2016年度後期放送のNHK「連続テレビ小説」第95作で、2016年10月3日~2017年4月1日に放送。ヒロイン・坂東すみれのモデルは神戸のアパレル・メーカー「株式会社ファミリア」創業者のひとり坂野惇子。昭和時代の兵庫県神戸市や大阪や近江などを舞台に、戦後の焼け跡の中で子ども服作りに邁進する姿を描く。芳根京子が2261人の中から選ばれたと発表された。芳根の連続テレビ小説への出演は2014年度上半期『花子とアン』に次いで2度目。
べっぴんさんのあらすじ
1934年(昭和9年)、神戸山の手の屋敷で裕福な生活を送っていたすみれは、入院中の母のために刺繍を縫うが上手くできず、使う人への想いを込めて作ることが大事と靴職人から助言され、もらった人が嬉しいと思える「べっぴん(別品)さん」を作る人になりたいと誓う。
1942年(昭和17年)、すみれは女学校の友人たちと手芸倶楽部を結成。幼馴染の潔への恋心に気づくが、潔は姉と結婚。すみれも幼馴染の紀夫を婿養子に迎えて結婚、妊娠。夫の出征中に長女・さくらを出産し、育児に奮闘しながら使用人らと家を守るが、戦局が激しくなり近江の父の実家へ疎開し終戦を迎えた。
神戸に戻り夫の帰りを待ったすみれの生活は窮地に陥り、手芸品販売を始めるが不振。子供服店の起業を思いつき、西洋式のおむつを作るため、顔見知りのベビーナース・明美に教えを乞う。更にベビードレス製作の依頼を受けたすみれは、再会した良子と君枝の協力で母の形見ウエディングドレスを切りほどき商品を完成させる。かつての友人たち4人で「ベビーショップあさや」を開店させる。定期的に育児相談会を始めるなどして客は増え、店名を「キアリス」にした時、消息不明だった紀夫が帰還した。
1948年(昭和23年)、第一次ベビーブームでキアリスは繁盛し、大急百貨店から依頼を受ける。売れない商品は廃棄されること、商品に込めたこだわりが失われることを危惧したすみれは取引をためらうが、10日間限定の委託販売での出店することに。ポスターで子育て世代の呼び込みに成功し、最終日売上は百貨店の予測の3倍になり、百貨店内にキアリスの支店を置くことが決定した。仕事と家事育児をこなすすみれは夜中まで準備に夢中になり、紀夫から平手打ちを食らって夫婦仲も気まずくなり、過労で倒れる。娘の成長や悩みに気づき、夫婦の在り方について考え、従業員たちの充実した様子を見て、すみれは回復後にキアリスを辞める。
1949年(昭和24年)、子供用食器セットが大ヒットし、東京の松島屋デパートからも出店を依頼され、キアリスはアメリカの家具業社と取引を始めるなど、子供用品の総合店を目指していく。
1959年(昭和34年)、皇太子明仁親王の子(德仁)の洋品御用達に指名され、全国から客が訪れるほどの有名店に。しかし取引するメリヤス工場がファッション会社「エイス」に買収され、生産の危機に瀕する。一方、思春期を迎えたさくらはジャズ喫茶やナイトクラブに通うように。すみれに咎められて感情を爆発させ、家出して潔・ゆり夫婦の家に身を寄せ、両親に対して堅く心を閉ざすものの、ジャズ喫茶の店主・すずに説得され、和解する。
1969年(昭和44年)、創業20周年を迎えたキアリスの従業員は三桁に増え、本社も三宮のビルに転居し、大企業になった。アメリカ留学から帰国したさくらはキアリスに入社。やがて結婚、出産。次世代の活動を見て安堵したすみれたちは、1975年(昭和50年)経営陣からの引退を決意。隠居生活を送り始めた矢先、子供服店開店当初に譲渡したワンピースのお直しの依頼を受けたことをきっかけに、キアリスに「お直し部」を設立し、引退した仲間たちと再び仕事に取り掛かる。
べっぴんさんの感想)
また戦前から始まるのか、といささかげんなりして、見るのをやめようかと思ったら、 芳根京子が主演なので、とりあえず見ることに。
脚本の 渡部千穂は、「 泣かないと決めた日」「 名前のない女神」「 最高の人生の終わり方」「 息もできない夏」「 サキ」 「ファースト・クラス」「 戦う!書店ガール」と、トリッキーに視聴率を取ったドラマと、どーしよーもない失敗作をたくさん書いている人で、つまり演出家によってはそこそこ面白くなるのだろう。
