逃亡弁護士

石原さとみ(逃亡弁護士)

漫画『逃亡弁護士 成田誠』(作画:髙田優、原案:剛英城、第1部は『週刊ヤングサンデー』2007~2008年連載、第2部は作画を岡本創に交代して『月刊!スピリッツ』2010年6月~2012年2月号に連載)を原作として、2010年7月6日~9月14日に『逃亡弁護士』のタイトルで、関西テレビ・ホリプロ共同制作で、フジテレビ系列で毎週火曜22:00-22:54に放送。キャッチコピーは「本当の不幸は、諦めた時に始まる。」、「逃げているんじゃない。真実を追っているんだ。」。出演者ごとのキャッチコピーは、「俺は、正義を貫く」(上地雄輔)、「父を殺した、あなたを許さない。」(石原さとみ)、「お前を必ず、この手で裁く。」(北村一輝)。

逃亡弁護士の感想

タイトルからして途中で捕まるわけにはいかないのは承知の上だが、絶体絶命と思われた前回最後の状況でも、やはりなんなく逃げてしまう上地雄輔のドラマである。
襟元をつかんだ相手から「あなたは暴行をふるっているから現行犯逮捕します」なんて言われて、思わず怯んで逃がしてしまう人間がいるだろうか。しかも、15秒ぐらい前までそこにいたのに、見つけられないなんて、石原さとみならずとも、「警察は何をしてるんですか」と言いたくなる。

一話完結フォーマットだが、4話あたりからグレードがだんだん落ち、ただの人情話のようだが、住み込みで引越し屋に潜入したといっても上地雄輔は一日も働いてないくせにスーツまで借りているし、中原丈雄の警察官は最後まで指名手配犯に気づかない。善意の人ということなのに、ひったくりからバッグを取り返したりもしないのである。

上地を追う北村一輝(検察官)は、毎週毎週、成田の写真をひねくり回しているオカシな人で、謎の少女高月彩良もイジメている。豊原功補は、北村はわざと上地雄輔を泳がせているのだと言っており、そのへんちゃんと収拾がつくのかと思わせながら、話は始まる。
定石からいくと、豊原功補(アクサル法律事務所の事務長)がとうぜん黒幕なのだが、ドラマを牽引するのは、北村一輝が味方なのか敵なのかというサスペンスである。

北村一輝は法曹界の膿を一掃するのが私の目的だと言い、私は成田を犯人とは思っていない、成田を追っているのは真犯人を突き止めためだと言うのだが、ここは「ホントにそうかー??」とツッコむところ。こういったウソを、フィクション上のコードの中で判断していくサスペンスと言える。このドラマの最大の問題は、全体にお約束すぎることで、この「フィクション」とのバランスが悪い。

上地雄輔の冤罪がいつ晴れるのかというサスペンスは、頑迷な石原さとみ(殺された船越英一郎の娘)が、いつになったら呼び捨てをやめるのかというサスペンスとして語られる。中盤では、「あなたが父を殺して成田に罪をきせたんですか」と姜暢雄に詰めよるシーンがあり、そこまで思っていて呼び捨てかよ、と、あくまで頑迷なのである。
上地雄輔のほうも、自分目線の事実を並べるばかりで、弁護士のくせにぜんぜん論理的じゃないので、石原さとみの疑いジト目はなかなか変わらず、「あなたの言っていることにはひとつも証拠がない、一年間逃げまわるばかりで、一体何をしてたのよ」と妥当なツッコミを入れる。「逃げてたんじゃない、真実を追ってたんだ!」と上地は叫ぶのだが、正確に言えば、逃亡犯であることを隠しながら、あちこちで困ってる人の相談にのってあげてました、ということになる。
上地演じる成田弁護士は、クライアントの目を見れば信頼できるかどうかを判断できるという能力をもつわけだが、そういう男が、あくまで頑迷な石原さとみを信頼させられない、というジレンマがドラマを成立させている。

石原さとみは北村一輝を信用できないというフラグを立てるが、これは定石的にはミスリード。黒幕と思われる豊原功補が相変わらず良い人演出で、対照的すぎるのである。

最終回の結末は、ジョーカー 許されざる捜査官に比べるとはるかに破綻の少なくはあったが、案の定、北村一輝がなぜ延々と(1年3か月)上地を泳がせ続けていたのか、そんなことが状況的に許されたのかということがわからない。

最初の1、2回は期待させるところもあったのだが、終盤まで惰性なドラマであった。上地雄輔の運動神経を活かせなかったことが敗因だろう。手が届く寸前なのにつかまらない、という設定はまさに上地雄輔にふさわしいのだが、スタッフはほとんどそれを意識していなかったのではないか。

逃亡弁護士のキャスト

主人公
 成田誠 – 上地雄輔s¥
二ノ宮家
 二ノ宮絵美 – 石原さとみ
 二ノ宮まどか – 折山みゆ
 二ノ宮徹 – 船越英一郎
榎木家
 榎木洋一 – 小林すすむ
 榎木律子 – 榊原郁恵
東京地方検察庁
 真船丈 – 北村一輝
 三枝亮子 – 矢田亜希子
協力者
 小早川美由紀 – 村川絵梨
 浅沼仁 – 姜暢雄
陰謀関係者
 五十嵐衛 / フクナガ – 佐藤二朗
 連光寺巧 – 豊原功補
 黒川 – 鈴木亮平
 長谷部秀一 – 光石研
その他
 伊崎純也 – 前川泰之
 南優希 – 高月彩良

逃亡弁護士のスタッフ

原作 – 剛英城・髙田優『逃亡弁護士 成田誠』(小学館ヤングサンデーコミックス刊)
原作協力 – 剛英城・岡本創『新・逃亡弁護士 成田誠』(小学館月刊!スピリッツ連載)
脚本 – 渡辺雄介秦建日子(episode8・10)
脚本監修 – 秦建日子
音楽 – 野崎良太(Jazztronik)
演出 – 本橋圭太白木啓一郎田中峰弥大内隆弘
法律監修 – 紀藤正樹
スタントコーディネイター – 釼持誠
技術協力 – バル・エンタープライズ
照明協力 – Kカンパニー
美術協力 – KHKアート
音響効果 – スポット
編集・MA – ザ・チューブ
スタジオ – レモンスタジオ
制作協力 – ガロパン・カート・フィルム
プロデューサー – 河西秀幸(関西テレビ)、平部隆明(ホリプロ)
制作 – 関西テレビ、ホリプロ

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