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愛すべきかまってちゃんジェニファー・ローレンスの怪演(アメリカン・ハッスルの感想)
鏡に向かったクリスチャン・ベールがウィッグを操って珍妙な「19分け」を慎重にセットする冒頭から、はやゲラゲラなのだが、その後、愛人エイミー・アダムスとの出会いの中でブヨブヨの腹を隠そうともせず(ベールはこの映画のために20kg増量したと伝えられる)、超みっともないのがカッコ良く、エイミーならずともこの胡散臭さMAXの詐欺師に惹きつけられてしまう。
本作は、詐欺師を使って19人もの汚職議員を逮捕した1979年のアブスキャム事件を映画化したもので、ブラッドリー・クーパーのFBI捜査官(この男もなぜか毎晩カーラーを巻いて天パーを作っている)との司法取引で、ベールとエイミーが、アラブの富豪が出資先を探しているという名目で、ジェレミー・レナーのニュージャージー州市長や汚職議員などを騙す話である。ただし前半でエイミーはベールと別れ、クーパーと良い仲(風)になるので、筋を追うのはそれなりにややこしい。
コンゲーム物の常として、途中で話が大きくなって制御しきれなくなり、小心者のベールが内心ビビりながらマフィアの大物(ロバート・デ・ニーロ)に芝居を突き通すシーンなど緊迫感もあるが、全体としては登場人物のキャラと賑やかな会話を楽しむコメディで、氷上釣りの繰り返しギャグなどもオカシイ。
中でも見ものなのは、最大の「不確定要素」であるジェニファー・ローレンス(ベールの妻)の怪演だろう。彼女は当時22歳だか24歳で、MTVのようにウイングスの曲で踊りまくるシーンなどはケッサク。嫉妬深くてすぐ逆ギレする愛すべき女を演じ、事件の中心部に居合わせながら何も知らされず、かまってちゃん的な短慮によって、ベールの作戦を破壊してしまうのだった。
結局、ジェレミー・レナーとブラッドリー・クーパーが貧乏くじを引いて映画は終わるのだが、不幸な人が残るのは若干、爽快さに水を差すところだ。ま、実話だから仕方ないのだけれども(ジェニファーが演じた詐欺師の妻は事件後に自殺している)。
アメリカン・ハッスルのあらすじ
詐欺師アーヴィン・ローゼンフェルドは、その腕前と人心掌握術で多くの金を騙し取り、相棒のシドニー・プロッサーと、架空の中東大富豪に扮し、政治家や実業家から賄賂を巻き上げる手口を駆使していた。
そんな中、野心に燃えるFBI捜査官リッチーが、彼らの詐欺を利用して政府高官の汚職を摘発するため、二重スパイ作戦を敢行。捜査が進むにつれ、関係者たちの欲望や秘密、そして複雑な恋愛模様が絡み合い、真実と虚構の境界が曖昧になっていく。
アーヴィン夫婦の間に情熱と不安定な絆が見え隠れし、リッチーも権力と名声に翻弄される中、誰が信頼できるのか、誰が策略に嵌っているのかがわからなくなっていく。
アメリカン・ハッスル 見どころ
『アメリカン・ハッスル』は、詐欺と正義、欲望と道徳、自己欺瞞と真実といったテーマが巧みに織り交ぜられ、登場人物たちの複雑な心理や人間関係を描きながら、観客に対して深い問いを投げかけている。何度も観返すに足る映画である。
登場人物たちは、他人を欺くだけでなく、自分自身をも欺いている。クリスチャン・ベールは、詐欺師でありながら、自分の行為を正当化しようとするし、ブラッドリー・クーパーは、正義の名のもとに行動しながらも、自己の欲望に突き動かされる。それぞれの立場で自己欺瞞に陥っていることが物語の核心となっている。
アメリカン・ドリームの追求がもたらす光と影を描いた映画である。登場人物たちは成功や富を求めて行動するが、その過程で道徳的な境界を越えてしまう。リッチーの行動は、正義の名のもとに他人を操作し、自らの欲望を満たそうとするものだ。アメリカン・ドリームの追求がもたらす倫理的なジレンマが、物語の重要なテーマとなっている。
人間の欲望と自己正当化の心理を巧みに描いている。自らの行動を正当化するためにさまざまな理由をつけ、他人を欺く登場人物たち。観客は人間の本質や道徳観について考えることになる。
登場人物たちの複雑な心理を巧みに描き出されている。クリスチャン・ベール、エイミー・アダムス、ジェニファー・ローレンスらの演技は高く評価されている。1970年代のファッションや音楽を取り入れた演出も、作品の魅力の一つだ。
アメリカン・ハッスルを観るには?
