飛雄馬はボクシングや剣道の特訓を通じて「打たせて取る」極意を体得。多摩川でついに「大リーグボール1号」を完成させる。人知を超えた威力に「ボールの化け物だ」と戦慄する伴だった。
巨人-大洋戦ナイター、1-6で左門がバッターボックスへ入る。
相変わらず投手層の薄い巨人、頼れるピッチャーは堀内だけである。
二軍宿舎でテレビに見入る選手たち。飛雄馬もあせる。
「くそう、こうしちゃいれん…大リーグボールを引っさげて、俺も一軍で投げてみたい」
と、そこへ入ってきた中尾二軍監督が一同に喝を入れる。
「今こそお前ら二軍選手が一軍に飛び出るときではないのか! このチャンスを逃してお前らはいつ一軍に行くつもりなのか!」

タダ飯食らい、月給泥棒!
「特に投手はなっておらんぞ、一軍投手陣に喝を入れるぐらいの気合の入った投手はいないのか!」
しゅんとなる空気の中、投手でもない伴が立ち上がり、
「任しといてもらおう!」と言うや、飛雄馬を振り返って、
「今こそ見せるときじゃい、あの球を!」
「監督、話があるんです」
と飛雄馬も立ち上がる。
「まさか、お前が一軍に行くという話じゃないだろうな?」と中尾。
「左門に大ホームランを打たれて、お前が二軍落ちしたのを忘れたのか?」
さっきまで一軍を目指せと言っていたのに、なにか逆のことを言い始める中尾である。
「星はおそるべき球を手に入れたんだっ…これさえさえあれば天下無敵っ…!」
伴はカイジふうに熱弁する。
「魔球…? 星得意のビーンボールのじゃないだろうな」
やりとりを見ていた一同が囃したてる。
「ようしわかった。明日の昼、一軍の特訓に参加しろ、ただしバッティングピッチャーとして」
と話を切り上げる中尾だった。
「バッティング…それはあんまりだ!」
と伴が抗議すると、
「お前はコントロールがいい、球も軽い、バッティングピッチャーとして最適だ。言っておくが、お前の言う天下無敵の球は投げちゃいかんぞ、ビーンボールという天下無敵の球はな!」
これにどっと笑う一同。

さんざん憤る伴であった
翌日、言われた通りバッティングピッチャーを務める星。たしかに打球がよく飛ぶのである。
「あれでよく一軍に出してくれなんて図々しく言えたもんだぜ」
あきれる速水。あれっ、一軍なはずなのに、昨夜の二軍の会話をなぜ知ってる?
藤田コーチ「ピッチャーは打者に自信をもたれると命とりだからなあ」
荒川コーチ「コントロールはいいし、球は軽い。打者に自信をつけさせるピッチャーとしては理想的ですな」
土手で見ていた一徹、「もう3日もバッティングピッチャーをやっておる…」

「なんてことだ…」
うーん、いつのまにか3日もたっているのね。何のための気もたせなのか?
川上も忸怩たる表情で「この川上の背番号16を受け継いだ男がバッティングピッチャー…?」
一徹はいらいらして、
「あの顔はバッティングピッチャーになりきっておらん! 見せい、飛雄馬、その秘密兵器を!」
しかし荒川コーチたちは「理想的なバッティングピッチャーだよ!」
その台詞に憤る一徹、「ぬかしたな、わしの生涯をかけた飛雄馬を理想的なバッティングピッチャーなどと!」
この回、一徹は親バカに徹して大熱演なのである。
「星、しばらくバッティングピッチャーとして投げてくれ。頼んだぞ」
という荒川の言葉に、一徹ググッと乗り出し、

「ならん、飛雄馬、それはいかん!」
しかし飛雄馬は素直に「ありがとうございます、やらせてもらいます」

「なあああーっ!!」

一徹、見ていられず、ふらふらと
「なんたることだ、父と子と生死の境をくぐり抜けて来た苦労の果てがバッティングピッチャーであったか!」
しかしその時、飛雄馬は意を決して―――

「監督、お願いがあります! 王さんと勝負させてください!」
川上「さあて、どうするかな」
王「ぼくは別にかまいませんよ」
川上「じゃあそうしてくれ」
飛雄馬「もうひとつお願いがあります。キャッチャーは伴にさせてください」
川上「真剣勝負だ、勝手にせい、16番」
なんとなく気迫を感じた王も緊張するが・・・

王さんも燃えてきたな…!

大リーグボール!

見物人、一斉にどよめき

川上もショック

「!?」と振り返る一徹

あ、あれは!

尻餅をついた王であった
1塁審判「アウトォ!」←打撃練習に審判がつくのか?
マウンドへ走る伴。
「よくやってくれた星! 貴様、貴様というやつはぁ~!!」
「泣くやつがあるか!」
「わかっとるわい!」
「勝ったぞ伴! 勝ったんだぞ!」
抱き合うバッテリー。

「こ、これはいったい…?」
「何が起こったんだ、わしの野球知識もってしてもこの奇怪な光景は説明がつかん」
- とにかく何らかの形で王と勝負したらしい
- しかも天才打者王のフォームがみごとに崩されておる
- そして三振したのなら主審が宣告するはずのアウトを一塁の累審が宣告しておる
- だが打ったのなら王は走るはず
- そして一塁手もベースについているはずだが、その姿もない
などと考えているうち、

はっと気づくと誰もグラウンドにいなかった
さらに家に帰った一徹は、スポーツニュースで、練習が突然中止になったことを知る。←そんなことはニュースにならないと思うが
「ふん…川上さんもまったくわからんことをやるわい」
ところが、キャスターによれば、見物人がいなくなってから練習はただちに再開されたという。
「なんだと!」
――報道陣はすぐこれに気づきましたが、川上監督は完全に取材をシャットアウトしました・・・
「哲のカーテンだ!」
――秘密練習に切り替えねばならない何かが起こったようです・・・
――しかしそれまで練習を見ていた報道陣によると、なんら変わったことはなかったということです・・・
「なんだと!」ともう一度叫び、思わず立ち上がる一徹。
「別段変わったこともなかっただと、ばかな! あの奇怪な光景を見たのはわしだけだったというのか! 見物人も報道陣も、あの勝負を別段変わったことと受け取っておらん…」
いや、見物人はみんな驚いてましたけど…
「しかし待て、飛雄馬の投げたその球は、一見、平凡な球であった、あえてそうだったとしよう。一見平凡、おそるべき正体がその裏にある。そしてその球は打撃の天才王貞治をみごと討ち取った。それを見た川上監督はおそるべきその球の正体を看破し、ただちに秘密訓練に切り替えた・・・」
一徹、興奮のあまりとうとう外に走り出て、
「やった! やったんだ! わしの手元から離れて言った飛雄馬が自分ひとりで悶え苦しみ、そしてあみ出した新変化球!」

よくやった、よくやったぞ飛雄馬!
大洋戦に登板した飛雄馬がついに大リーグボール1号を披露し、前代未聞の魔球で左門らを圧倒した。過酷な特訓が結実し、見事な復活を遂げた息子に一徹も涙。「打たせて取る」逆転の発想は球界に衝撃を与える。(第75話|大リークボール誕生)

