王貞治の練習を見学していた飛雄馬と一徹の前に、花形が高級スポーツカーで現れ、グラウンドを占拠した。抗議する飛雄馬に対し、王は争いを避けて立ち去り、飛雄馬は王を「卑怯者」と誤解する。一方、飛雄馬は睡眠中もギブスを外すことを許されず、姉の明子が外そうとすると一徹は目を閉じたまま制止した。花形は「卑怯者の王と勝負しよう」と飛雄馬を誘い、ブラックシャドーズのピッチャーとしてマウンドに立たせる。ギブス着用の超スローボールは妖気を放つが、王にホームランを打たれる。9回満塁の再対決で、ギブスを外した飛雄馬は豪速球を投げるが、王は守備経験のない飛雄馬の弱点を突いてバント。これはキャッチャーの怪我を防ぐ配慮だったが、飛雄馬は送球に失敗し3失点。敗北を通じて野球の奥深さを実感した飛雄馬であった。
なぜか飛雄馬を気に入り、ブラックシャドーに入れたいと考えている花形は、ノックアウト打法を披露する。
ピッチャーが投げた球を、次々と指定した場所に打つのである。
飛雄馬からこの話を聞いた一徹は、土方仕事の途中で花形邸を見つけたので、思わず庭をのぞき見してみた。
中では花形がテニスコートでテニス選手を相手にバットを振っていた。
(相手はテニスラケットなので、軟球なのか?)
練習の様子を見て何やらショックを受けた父ちゃんは、帰ってから飛雄馬に
「お前は花形に勝てぬ!」
と断言。
くやしがりの飛雄馬は、父ちゃんのばか!と怒るのだが……
一徹が用意したのは、火だるまボールの特訓だった。
ボールに体を触れずに一塁へ送球すればいいというのである。
あまりにばかげた練習を前に、「やめてえっ」と叫ぶ姉ちゃん。
しかし特訓はなにやら成功したらしい……
一徹が隠れて見守る中、花形との対決が始まる。
練習の成果あり、飛雄馬はピッチャー急襲の球をスパイクでキックし、みごとにノックアウト打法を破る。いつも私服で野球している飛雄馬がユニフォームを着ている(借りたのだろう)のは、そのためだったか。
しかし、この対策、火の玉特訓までしなくても、別によかったんじゃないか……
敗れた花形は、「君との勝負は永遠に続きそうだな!」と叫ぶや、スポーツカーに飛び乗って去っていく…だから小学生だっつうの!
左手を負傷した飛雄馬は一徹に叱られて左手を吊って登校するが、級友たちに「大げさだ」と馬鹿にされる。悔しさからスイッチピッチャーになろうと右手での投球練習を始める飛雄馬。天性の才能で右手のコントロールも徐々に上達していく。ある日、隅田川沿いの倉庫で火事が発生。飛雄馬は対岸から火災報知器に石を投げるが、右手では割れず、左手で投げて成功させる。火事で閉じ込められた子供を救うため倉庫に飛び込むと、無意識に左手をかばっている自分に気づく。左利きの投手としての自分の本質と、一徹の言葉の真意を理解した飛雄馬であった。(第5話|幻のスイッチピッチャー)