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ベタなようで計算しつくされたメタSF(侍タイムスリッパーの感想)
「カメ止め」現象の再来と言われた小予算の自主制作映画で、幕末に長州藩士を暗殺しようとした会津藩士(山口馬木也)が折からの雷によって現代(2007年)の太秦にタイムスリップし、時代劇の斬られ役を天職に順応していくという話である。
と書くと、なにか非常にベタなものと思われるだろう。クラシックなコメディシーンもあるのでますますベタなのだが、実はこの映画には作劇上の仕掛けがある。
それは、タイムスリップしてきたことを本人(たち)以外には誰も知らないという設定だ。
実際、冨家ノリマサが30年ずれてタイムスリップしてきていたことが判明する中盤までは、既視感が拭えず、中ダレの予感しかなかった。
そこから先は、二つの葛藤が混ざり合って内面化していく。
ひとつは幕末の侍の葛藤だ。
会津藩は新政府軍に敗れて没落していくという歴史に向き合い、「俺は何をやってるんだ」と落ち込み、酔っ払ったところを不良中学生に足蹴にされる山口。
もうひとつは、時代劇が失われていく時代の葛藤。
山口がタイムスリップした2007年は、同じ太秦の衰退を描いた朝ドラ「オードリー」の最終章の6年後にあたる。この朝ドラも、失われていく時代劇への郷愁が繰り返し語られていた。
劇中ではいくつかの架空の時代劇が撮影される。
クライマックスの「最後の侍」はそのような多重性をはらんだメタな緊張感の中で描写される。それが、驚くべきメタな殺陣シーンだ。
山口は「真剣を使いたい」と申し入れ、万一の事故があっても賠償は請求しないという覚え書きを書いて撮影に臨む。実際はどうなのか知らないが、真剣を使ったシーンとして「最後の侍」のクライマックス撮影が始まるので、当然、観客は「本当に真剣なのでは?」と思うわけだが、このシーンはすばらしい。そしてこれは本作の監督がやりたかったことでもある。
紗倉ゆうのという女優はもちろん知らないのだが、実際に本作の助監督でもある。エンドクレジットを見ると安田淳一と彼女の名前が何度も出てきて驚く。
侍タイムスリッパー 巷の考察
- タイムスリップした侍のコメディ、劇中劇としての時代劇、そして江戸時代への感傷という三重の構造をなしている
- 「正義の多様性」「伝統と革新のバランス」「異文化理解」など、現代社会に通じるテーマ
- 主人公の選択がニーチェの「運命愛(アモール・ファティ)」の概念を想起させる
- 侍としての誇りを持ちながら、現代社会に適応していく姿が感動的
- 物語中盤で明かされる風見の正体が、観客に驚きを与える
- 伝統的な殺陣と現代的なアクションが融合している
- 創意工夫を凝らした演出と卓越した演技
- 家電に対する侍の反応など、視覚的なユーモア
- 時代劇というジャンルの魅力を再認識させる
- 多様性を受け入れる社会へのメッセージがある
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侍タイムスリッパー 見どころ
東映京都撮影所は安田監督の脚本に感銘を受け、「自主制作で時代劇をつくるなどと言ったらいつもなら全力で止めるが、これは本(脚本)がおもしろいから、是非やりたい」と全面協力したという(普通、自主制作映画の撮影許可は下りない)。
2024年8月17日に池袋シネマ・ロサにて一般公開され、9月4日にギャガが配給に加わり、全国のシネコン50館以上で公開されるにいたり、興行収入2億円超えを記録した経緯から、『カメラを止めるな!』の再来と言われる。
侍タイムスリッパー ネタバレあらすじ
幕末の会津藩士・高坂新左衛門は、長州藩士・山形彦九郎暗殺の任務中に落雷で現代の京都にタイムスリップしてしまう。現代で時代劇の斬られ役として生きる道を見つけた高坂は、実力を認められ新作映画の準主役に抜擢される。そこで対峙するのは同じくタイムスリップした山形本人で、今は風見恭一郎という人気俳優になっていた。二人は真剣勝負のシーンで和解し、それぞれが今を精一杯生きる決意をする。高坂は撮影助監督の山本優子に惹かれつつも告白はできず、映画完成後も斬られ役として活動を続ける。
侍タイムスリッパーを観るには?
侍タイムスリッパー キャスト
風見恭一郎 – 冨家ノリマサ
山本優子 – 沙倉ゆうの
殺陣師関本 – 峰蘭太郎
山形彦九郎 – 庄野﨑謙
住職の妻・節子 – 紅萬子
西経寺住職 – 福田善晴
撮影所 所長・井上 – 井上肇
錦京太郎(心配無用ノ介) – 田村ツトム
斬られ役俳優・安藤 – 安藤彰則
剣心会メンバー – きらく尚賢、ムラサトシ、神原弘之
村田左之助 – 高寺裕司
テレビ時代劇監督 – 多賀勝一、佐渡山順久
武者小路監督 – 吹上タツヒロ
照明マン – 泉原豊
町娘うめ – Rene
侍タイムスリッパー 作品情報
特別協力 – 進藤盛延
殺陣 – 清家一斗(東映剣会)
助監督 – 高垣博也、沙倉ゆうの
照明 – 土居欣也、はのひろし、安田淳一
照明アシスタント – 泉原豊、岸原柊
音声 – 岩瀬航、松野泉、江原三郎
床山 – 川田政史(東和美粧)
時代劇衣装 – 古賀博隆、片山郁江(東映京都撮影所衣装部)
特効 – 前田智広、佃光
整音 – 萩原一輔
音効 – 森下怜二郎
美術協力 – 辻野大、田宮美咲、岡崎真理
制作 – 清水正子
装身具 – 高津商会
『侍タイムトリッパー』は、一見ベタなようですが、多重構造をもち、時代劇ひいては映画への愛情にあふれた映画です。この記事で少しでも興味を持たれた方は、ぜひ本編をチェックしてみてください。