左門戦で親指の爪を割った飛雄馬は、決勝戦の延期を願って雨が止まないことを祈る。無邪気にてるてるぼうずを作るチームメイトに怪我を打ち明けられず、代わりの小宮投手も自信なさげ。通りがかった伴大造の「負けたら各駅停車」という言葉に脅えて、白手袋を購入した飛雄馬は、大阪駅で帰郷する左門と再会し、左門が巨人のスカウト対象になったと知って涙する。左門は「明日の決勝戦、雨が止むよう祈ってます」と言い残して去って行った。飛雄馬はさらに切実に雨が続くことを祈る。
・・・しかし、雨はついに止んだのだった。
雨戸を開けた飛雄馬は、「ああっ、晴れてる…!」と絶望する。
一方、巨人の藤田コーチと荒川コーチも決勝戦を見るために甲子園球場に現れた。
ためしに一球投げてみた飛雄馬、「い…痛い…!」
すぐにスローボールに切り替えた。
「敵を気負いこませてヒョイッとスローボールではずす、これが名ピーッチャーの技でござい!」
伴は無神経なことを言っている。
* *
そしてプレイボール、星雲が先攻だが、例によって冴えない打撃。
みんなもう少し打ってくれてもいいじゃないか、俺に甘えすぎだ!と飛雄馬はひとりごち、マウンドに立つと、一斉に集まるスカウトたちの眼を意識せざるを得ない。
しかし、とりあえず投げられるのはスローボールだけ。
さすがに打たれたが、ピーゴロ、次はショートフライ。
三人目はショートゴロ、しかしボールがはねてランナーは一塁へ。
そして4番・花形登場――
「小宮さんに頼んでマウンドを降りようか、そうすればみんなは俺の不運に同情してもらえる…」
飛雄馬はまだイジイジと考えている。
しかし花形の眼は澄みきっている
スタンドで応援で大活躍の牧場の姿が見え、飛雄馬はそれを見て「みんなひたむきに若い命を燃やしている」と思い直す。
いや、オッサンかwww
ようやく腹を決めた飛雄馬は、伴になにごとか囁く。
長屋でテレビの前の一徹「やれ、やるんだ飛雄馬!」
勘の鋭い親父のはずが、今回は何も気づいていない。
* *
そしてコマーシャル明け、飛雄馬の策はなんと敬遠であった。
な ん だ っ て ・・・!
「ひきょうもの!」と罵りながら一塁に向かう花形
落胆するスカウトら |
荒川コーチ「期待するほどでもなかったな」 |
それでも、藤田だけは何か気づいた様子。
「うーん、しかし、ちょっと気になる投げ方だな・・・」
一徹もまたようやく異変に気づく。
「あいつは死んでも敬遠などするわけがない」
「でも怪我をしたのなら、第二ピッチャーの小宮さんが…」と明子はもっともなことを言う。
「いや、どんな怪我をしても飛雄馬のほうが上。そこに飛雄馬の悩みがある」
小宮はどんだけヘボいのかww
落胆するスカウトら
スローボールを投げ続ける飛雄馬は、ついに出血していた。
そして花形の二打席目も敬遠。
アタマに来た花形は敬遠球を打つが…
場外になりそうなところをなんとかアウト。
ついに指からは血が噴き出す
ランナー2塁、そして花形の三打席目というピンチである。
飛雄馬「よし、父ちゃんに教わった作戦をやるか」
「むっ、『あれ』をやる気か!」
血がダラダラだが・・・ |
わざとインサイドボールで打たせ・・・ |
|
レフト前に転がし・・・ |
3塁を回ったランナーを・・・ |
ホームで殺す! |
まんまとやられて悔しがる花形。
喜んだ伴だったが、ふと手元のボールを見て、
「血、血だ…!」
ベンチに戻った伴が顔色を変えているのを見て、飛雄馬は裏に引っ張りこむ。
「今日のお前は今までで一番かっこ悪かったぜ!」と感動する伴
頼まれた通りにボールに土をなすりつける
ピンチの中、花形4打席目。飛雄馬はすでに眼が霞んでいる。
「あと一球投げられるかどうか…」
テレビを見つめる明子「もう見てられないわ」
ゲッツーを狙って投げるつもりが、すっぽ抜けの球――
花形、大ホームラン
そして星雲は負けたのである。
「藤田さん、星は予想外でしたね」との記者の質問に、
藤田「いや、予想以上のピッチャーだよ、予想以上にすばらしかった」
記者たち「いやあ、またご冗談を…」
「星の腰抜け!」
マウンドに膝をついた飛雄馬は動けずにいる。
笑うやつは笑えっ、怒るやつは怒れっ…
父ちゃん、俺は逃げ出さなかったんだ、最後までマウンドから降りなかったんだ・・・
こうして星雲の甲子園は終わったのである。
花形はホームランボールの血から飛雄馬の状況を悟るが、飛雄馬はスカウトや小宮への影響を考えて花形を口止め。試合は紅洋高校の優勝で幕を閉じた。帰京した飛雄馬は帰宅をためらうが、家には伴と長屋の住人たちが集まっていた。一徹は「不死鳥伝説」を語って飛雄馬を励まし、「自分可愛さを捨てた瞬間の美しさ」を説く。伴と飛雄馬はあらためて友情を誓い合った。(第41話「よみがえれ飛雄馬」)