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パワーの感想
ナオミ・オルダーマン「未来」の日経書評(大森望)を読んで前作がドラマ化されていることを知ったので、さっそく見てみた。
ある日とつぜん、女性だけに電気生成能力(パワー)が発現する。パワーはElectric Organ Discharge(EOD)と呼ばれ、鎖骨をまたがるスケインという器官がエストロゲンによって突然変異したとされる。
この現象をめぐってグローバルに5人の人物の状況が語られる。
一人目は、何者かの”声”に導かれて姉妹修道院から教祖的存在になっていくイブ(アリー)。
次に、裏社会の父親に愛人の母親を殺されて復讐を誓う、おそらく最強のパワーを持つロクシー。
パワーを撮影した動画をCNNに高値で売り込み、ジャーナリストとして危険地帯に飛び込むナイジェリアの青年トゥンデ。
4人目は娘からEODをもらい、それを隠しつつ大統領選に出馬するシアトルの市長マーゴット。
最後に、東欧の非民主国家カルパチアの元体操選手で、国王にみそめられて王宮入りした妃タチアナ。
パワーはまず男性を懲らしめる武器として利用される。アリーは自分を手篭めにしようとした養父を感電死させて逐電する。取材でサウジアラビアを訪れたトゥンデは、抑圧された女性たちのデモが軍隊を無力化するのを目の当たりにする。
アメリカでは男の復権を標榜するネット団体が支持者を増やし、それを背景にマーゴットの対立候補の知事がEODを規制し、兵器として管理する計画を進める。公開討論で自らがEODを保持していることを暴露されそうになったマーゴットは、かっとなって相手に電撃波を浴びせてしまう(ドラマではこれを浴びた者はたいてい死ぬ)。
最強のパワー保持者であるロクシーは、神の声を聞くイブと合流したのだが、次はこの団体がマーゴットが手を組む展開が予想される。
原作も含め、あたかも男性を懲らしめるファミニズムストーリーと捉えられているが、あくまでも女性がパワーを手にしたとき何が起こるかという思考実験以上のものではないように見え、かっとなって後先考えずに政敵を感電死させてしまうマーゴットなどは、いかにも「女性的な」浅はかさを示すようだもあるし、爆薬庫のようなロクシーも暴力的にすぎる。タチアナの冷徹さも怖いのだが、要するに男性をカリカチュアしたような世界の始まりのように思えてしまうのだが。
パワー テーマと見どころ
本作は、「もし女性が突然“物理的に最強”になったら、世界はどう変わるか?」という根源的かつ大胆なSFシミュレーションである。
パワーのテーマは?
- 性別による権力構造の逆転(「男性が支配する世界」から、「女性が力を持つ世界」へ──その変化に人々はどう対応するのか?)
- 暴力と支配(力を持ったことで、女性たちは本当に自由になれるのか?それとも、同じ構造を繰り返すのか?)
- 政治・宗教・家族の崩壊と再構築(社会のあらゆる分野がこの「力」によって再定義されていく)
パワーの見どころは?
- 衝撃の能力:“電気を放つ力”
十代の少女たちが突然、指先から電気を出す能力を獲得。次第に中年女性にも広まるこの異変が、世界の性別バランスを一変させる。 - グローバルな物語展開
ロンドン、シアトル、ナイジェリア、東欧など、世界各地を舞台に展開。文化の違いも描いた壮大な群像劇。 - フェミニズム的テーマ
女性が抑圧から解放される可能性と、その影響を描いたパワフルなメッセージ性が評価されている。 - 俳優陣の演技と演出
トニ・コレットら実力派キャストの迫真の演技が好評。また原作に忠実ながらも映像表現を強めた演出が見どころ 。
パワー あらすじ
突如として世界中の10代の少女たちに、“電気を自在に操る能力”が芽生える。やがてその力は他の年齢層の女性にも伝播し、女性が男性よりも物理的に強い存在になる社会が形成されていく。
世界の各地で同時多発的に変化が起こる――アメリカの女性市長マーゴ は、自らの娘が力に目覚めたことをきっかけに、社会的立場と母親としての立場の間で葛藤する。ナイジェリアの若きジャーナリスト トゥンデ は、この“パワー”の広がりを追い、世界中の変化を目撃する。イギリスの孤独な少女 ロクシー は、自分の能力を使って家族や暴力に立ち向かおうとする。
パワーを観るには?
パワー キャスト
ロブ・ロペス(マーゴットの夫で医師) – ジョン・レグイザモ
ジョス・クリアリー・ロペス(マーゴットとロブの娘で高校生) – アウリイ・クラヴァーリョ
トゥンデ・オジョ(ナイジェリアのジャーナリスト) – トヒーブ・ジモー
ダニエル・ダントン(シアトル知事) – ジョシュ・チャールズ
ロキシー・モンク(ロンドンに住むギャングの娘) – リア・ズミトロヴィッチ
アリー(里親をたらい回しにされている子) – ハル・ブッシュ
バーニー・モンク(ロキシーの父親でギャングのボス) – エディ・マーサン
タチアナ・ドニチ(元体操選手、カルパチア王妃) – ズリンカ・ツヴィテシッチ
パワー スタッフ
『パワー』は、女性が男性よりも物理的に強い存在になる社会が形成されていく未来を描いたSF映画です。この記事で少しでも興味を持たれた方は、ぜひ本編をチェックしてみてください。
パワーの原作(ナオミ・オルダーマン)
ある日を境に世界中の女に強力な電流を放つ力が宿り、女が男を支配する社会が生まれた――。 エマ・ワトソン、オバマ前大統領、ビル・ゲイツ推薦!
最強の力を持つ少女ロクシー、革命を追うジャーナリスト・トゥンデ、新たな宗教をつくろうとするアリー、勢いを増す政治家・マーゴット。
男女の力が逆転した世界で、女たちの復讐がはじまる。
ベイリーズ賞受賞、各紙ベスト10、世界三十か国以上で刊行され、「現代の『侍女の物語』」と絶賛されるディストピア衝撃作!