一軍昇格を期待する飛雄馬は焦りを募らせ、さらに二軍戦にも選ばれず、失意で帰宅。父・星一徹は国定忠治の逸話を引き合いに諭すが、飛雄馬は反発して家を飛び出す。一徹は息子の苦悩を思い胸を痛めるのだった。
優勝がかかった巨人大洋戦を観戦している二軍選手たち。
巨人は大洋の倉木投手をなかなか打ち崩せない。
2年の2軍生活ののち1軍で初めてマウンドを踏むという倉木を応援する飛雄馬である。
長嶋の打順に、ここは低めだ!と思っていると、倉木は高めを投げて三塁打を打たれてしまう。
次は王なので、飛雄馬は膝もとに投げろと念じる。
これはすべて先日のONきりきり舞いの時の経験からである。
しかし王はあっさりとホームラン・・・

これで巨人は優勝を決めた
倉木はこれでまた二軍に舞い戻ることになる・・・と自分に重ねて不憫がる飛雄馬。
優勝ということで、2軍合宿所もちょっとした宴会になり、ビールをかけあう選手たち。
飛雄馬は倉木を応援したことをあっさり後悔して、みんなと一緒に「闘魂こめて」を歌う。

倉木を応援したのは何だったのか
闘魂こめて大空へ 球は飛ぶ飛ぶ 炎と燃えて
おおジャイアンツ その名担いてグランドを
照らすプレイのたくましさ ジャイアンツ ジャイアンツ
ゆけゆけそれゆけ巨人軍嵐を雲をつんざいて 球は呼ぶ呼ぶ勝利の星を
おおジャイアンツ その名と共に明日の日へ
伸びるチームの勇ましさ ジャイアンツ ジャイアンツ
ゆけゆけそれゆけ巨人軍かがやく歴史かさねつつ 球はゆくゆく無敵の天地
おおジャイアンツ その名を高くいや高く
あげるナインのたのもしさ ジャイアンツ ジャイアンツ
ゆけゆけそれゆけ巨人軍
ようし、ジュースで乾杯だ!
しかしその目に、頭を抱えて自室へ帰る左右太郎の姿が・・・
どうしたんですか、と後を追ってみると、
「ペナントレースが終了したら、僕のような選手には地獄のような季節がやってくるんだ」
何を言っているのかというと、つまり「契約更改の季節」なのである。
またまた同情する飛雄馬だったが、左右太郎は
「君ってやつは、赤の他人の悲しみを自分のように感じてくれる人なんだね」
と、どこかで聞いたようなことを言う。
僕もONをきりきり巻いさせたことがあるんだよ、と意外なことを話し始める左右太郎。
しかし最初だけだった、2回目はメッタ打ちだった。
研究するんだ、だからONは偉大なんだ。
それがすべてなのだったが、
飛雄馬は「違う! 失礼だが先輩と俺は違う!」と拒絶してしまう。
俺は、何度でも豪速球でONを封じてみせる!
しかし、左右太郎の言葉はすぐに証明されることになった。
次の日が1軍のバッティング練習だったのである。
バッティング投手を、と言われ、すぐにまた手をあげる飛雄馬。
必ずまた打ちとってみせる!
大内山先輩、俺は違うということを証明してみせる!
と張りきったが・・・
まずは王から。
前回チップさせた膝もとのコースを狙いすますが、かるくホームランに。
にわか雨が来たので、「一球だけでも打つかい」と長嶋から王に代わると、これまたセンターオーバーの当たり。
飛雄馬は完敗したのだった。
仰向けに倒れたまま、惨めさを噛み締める飛雄馬。
その傍らをわざわざ通りかかるON――

ご丁寧に靴ひもを結び直しながら立ち話してみせる
「この前はあせったな、しかしカスリ傷だ」
「そう、しかし次は必ず打つ、それが巨人なんだ」・・・
鈍い飛雄馬も、さすがにようやく悟ったのだった。
なんて馬鹿な俺だったんだ
みんなはこうなることがわかっていたから話題にしなかったんだ
妬んだのはプロの強打者を知らない速水だけだった
ベンチに戻ったON、
「雨の中の立ち話も楽じゃなかったな」
「おかげで効き目があったらしい」
「なかなか芸が細かかったじゃないか」とホメる川上。
長嶋「俺だって、入ってすぐ4打席4三線したことがあった」

王 「俺なんか26打席連続で打てないことがあった」
川上「誰しも一度は通る道だ」
王 「チョーさんと気軽に呼べるようになったのは昭和38年のペナントレースの頃ですよ。
一本足打法を開眼したときです。
それまでは長嶋は雲の上の人だった」
川上「対等に扱われたかったらまず実力だ。それには苦しむほうがいい」

ようやく妄が晴れた飛雄馬なのだった
雨があがり、懸かった虹を見て、初めて巨人の先輩と気持ちが伝わった気がする…と走り始める。
川上「ようし、みんな、あの星に続け!」
非情な勝負の世界に馴染めず、左右太郎は退団を選ぶ。飛雄馬は自分の台頭が原因と心を痛めるが、再就職先で草野球を楽しむ左右太郎の姿を見て安堵する。しかし自分は「苦しむ野球」の道を行くと覚悟を決めた飛雄馬は、速水に宣戦布告し、監督にも一軍入りを力強く宣言する。(第58話|消えゆく先輩)


