山田太一の小説を原作として、2024年9月21日に「テレビ朝日開局65周年記念」として、テレビ朝日系列で放送。主演は大泉洋。2024年9月度ギャラクシー賞月間賞を受賞。同期には同じく宮藤官九郎脚本の『新宿野戦病院』(フジテレビ)も月間賞を受賞。宮藤は1月期の『不適切にもほどがある!』(TBS)、6月期の『季節のない街』(Disney+ / テレビ東京)に続く3クール連続の月間賞受賞となった。
終りに見た街の原作
東京近郊に住む平凡な家族は、ある朝、戦時中(昭和19年)の日本にタイムスリップしていた――信じられないようなSF的設定で始まる問題作。家族が投げ込まれた世界は、戦時下の「食糧不足」「言論統制」「強制疎開」「大空襲」の時代だった。憎むべき〈戦争〉の時代に、〈飽食した〉現代人はどう立ち向かうのか。太平洋戦争末期、敗戦へと向かう日本を鮮烈に描きながら、驚くべき結末が待ちうける戦慄の寓話。
2024年のドラマ 終りに見た街
あらすじ
脚本家・田宮太一(大泉洋)は、家庭では家族に疎まれつつも、しっかり者の妻・田宮ひかり(吉田羊)、思春期真っただ中の娘・田宮信子(當真あみ)、反抗期が始まった息子・田宮稔(今泉雄土哉)、そして認知症が出始めた母・田宮清子(三田佳子)とありふれた平穏な日常を暮らしていた。そんなある日、太一は寺本真臣プロデューサー(勝地涼)から『終戦80周年記念スペシャルドラマ』の脚本を無茶ぶりされる。
戦争当時を知らない太一は膨大な資料を片っ端から読み、いつの間にか寝落ちしてしまった。明け方、衝撃音で目を覚ますと、自宅の外には森が一面に広がり、見たことのない光景が広がっていた。そこは太平洋戦争真っただ中の昭和19年6月の世界だった。太一たちはタイムスリップしていたのだ。太一の亡き父の戦友の甥・小島敏夫(堤真一)もまた、息子の小島新也(奥智哉)とタイムスリップしてしまったという。敏夫父子と合流した太一は、戦時下の厳しい現実に直面していく。戦争に突き進む日本で生き延びるためには昭和19年の生活に順応せざるを得ない。持ち前の人当りの良さですぐに仕事を見つけて前向きに動き、ひかりも針仕事などできることを一生懸命やり始める。そんな中、なかなか現実を受け入れられずに抗っていた太一だったが…
感想
売れない脚本家である大泉洋は、なりゆきで書くことになった終戦記念日ドラマの資料を持ったまま、家族(妻と息子と娘、実母、愛犬)もろとも昭和19年6月にタイムスリップしてしまい、エキストラの旧友(堤真一)父子とともに、終戦までの日々をなんとか生き抜こうとする。という前半がクドカンの呼吸で語られるのだが、後半は空気が変わり、まさかの容赦ないバッドエンドに、あらためて山田太一原作であることを思い知らされる。
本作は山田脚本で1982年、2005年の二度ドラマ化されているが、1982年版(ここで見られる)の主人公を演じたのは1940年生まれの細川俊之だったから、ぎりぎり、「戦争を知っている」設定だった。本作では83歳で認知症になりかけの三田佳子が、戦時中の記憶を持つ存在として加わっている。
主人公たちが東京大空襲を下町の人々に知らせようと奮闘する展開や、一家が住む荻窪が記録にない大規模な空襲に壊滅させられ、(おそらくは新型爆弾によって)左腕を吹き飛ばされた瀕死の大泉が目を覚ますと、瓦礫の向こうに東京の高層ビルが(前2作では東京タワーが)見える、というラストは原作と同じ。
「戦争はこんなだったんだ」と主張する、戦争に協力的でない父親たちを、子どもたち(堤の息子と大泉の娘の當真あみら)が辛辣に非難しはじめるクライマックスは、山田脚本でおなじみの世代間断絶の仕掛けだと思うが、もはや2024年の視聴者には届かないかもと思わされた。
勝地涼のプロデューサー(「同じ顔」)の意味はさだかでなく、堤真一(1982年版ではなべおさみ、2005年版では柳沢慎吾が演じる)の何か信用できない感じもひっかかるのだが、タイムスリップなのか主人公の夢なのか、すべては視聴者の想像に丸投げである。今では考えられないが、そういえば昔はそういうドラマが多かった。
キャスト
田宮太一 – 大泉洋w(幼少期 – 小谷興会)
田宮ひかり – 吉田羊
小島新也 – 奥智哉
田宮信子 – 當真あみ
田宮稔 – 今泉雄土哉
五十嵐 – 神木隆之介(特別出演)
先輩俳優 – 田辺誠一(特別出演)
後輩俳優 – 塚本高史(特別出演)
農夫 – 西田敏行(特別出演)
老人 – 橋爪功(特別出演)
寺本真臣 – 勝地涼
田宮清子 – 三田佳子(幼少期 – 松岡夏輝)
小島敏夫 – 堤真一(高校時代 – 望月春希)
黒焦げで死んでいく男 – 猪野学
小島敏彦 – 奥智哉(二役)
憲兵 – 小久保寿人、佐藤祐基
小島敏夫の父親 – 緋田康人
新也の同僚のミリタリー系ユーチューバー – 篠原悠伸
清子のヘルパー – 伊田臣弥
防空壕に避難した被災者 – 真織、阿南敦子、松本享子
工員 – 吉成浩一、小沼朝生
スタッフ
原作 – 山田太一『終りに見た街』(小学館文庫刊)
脚本 – 宮藤官九郎
演出 – 片山修
時代考証 – 天野隆子
風俗考証 – 刑部芳則
軍事指導 – 越康泰
アクションコーディネーター – 富田稔
エグゼクティブプロデューサー – 内山聖子(テレビ朝日)
プロデューサー – 中込卓也(テレビ朝日)、後藤達哉(テレビ朝日)、山形亮介(角川大映スタジオ)、和田昂士(角川大映スタジオ)
制作協力 – 角川大映スタジオ
制作著作 – テレビ朝日
2024年のドラマ 終りに見た街を観た人の感想
- ドラマ「終りに見た街」を見た。ものすごく後味が悪いけど、多分見て良かったんだと思う。(オカダトモコ 旅が好きなライター / カメラマン)
- 「終わりに見た街」確かに、今は戦後なのである。そして、アメリカも救ってくれない戦後なのだ・・。(陽向走太(谷口浩之)
- 終わりに見た街の意味がわからない【ラスト考察】意味不明・どういうこと?(漫画ラーン!)