アメリカン・ハッスルがモデルにした「アブスキャム事件」とは?
Abscam(アブスキャム)は、1978年から1980年にかけてアメリカ連邦捜査局(FBI)が実施した捜査作戦。当初は組織犯罪の捜査の一環として始まったが、次第に政治汚職摘発へと焦点が移っていった。
FBIの捜査官が架空の中東の富豪を装い、政治家や公職者に対して金銭の見返りに政治的便宜や影響力の行使を持ちかけ、これらのやり取りがビデオに収められ、後の法的証拠として用いられた。
この作戦により、複数の下院議員や上院議員、その他の公職者が賄賂や汚職の罪で起訴され、一部は有罪判決を受けた。
作戦の手法に対して「罠に陥れられた」という批判もあり、FBIの捜査方法や捜査倫理についての議論が巻き起こっている。
Abscamは、アメリカの政治史における大きなスキャンダルの一つとして記憶されており、その後の法執行機関による捜査手法や法制度の在り方に大きな影響を与えている。
アメリカン・ハッスル キャスト
リッチー・ディマーソ(FBI捜査官) – ブラッドリー・クーパー
シドニー・プロッサー(アーヴィンの愛人) – エイミー・アダムス
カーマイン・ポリート(ニュージャージー州市長) – ジェレミー・レナー
ロザリン・ローゼンフェルド(アーヴィンの妻) – ジェニファー・ローレンス
ヴィクター・テレジオ(マフィアの大御所) – ロバート・デ・ニーロ
ストッダード・ソーセン(リッチーの直属上司) – ルイ・C・K
パコ・ヘルナンデス() – マイケル・ペーニャ
カール・エルウェイ(アーヴィンの詐欺仲間) – シェー・ウィガム
ピート・ムセイン(マフィア) – ジャック・ヒューストン
ドリー・ポリート(ポリート市長の妻) – エリザベス・ローム
アディー・エイブラムス – エリカ・マクダーモット
サブリナ – メリッサ・マクミーキン
ブレンダ – コリーン・キャンプ
アンソニー・アマド(ストッダードの上司) – アレッサンドロ・ニヴォラ
アルフォンス・シモーン – ポール・ハーマン
コスモ・ガール – ドーン・オリヴィエリ
フランシス・ポリート – トーマス・マシューズ
FBI捜査官 – ボー・クリアリー
アメリカン・ハッスル 作品情報
1970年代にアトランティックシティで起きた収賄スキャンダル「アブスキャム事件」を基に、ラッセルと エリック・ウォーレン・シンガーが脚本を執筆。主人公アーヴィンのモデルはメル・ワインバーグという実在の詐欺師。第86回アカデミー賞においては、作品賞・監督賞をふくむ10部門でノミネートされたが無冠。2013年のハリウッド映画祭で美術賞、衣裳デザイン賞、第79回ニューヨーク映画批評家協会賞では作品賞と脚本賞、ジェニファー・ローレンスが助演女優賞を受賞。ゴールデングローブ賞 映画部門 作品賞 (ミュージカル・コメディ部門)を受賞。
脚本 – デヴィッド・O・ラッセル、エリック・ウォーレン・シンガー
製作 – チャールズ・ローヴェン、ミーガン・エリソン、リチャード・サックル、ジョナサン・ゴードン
製作総指揮 – マシュー・バドマン、ブラッドリー・クーパー、ジョージ・パーラ、エリック・ウォーレン・シンガー
音楽 – ダニー・エルフマン
撮影 – リヌス・サンドグレン
編集 – アラン・ボームガーテン、ジェイ・キャシディ、クリスピン・ストラザーズ
製作会社 – アンナプルナ・ピクチャーズ
配給 – アメリカ コロンビア ピクチャーズ、日本 ファントム・フィルム
公開 – アメリカ 2013年12月13日(限定公開)、アメリカ 2013年12月20日、日本 2014年1月31日
上映時間 – 138分
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