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エテルナウタ

4.0
モラ・フィス(エテルノウタ) 未分類
モラ・フィス(エテルノウタ)

『エテルナウタ』(原題「El Eternauta」)は、エクトル・ヘルマン・オステルヘルドとフランシスコ・ソラノ・ロペスによる同名コミックを原作とし、NetflixとK&S Films制作でブルーノ・スタニャーロが監督したアルゼンチンのSFテレビシリーズ。エイリアンの侵略による降雪の生存者集団を描く。

【ネタバレ】エテルナウタのあらすじ・感想

舞台はでブラジルに次ぐ南米大国アルゼンチンの首都、ブエノスアイレス。最も寒い7月でも11℃前後、夏期の1月ともなれば平均気温25℃前後というクリスマスシーズンに、しんしんと雪が降り始めるところから話が始まる(実際に2007年に89年ぶりの降雪があり、異常気象のニュースになった)。

ところがこれがタダの雪ではなく、触れただけで即死するらしい。電気も通信も途絶え、トルッコなるカードゲーム(ブラフが重要なゲームで、南米では全国大会もあるらしい)に興じるために集まったオヤジたちが孤立することに。
その中のひとりフアンは離婚した妻との間にできた娘クララのことが心配でたまらなくなり、仲間が止めるのも聞かず、手製の防護服に身を包み、娘の安否を確認するために、死の吹雪が舞う街へと繰り出すことに。

死体だらけの街、電車に閉じ込められた人々などをやり過ごし、なんとか元妻の住むアパートまでたどり着くものの、クララは来ていなかった。フアンは妻を連れてクララの学校へ行ってみるが、やはり見つからない。この間、雪中を強行するフアンに助けを求めたり、情報を得ようと人々が群がってくるのだが、フアンは頑固に「俺は娘を探しているんだ」と一顧だにしないのがちょっとストレスだった。

仲間たちのガレージに一度戻ってから、今度は街の反対側(フアンの自宅がある)に向かうと、そこにはおびただしい数の自動車がうずたかく山積みになり、壁をなしていた。軍の人間から戻るように言われるが、同じように「俺は娘を――」と我を張っていると、なんと巨大な甲虫が登場。ここまででも、降雪した街に火の玉のようなものが空から降ってくる描写があったのだが、それと関係あるらしい。虫は鋭い脚で人間を切り裂き、口から糸を出してぐるぐる巻きにして巣へ連れていってしまう。ここまでで4話目。

なんとか逃げたフアンは教会に籠城している一団と出会い、「俺は娘を――」と言いつつ、皆を連れて自動車の壁の向こうを目指すことに。

とまあいろいろあるうちに元のガレージにふたたび戻ると、クララはなぜか戻ってきていた。しかし記憶も言っていることも曖昧で、それまで何をしていたのかはわからない。

トルッコ仲間で電気技師のタノは磁石がおかしいと言い、この雪はヴァン・アレン帯が崩壊したかけらなのではないかと危機感をあらわにする。そこで一行はガレージを捨て、高速道路で軍の基地があるカンポ・デ・マヨへ。途中のSAでは謎の覆面男女による銃の乱射事件などがあったり、仲間がいつの間にか軍に合流していたりといった不思議も起こるのだが、なんとか軍に合流することができた。

ラスト2話は、その軍のミッションで再び街に戻り、生存者に無線で呼びかけを行うことに。軍人たちと機関車を改造して突っ込むこのエピソードはなかなか恰好が良い。やはり機関車というのは映像に元気をもたらす。

無線発信はうまくいったものの、トルッコ仲間のルッソが急におかしくなり、また生存者たちがスタジアムの光る怪物に操られている(機関車ミッションに参加した仲間もすでに取り込まれている)ことがわかったところで、シーズン1はおしまい。

エテルナウタ シーズン2

シーズン1の配信開始から1週間で、NetflixのXはシーズン2を発表。プロデューサーであるマティアス・モステイリンは、エピソード数を8つに増やし、最終シーズンにすると語っている。
シーズン1は撮影に8ヶ月、ポスプロに1年かかっており、順調に進んでもシーズン2配信は2027年夏以降と予想されている。

エテルナウタとマルビナス戦争(フォークランド紛争)・経済のジェットコースター

主人公フアンの抱えるPTSD

本作はアルゼンチン文学の金字塔を最新映像で蘇らせたSFサバイバルと言えるが、1982年のマルビナス戦争(日本人には「フォークランド紛争」というイギリスからの呼び名で知られている)という歴史を寓意として活用し、「戦争と国家の記憶」を寓話化している。

主人公フアンは、マルビナス戦争の帰還兵である。銃の扱いに慣れているのはそのためだ。
彼は雪上での極限状況とリンクしてPTSDによるフラッシュバック描写に悩まされている。マルビナス戦争はアルゼンチン社会に深い傷を残した歴史であり、ドラマにおいて「忘れられた兵士たち」「国を背負った痛み」を意味している。戦争の負の世代であるフアンのフラッシュバックは、歴史的なトラウマの延長線上にある。

本作の原作コミックは、1950年代にに出版されたが、原作者の原作エクトル・ヘルマン・オエステルヘルは1970年代にアルゼンチンの独裁政権を批判したかどで暗殺されている。つまり本作の映像化の根底には国家・軍権力への警鐘がある。主要人物にマルビナス戦争の記憶を埋め込むことで、反独裁・反帝国主義のメッセージを伝えている。
原作では「ひとりでは誰も救えない(No one is saved alone)」というメッセージが繰り返されている。マルビナス戦争のトラウマを持つ世代が、雪によるサバイバル=“侵略”を通じて、人々が再び共闘と連帯を余儀なくされるという設定は、記憶を共有する世代や社会に強い喚起力がある。

