松本清張の長編小説(『婦人公論』(1959年7月号~1960年3月号掲載、1961年3月中央公論社刊)を、「生誕100年記念 松本清張ドラマスペシャル」(日本テレビ系で3月16日21:00~23:18放映)としてドラマ化。。
兄の弁護を断った弁護士に対する、女性の理不尽な復讐を描く、リーガル・サスペンスだが、大塚弁護士は「新進気鋭の若手弁護士」、名も「欽也」に改められ、桐子の故郷は大塚の出身地と同じ福岡県という設定になり、ラストに原作にない設定を付加。劇中音楽にモーツァルト『レクイエム』を使用した。視聴率は16.0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。同年6月にDVD化。
2回映画化され、9回ドラマ化されている原作では、辣腕弁護士は救われないのだが、ここでは相武紗季がそれを演じる市川海老蔵を最後の最後に救ったような話になっているために、全体が一貫していない、おかしな後味を残す。
相武は逮捕された兄(カンニング竹山)の弁護を同郷の市川演じる敏腕弁護士に頼って上京するが、門前払いされ、竹山は有罪、獄死する。市川を逆恨みする相武は東京でホステスになり、市川の愛人(戸田菜穂)を陥れるのだが…という話である。
これまで主要3人を演じたのは顔ぶれは下記の通りである。
柳田桐子 | 大塚弁護士 | 河野径子 | |
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1965年版(映画) | 倍賞千恵子 | 滝沢修 | 新珠三千代 |
1977年版(映画) | 山口百恵 | 三國連太郎 | 小山明子 |
1967年版(ドラマ) | 広瀬みさ | 芦田伸介 | 草笛光子? |
1969年版(ドラマ) | 栗原小巻 | 三國連太郎 | 八千草薫? |
1972年版(ドラマ) | 植木まり子 | 森雅之 | 岡田茉莉子 |
1983年版(ドラマ) | 大竹しのぶ | 二谷英明 | 小川真由美 |
1991年版(ドラマ) | 安田成美 | 田村高廣 | 阿木燿子 |
1997年版(ドラマ) | 若村麻由美 | 仲代達矢 | 萬田久子 |
2003年版(ドラマ) | 星野真里 | 古谷一行 | 多岐川裕美 |
2014年版(ドラマ) | 堀北真希 | 椎名桔平 | 木村佳乃 |
本作は最後から2番目の2010年版。市川海老蔵の弁護士ぶりは見合っておらず(相武紗季もだが)、その怪演技と、上記した結末のアレンジのために、三顧の礼みたいな相武紗季への日参が異様だ。
同郷者の疎ましさ(清張の原作は昭和35年発表)とか、せっかく判明した真犯人への恨みの無さとか、「砂の器」的な市川の出自とか、盛りだくさん過ぎて、これまでに成功した映像化はあったのだろうかと思う。
相武紗季は、最近あまり見ないと思っていたが(第2子出産後)、シンガポール在住らしい。
キャスト
大塚欽也:市川海老蔵 (若手の敏腕弁護士)
柳田桐子:相武紗季 (柳田正夫の妹)
阿部啓一:東貴博 (フリーライター)
河野径子:戸田菜穂 (和風レストラン「みなせ」のオーナー)
奥村雅之:津川雅彦 (大塚弁護士事務所の事務員で元検察事務官)
大塚芳子:中澤裕子 (大塚の妻)
柳田正夫:カンニング竹山 (柳田製作所の社長)
杉浦健次:井坂俊哉 (「みなせ」のフロアマネージャー)
池上信子:柳原可奈子 (ホステスで桐子の幼馴染)
山上武雄:山西惇 (杉浦と同期の野球部員)
益田乃里子:青田典子 (銀座のクラブ「四季」のママで杉浦健次の姉)
渡辺美和:原知佐子 (小倉のファイナンス会社社長)
沢木一夫:中井貴一 (大塚の元上司) ※特別出演
鳴海:六平直政 (警視庁の刑事)
西本:本田博太郎 (編集長)
添田:山下真司 (小倉第一工業高校野球部の監督)
国選弁護人:温水洋一
裁判長:森下哲夫
箱根のレストランの店員:山上賢治
TVリポーター:阿部祐二
新聞記者:井上公造
吉岡:中村有志
堀田:山寺宏一 (福岡の弁護士) ※声のみの出演
恵子:真由子 (事務員)
宮原:小松利昌 (弁護士)
鳴海の部下:六角慎司
ホステス:福山亜弥
大塚の父:石原和海
クラブ「リヨン」のママ:井上祐子
中里真美、須田邦裕、増島愛浩、比佐一成、八十田勇一、小笹 将継、川崎拓斗
スタッフ
チーフプロデューサー:前田伸一郎(日本テレビ)
プロデューサー:金澤宏次・小越浩造(ユニオン映画)
脚本:中園健司
監督:重光亨彦
題字:本田博太郎
音楽:糸川玲子
撮影:高間賢治
MA:山本逸美