2000年8月12日に劇場公開された日本映画。阪本順治監督が喜劇女優・藤山直美を迎え、初めて女性を主人公にして作り上げた異色の犯罪映画。2000年度の日本国内の映画賞を多数受賞。福田和子の事件をベースにしている。
顔のあらすじ
35歳になっても家に閉じこもっていた冴えない女性が、衝動的に妹を殺害してしまったことをきっかけに家を出て逃亡する。初めて飛び出した外の世界を転々としながら、さまざまな人たちとの出会いによって人の温かみと生きる意欲を見出していく。
顔の感想
2000年の阪本順治作品で、主演は藤山直美である。助演は豪華で、佐藤浩一、トヨエツ、大楠道代、牧瀬里穂、岸辺一徳、そして國村隼などが良い演技をしている。
藤山は同年のNHK朝ドラ「オードリー」で椿屋住み込みの君ちゃんを演じていて、國村は大京映画社長だったのだが、本作の國村が若々しいのに驚いた(私は意外だったのだが、「ブラックレイン」でヤクザを演じた國村は、実は松田優作より年下なのだ)。國村隼は阪本作品の常連でもあり、藤山は國村との共演が多い(6年後の朝ドラ「芋たこなんきん」では夫婦である)。
本作は15年逃走して時効寸前に逮捕された福田和子をモデルにしていると言われる(劇中、一徳が経営するラブホで藤山が働いているところに警官が福田の手配書を置いていくシーンがある)。福田は松山で同僚ホステスを絞殺し、石川では和菓子屋の後妻(内縁)におさまったりもしつつ、近畿、中国、北陸など全国を転々としたのだが、本作の藤山は、神戸尼崎で妹を殺した後は阪神大震災で棲家を失い、大阪梅田、弁天町から別府まで逃げ、さらにフェリーで姫島に渡る。この彷徨は「0.5ミリ」を思わせた(もちろん安藤サクラの映画の方が後)。
冒頭、死んだ目でミシンを踏みながらぼんやりと夢想するだけの引きこもりだった藤山が、さまざまな人と関係する中でたくましく解放されていく様子を映画は淡々と映し出す。自転車に乗れるようになる、泳ぎができるようになる、というのが藤山が望んだことで、この二つのシーンが非常にいい。
阪本順治が次に藤山を主役に据えるのは16年後の「団地」である。これも未見なので見てみたい。
顔のキャスト
吉村正子 – 藤山直美
池田彰 – 佐藤浩市
中上洋行 – 豊川悦司
中上律子 – 大楠道代
狩山健太 – 國村準
吉村由香里 – 牧瀬里穂
吉村常子 – 渡辺美佐子
山本俊郎 – 中村勘九郎
花田英一 – 岸部一徳
狩山咲子 – 早乙女愛
喫茶店の女 – 内田春菊
島の警察官 – 中島陽典
川越美和、水谷誠伺、中沢青六、正司照枝、九十九一、黒田百合 ほか
顔のスタッフ
監督:阪本順治
原案:宇野イサム
脚本:阪本順治、宇野イサム
音楽:coba
プロデューサー:椎井友紀子
撮影:笠松則通
美術:原田満生
照明:石田健司
録音:橋本文雄
編集:深野俊英
スクリプター:今村治子
助監督:井川浩哉、高橋正弥、宮田宗吉、大森立嗣
音響効果:東洋音響カモメ(伊藤進一、小島彩)
現像:IMAGICA
スタジオ:日活撮影所
ロケ協力:東日本旅客鉄道、西日本旅客鉄道、九州旅客鉄道、東海旅客鉄道、日本貨物鉄道、十日町市、別府市観光課、九州自然動物公園アフリカンサファリ ほか
製作者:宮島秀司、石川富康、寺西厚史、中沢敏明、椎井友紀子
協力:山下敦弘
顔を観る
顔を観た人の感想
- アナログ派の愉しみ/映画◎藤山直美 主演『顔』(堀間善憲)
- 何が何でも生きる。映画「顔」2000年日本、阪本順治監督を観て(定年オヤジ、映画小説女子マンガ、華道部活動、痛ブログ)
- 阪本順治監督 「顔 (2000)」(荒雑録)