戦前の女学校の手芸クラブの面子(と女中の娘)という〈山の手の女友達関係〉が50年にわたり描かれており、「なんか…なんかな…」という芳根京子(少女時代、闇市時代、高度成長期時代、80年代と4回ほど髪型メイクが変わり、いかにも似合わないのだが、3日ほど見続けると慣れてしまう)のつぶやきに、 土村芳が「なになに?」と反応するお約束が楽しかった。といっても、彼女たちの立志伝というほどでもなく、美智子妃御用達のエピソードもごく軽く、高度成長期を外からぼんやり描くだけだった。
中盤以降の 井頭愛海の家出事件、万博、縁故入社事件のくだりなど、どうでもよい話が多く、見るのをやめた人もいるのではないかと思う。 松下優也がヴァンヂャケットで挫折するくだりなどいくらでも面白くできそうなのに、やはり薄いのである。
再放送中の「 ごちそうさん」の 杏の能天気さに比べて、芳根京子の「なんか…なんかなー…」という決め台詞は、どこまでもウダウダしているのだが、 渡部千穂はどうやら「女」という生き物を他にないやり方で描こうとしたのではないか。キアリス4人娘のウジウジした話の進めなさ加減にイライラしてはイケナイのだ。
もしかすると本作のテーマは「引退」だったのではないかと思う。連続テレビ小説の常として、物語半ばで姿を消す人が多数あるのだが、その最期が描かれているのは芳根の両親( 菅野美穂と 生瀬勝久)ぐらいで、 市村正親をはじめ多くの登場人物は「引退」した後に、猫のように姿を消してしまう。芳根たちも終盤に引退して、どう見ても話はそれでおしまいなのだが、蛇足のエピソードが二つぐらい入り、計算を間違ったのではないかと思えた。
それにしても芳根京子は可愛かったなあ。大成してほしい。
べっぴんさんのキャスト
神戸の人々
神戸・坂東家の人々
坂東五十八(父) – 生瀬勝久
坂東はな(母) / 語り – 菅野美穂
坂東ゆり → 野上ゆり(姉) – 蓮佛美沙子” show=””](幼少期: 内田彩花)
坂東さくら→村田さくら(長女)- 井頭愛海
井口忠一郎(坂東家の執事) – 曽我廼家文童
佐藤喜代(坂東家の女中頭) – 宮田圭子
野上家の人々
野上潔(幼馴染) – 高良健吾
野上正太(甥) – 吉田陽登
野上正蔵(潔の養父) – 名倉潤
野上八重(潔の養母) – 川瀬真理
田中家の人々
田中紀夫 → 坂東紀夫(夫、幼馴染) – 永山絢斗
田中五郎(義父) – 堀内正美
田中富美(義母) – 押谷かおり
キアリスの人々
小野明美 → 岩佐明美(坂東家の女中・マツの娘) – 谷村美月
多田良子 → 小澤良子(女学校時代の同級生) – 百田夏菜子
田坂君枝 → 村田君枝(女学校時代の同級生) – 土村芳
足立武(「キアリス」従業員) – 中島広稀
西城一朗(「キアリス」社員) – 永瀬匡
中西直政(「キアリス」社員) – 森優作
寺田明日香(開発宣伝部) – 大西礼芳
佐藤久美子 → 中西久美子(開発宣伝部) – 呉城久美
島野直子(開発宣伝部) – 青山夕夏
阿部靖夫(さくら・健太郎と同期入社) – 上川周作
キアリス大急百貨店支店の人々
高西悦子→小山悦子(女学校時代の同級生) – 滝裕可里
富士子(女学校時代の友人) – 島居香奈
順子(女学校時代の友人) – 小林さり
キアリス製作所の人々
浮島時子(浮島時計店の娘) – 畦田ひとみ
服部綾子(パン屋の娘) – 前田千咲
岩波文(古本屋の娘) – 村崎真彩
二鳥千代子(家具屋の娘) – 安部洋花
キアリス従業員の家族たち
村田昭一(君枝の夫) – 平岡祐太
村田琴子(昭一の母) – いしのようこ
村田健太郎(君枝と昭一夫婦の長男) – 古川雄輝
村田藍(さくら・健太郎夫婦の長女) – 渡邉このみ
小澤勝二(良子の夫) – 田中要次
小澤龍一(良子と勝二夫婦の長男) – 森永悠希
小野マツ(坂東家の女中) – 中島ひろ子
