阪神に入団した花形は打倒飛雄馬を宣言。一方、飛雄馬は二軍東映戦で初登板し完封勝利を飾る。だが敵将藤村は飛雄馬の致命的な欠陥を見抜き、後半は外野フライばかり打たせていた。駆けつけた一徹はスコアブックを見て絶望する。

珍しくカーデガン姿の明子

子供の草野球に見入る一徹の姿を発見
「小さい子のほうがコントロールはよかった、だが…」
巨人軍宿舎では速水がギターを爪弾いている
「もう大晦日か、いい年だったぜ今年は! ひとつは巨人軍入りしたこと、ただし君の補欠だったがね…」
後ろを向いて聞いていた飛雄馬、
(その次に言うことはわかってる、後半逆転して一軍…)
速水は心を読んだように「その通り! 後半逆転して俺はみごと一軍入りした…」
同室の飛雄馬は毎日これを聞かされているのだろう。
「それにしても伴はどうなっちゃってるの、いっこうに現れる様子もない…」
その伴は、父大造にプロ野球入りを談判していた。
父は宙太を大学に入れて伴自動車工業の社長にしたいのである。
「未成年者であるからには親のわしが認めんかぎり合宿入りなどできんぞ」

そ、そうだった…!
花形や左門に思いを馳せる飛雄馬――

かたや池の飛び石で素振り中

こちらは弟妹たちの声援のもと素振り中
飛雄馬、こうしてはいられない、とグローブを持って外へ。
鳴り始めた除夜の鐘に速水も身を起こす。
長家では年越しそばをすすりながら一徹が悩み続けている。

「飛雄馬も新年に向けて闘志を燃やしているだろう……しかしその闘志をもってしても、傷つき泥にまみれる年となる…」
「お父さん、そんな!」
野球のボールの縫い目も百八つなのだよ、と一徹は豆知識を披露。
「すべての悩みをこの白球だけにこめて乗り越えてくれ、わしの飛雄馬…」
はよ子離れしろ、と思うが、よく考えると飛雄馬はまだ16歳だからね…
そして初日の出が昇り……食堂も今日は正月メニューである。

「今年は粘るぞー!」と新年の誓い
それからタクシーで長家に乗りつける。

初月給で買ったスカーフにコート?
初詣帰りの父姉と出くわし、一徹の憂い顔に気づいた飛雄馬。
一徹はおめでとうの一言も言わず。
そもそも初詣、神頼みをしたことを信じがたい飛雄馬であった。
吉岡一門との決闘への道すがら、路傍の社にぬかずきそうになるのをグッと我慢した宮本武蔵の例をひき、神に頼るのは男の恥とまで言っていた一徹なのである。

たけぞう
もちろん明子も不審に思っていたが、理由を聞くのがこわいから黙っていた。
(あなたも聞いちゃいけないわ、飛雄馬…)
しかし飛雄馬は「父ちゃんってば!」と肩を揺する。
「お前、坂本龍馬という人を知っているか…」
どうも歴史上の人物が好きな御仁である。
たとえどぶのなかで切り捨てられても私は前のめりで死んでいきたい!
と語り、本当にどぶで前に倒れて死んだ龍馬。

この台詞は、梶原一騎の創作らしいケドね…
お前には明日にもプロの投手としての死が待っておるのだ、と話が遠回しな一徹である。
「えっ、死が!」
「致命的な欠点…それ以上、俺に言わせるな!」
あくまでも思わせぶりな一徹。
「投手飛雄馬は死ぬほかはないのだ!」

「ええっ!」
話が見えないながらも、飛雄馬はショックを受ける(そりゃそうだろう)。
「飛雄馬よ、坂本龍馬になるのだ、前のめりで死ね!」
飛雄馬、わけもわからないまま、「これまでの話で今のがサイコー」と感激している。
「立派に死んでみせるよ、父ちゃん!」
なんとかしてくれ、この父子…

「姉ちゃん、そういうわけだ」
と帰ろうとする飛雄馬を呼び止め、一徹、「野球選手の書き初めをやっていけ」
飛雄馬の球を受け、
「速い…しかしこのスピードの中に命取りの欠点がある」と噛みしめる。
一球だけ投げて、逃げるように走り去った飛雄馬であった。
飛雄馬は雪深い山奥で特訓に励むが、伴は「球質が軽く本塁打になりやすい」という致命的欠点を宣告。自暴自棄になる飛雄馬だったが、伴の体当たりの激励で、「柔よく剛を制す」精神を再確認。絶望を乗り越えた二人は、決意を胸に山を下りていった。(第64話|雪玉のひみつ)


