ガラスの城

波留(ガラスの城)
波留(ガラスの城)

『ガラスの城』(ガラスのしろ)は、松本清張の長編推理小説。雑誌『若い女性』に連載され(1962年1月号 – 1963年6月号)、加筆修正の上、1976年9月に講談社から刊行された。東京都心に勤務する女性社員が、社内旅行中に発生した殺人事件の謎を追うミステリー長編。1977年・2001年・2024年にテレビドラマ化されているが、本稿は『テレビ朝日開局65周年記念 松本清張 二夜連続ドラマスペシャル』の第二夜として、2024年1月4日にテレビ朝日系列で放送されたドラマについて記述している。主演は波瑠。

波瑠だから、と少し期待したのが浅はかで、前夜の「」と同じ「テレビ朝日開局65周年記念 松本清張 二夜連続ドラマスペシャル」なので、似たりよったりの出来だった。CMもろとも本編を飛ばし見してしまったのか、編集がおかしいようにしか見えなかった。とはいえ、中盤で語り手を木村佳乃から波瑠に変えるという原作の2部構成は活かされていたので、なんとか最後まで見た。

殺された商社のやり手部長(丸山智己)は、事務職の部下(波留)から300万も借り、さらに退職金もすっからかんんになっていることが中盤で明らかになるのだが、何に遣ったのかという説明がない。

前半は木村佳乃の語りによって、波瑠や仁村紗和川島海荷をはじめとする4人の一般職と、木村と蓮佛美沙子という2人の総合職が、「会社で働く女の生き方」がきわめて正確に値踏みされる。意地悪な視線は、この時点では、松本清張の筆致をよく表している。6人の女は高給取り(と何度も念を押される)のわりに誰ひとり仕事らしい仕事をしていなくて笑える。この通りなら、カイシャというものは昭和からさほど変化していないことになるのだが、テレビの作り手の不見識とも言える。

しかしまあ、そんな意地悪な木村にも見抜けなかった人間関係があり、さらに木村自身も隠しごとをしている、信頼できない語り手の叙述トリックもあって、後半の語り手である波瑠によって語り手自身が裸にされるところが、本作の醍醐味と言える。ここはかろうじて原作の味を活かしていたか。

とはいえ、会社名や登場人物を実名で記した大胆な日記を、一部上場企業のバリキャリが、PCですらなく、キャバ嬢のようにスマホアプリで記録しているのは違和感がある。しかもネットサービスらしいので、公開を意識したものである。
1962年に雑誌「若い女性」に連載された原作では、前半(第1部)が「手記」、後半(第2部)が「ノート」とされており、職場の花でしかない女子社員がひそかにそうしたものを書き綴っているという設定に、小説的なロマンというか凄味があったと思う。それをキャバ嬢的なアプリ日記として設定したところに、このドラマの無理筋があり、拭いきれない時代錯誤感はそこに端を発している。

ガラスの城 新装版 (講談社文庫)

ガラスの城 新装版 (講談社文庫)

キャスト

主要人物
的場郁子〈31〉 – 波瑠
三上田鶴子〈45〉 – 木村佳乃
鈴木信乃〈31〉 – 蓮佛美沙子
橋本啓子〈28〉 – 川島海荷
田口欣吾〈38〉 – 内野謙太
和島好子〈38〉 – 野呂佳代
浅野由理花〈23〉 – 仁村紗和
杉岡久一郎〈45〉 – 丸山智己
富崎弥大〈40〉 – 塚本高史
野村俊一〈45〉 – 武田真治
池田萌絵 – 佐々木史帆
佐々木誠 – 山口貴也
静岡県警
佐原壮馬〈35〉 – 満島真之介
倉田文則〈55〉 – 高嶋政伸
その他
野村実奈 – 吉井怜
杉岡いずみ – 片岡礼子
富崎玲子 – 沢井美優
浅野絵未子 – 川俣しのぶ
林田徳治 – 遠山俊也
小柳泰造 – 本間剛
青山俊一 – 馬庭良介
レポーター – 志田美由紀

スタッフ

原作 – 松本清張『ガラスの城』(講談社文庫)
脚本 – 大森美香
音楽 – 木村秀彬
監督 – 樹下直美(アズバーズ)
ゼネラルプロデューサー – 横地郁英(テレビ朝日)、大江達樹(テレビ朝日)
プロデューサー – 神田エミイ亜希子(テレビ朝日)、目黒正之(東映)、土井健生(東映)
制作 – テレビ朝日、東映

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