高西弥生→小山弥生(悦子の最初の夫との娘) – 白石優愛(幼少期: 平尾菜々花)
足立たみ子(武の婚約者) – 鎮西寿々歌
港町商店街の人々
麻田茂男(靴店「あさや」の店主) – 市村正親
浮島時久(浮島時計店の主人) – 中川浩三
花売りの少女 – かわさき鈴乃
港町商店街の人 – 笑福亭風喬
ジャズ喫茶「ヨーソロー」の人々
大村すず(女主人) – 江波杏子
山本五月→河合五月(アルバイト店員) – 久保田紗友
河合二郎(かドラマー) – 林遣都
その他の神戸の人々
クリスティーナ(ゆりの友人) – アナンダ・ジェイコブス
ジョン・マクレガー(新聞社通訳) – ドン・ジョンソン
エイミー・マクレガー(ジョンの妻) – シャーロット・ケイト・フォックス
ランディ大佐(米軍が接収した村田邸に住む軍人) – ブレイク・クロフォード
リサ(ランディ大佐夫人) – ミシェル・タケ
麗子(「ベビーショップあさや」の一号客) – いちえ
美幸(「ベビーショップあさや」ショーウィンドウのワンピースに見とれる少女) – 星野真里
光太郎(美幸の祖父) – 芦屋小雁
近江の人々
近江・坂東家の人々
坂東トク子(祖母) – 中村玉緒
坂東長太郎(伯父) – 本田博太郎
坂東節子(長太郎の妻) – 山村紅葉
坂東肇(従兄) – 松木賢三
坂東静子(肇の妻) – 三倉茉奈
坂東慶一(肇と静子夫婦の息子) – 福士唯斗” show=””]
その他の近江の人々
石鍋(生地業者) – 鍋島浩
大阪の人々
梅田・闇市の人々
根本(闇市の元締め) – 団時朗
玉井(根本の子分) – 土平ドンペイ
戦後の坂東営業部の人々
岩佐栄輔(潔の友人) – 松下優也
長谷川(元社員) – 木内義一
秋山(元社員) – 小堀正博
笹井(元社員) – 中村凜太郎
大急百貨店の人々
大島保(社長) – 伊武雅刀
大島いつ子(保の妻) – 前田美波里
小山小太郎(社員) – 小松健悦
馬場(店子の販売員) – 飯島順子
出口(店子の販売員) – 村上かず
その他の人々
中山照之(復員兵) – 井上拓哉
武藤(陶器工場の職人) – 蟷螂襲
橋詰(メリヤス工場の工員) – 佐川満男
長野和弘(メリヤス工場の社長) – 杉森大祐
矢部勇(松島屋デパート催事担当) – 今村雄一
野中(音楽業界関係者) – 土田英夫
古賀(音楽業界関係者) – 堀内佑太
古門充信(「KADOSHO」代表取締役) – 西岡徳馬
美代(龍一の婚約者) – 片山友希
土田昌和(キアリスの受験者) – 中山義紘
亀田みのる(カメラマン) – 上地雄輔
亀田みどり(みのるの妻) – 加藤千果
春香(「レリビィ」アルバイト店員) – 光永
べっぴんさんのスタッフ
作 – 渡辺千穂
音楽 – 世武裕子
主題歌 – Mr.Children「ヒカリノアトリエ」(トイズファクトリー)
演出 – 梛川善郎、 新田真三、 安達もじり、 中野亮平、 鈴木航
プロデューサー – 堀之内礼二郎
制作統括 – 三鬼一希
副音声解説 – 松田佑貴
オープニング
タイトル映像 – 清川あさみ[94]
アニメーション – 久保亜美香
デザイン – 谷口聖子[95]
べっぴんさんを観る
べっぴんさんを観た人の感想
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後半部で、第二の主役となるのが、さくらを演じる井頭愛海だ。ひとりぼっちで学校の廊下のベンチに佇む場面で放つオーラは、台詞だけでは物語れない感情を巧みに表現している。これは彼女の素質があってこそのものだろう。
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実在の人物をモデルにし、これまでにないヒロイン像を提示しようとした意欲作ですが、その物語はうまく視聴者に届かず、多くの支持を得ることは叶いませんでした。
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