マルビナス戦争とは

17世紀以降、イギリスが実効支配していたアルゼンチン沖のマルビナス諸島(これはアルゼンチン名で、英名が「フォークランド諸島」。アルゼンチン本土から約500kmしか離れていない)は、アルゼンチンが独立したことによって、長らく領有権争いの焦点であり、両国間の緊張を高める要因となっていた。特に1970年代には周辺海域で石油資源の存在が明らかになり、資源を巡る関心が両国で高まって、アルゼンチンはイギリスによる油田開発に反発していた。

1982年4月2日、経済不振や政治的混乱に直面していたレオポルド・ガルチエリ大統領のアルゼンチン軍事政権が、政権は国民の目を国内問題からそらすために諸島に侵攻、占領したことにより、開戦。

当初は5日程度の侵攻計画であり早期の停戦が信じられていた。ところがイギリスのサッチャー政権は海上封鎖や激しい空爆を展開し、6月14日にアルゼンチンを降伏に追い込んだ。イギリス軍は世界で初めて原子力潜水艦を実戦投入し、米国の偵察衛星が側面支援するなど、この「紛争」は「兵器の実験場」と称された。

この戦闘の犠牲者は島民3人、アルゼンチン軍649人、イギリス軍255人と言われるが、PTSDによる帰還兵の自殺者は数百人にのぼるとされている。

2001年の財政破綻

「エテルナウタ」の登場人物たちは、何度か「2001年と同じだ」と口にしている。

アルゼンチンは19世紀後半から20世紀前半にかけて農産物輸出で巨額の外貨を獲得し、第1次世界大戦前には、世界有数の富裕国だっ。しかし第2次世界大戦後、下層労働者が熱狂的に支持するペロン大統領の正義党(通称ペロン党)が一大勢力となり、ペロン党政権による労働者向けの人気取りの色彩が濃いポピュリズム的な政策が長期間続いた。この間、インフレ率の急上昇、資本流出による景気後退、その後の回復というパターンが繰り返され、経済はジェットコースター状態に。ペロニズム(福祉ポピュリズム=国民に無償でサービス提供する政策)をはじめとするポピュリズム政策も財政悪化の原因とされる。
債務不履行(デフォルト)8度、インフレ率は3090%(1982年)、2桁を超えたことも1回や2回ではなく、ペソ切り下げを繰り返してきたが、特に1990年代後半には過剰債務(財政赤字拡大、対外債務増加)、高いインフレ率が問題となった。

1992年に固定為替相場制度を導入して通貨の信認回復を図り、財政赤字削減と経済活動自由化などを柱とする構造改革を実施したことでハイパーインフレはようやく終焉し、景気も回復に向かったものの、アジアやロシアの通貨危機の余波を受けて隣国ブラジルが1999年に変動相場制移行へ追い込まれ、為替相場を大幅に切り下げたため、固定為替相場制のアルゼンチンは苦境に立たされ、ついに2001年の深刻なデフォルトに陥る。

預金封鎖に踏み切り、国民の資産が大幅に目減りして、生活水準低下、貧困拡大など、大きな社会不安を引き起こすとともに、政治的対立、政府に対する不信感が増大した。
1982年のマルビナス諸島軍事占領は、国民の視線をそらす大きな賭けだったが、巨額の戦費が財政赤字をさらに増大させ、インフレは一層加速した。

アルゼンチンの経済成長率の推移

2015年にマクリ大統領がペロン党を破って外貨取引規制を緩和し、外貨購入規制を撤廃。公定レートは闇レートに鞘寄せされて下落した。2018年にはペソ売りが再び加速。2019年にペロン党政権が復活してもペソ安の流れは止まらず、外貨準備の減少に拍車がかかる。2023 年にはペロン党を破っ
てミレイ新大統領が就任して公式為替レートを50%切り下げると発表、国際収支の対外不均衡が解消に向かうと期待されている。しかしペソ安が急に是正される状況ではないことから、高インフレが当面持続するのは避けられず、国民生活の窮乏状態解消は現在も見通せない状況である。

エテルナウタを観るには?

エテルナウタ キャスト

フアン・サルボ(異常事態に巻き込まれた一般人) – リカルド・ダリン
エレナ(サルボの元妻) – カーラ・ピーターソン
アルフレッド・ファヴァリ(タノ) – セザール・トロンコーソ
アナ(ファヴァッリの妻) – アンドレア・ピエトラ
オマール – アリエル・スタルタリ
ルーカス(サルボの友人)- マルセロ・スビオット
クララ・サルボ(フアンとエレナの娘) – モラ・フィス
ポルスキー(ルッソ)(サルボの友人) – クラウディオ・マルティネス・ベル
インガ – オリアナ・カルデナス

エテルナウタ 作品情報

原作 – エクトル・ヘルマン・オエステルヘル/フランシスコ・ソラーノ・ロペス「El Eternauta」
監督 – ブルーノ・スタニャロ
音楽 – フェデリコ・ジュシド
プロデューサー – ディエゴ・コペロ、レティシア・クリスティ、マティィアス・モステイリン、ヒューゴ・シグマン
撮影 – ガストン・ヒロド
編集 – アレハンドロ・ブロデルソン、アレハンドロ・パリソウ
上映時間 – 44~68分
制作会社 – K&Sフィルムズ、Netflix

エテルナウタの原作コミック

『エル・エテルナウタ』は、シナリオをエクトル・ヘルマン・オエステルヘルが執筆し、作画をフランシスコ・ソラーノ・ロペスが担当したSFコミックである。1957年9月4日から1959年11月18日に亘り、フロンテーラ出版発行の「週刊オラ・セロ(零時)」に連載された。
SFコミックの最高峰『エル・エテルナウタ』~やがて来るべき未来の記憶(2miradas)

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