインが意図せずに女たちの噂話を盗み聞く興味深いシーンがあった。映画においては、見る側と見られる側の関係はつねに逆転の運動を内包しているのだ。
ロストアイズのキャスト
フリア/サラ – ベレン・ルエダ
イサク – リュイス・オマール
イバン – パブロ・デルキ
ディマス警部 – フランセスク・オレーリャ
クレスプロ – ホアン・ダルマウ
ソレダド – ジュリア・グチェレッツ・カーバ
ロストアイズのスタッフ
監督、脚本 – ギリェム・モラレス
脚本 – オリオル・パウロ
製作 – ギレルモ・デル・トロ
製作 – ホアキン・パドロ、マル・タガローナ
撮影 – オスカル・ファウラ
音楽 – フェルナンド・ベラスケス
美術 – バルター・ガラート
編集 – ホアン・マネル・ヴィレシカ
衣装デザイン – マリア・レイジェス
音響効果 – オリオル・タラー
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ロストアイズを観た人の感想
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