影武者

倍賞美津子・桃井かおり(影武者)
倍賞美津子・桃井かおり(影武者)

1980年公開、監督は黒澤明、主演は仲代達矢。カラー、ビスタ、180分。ハリウッドの大手スタジオから世界配給された最初の日本映画。黒澤を敬愛するフランシス・フォード・コッポラ、ジョージ・ルーカスが外国版プロデューサーとして参加した。黒澤にとっては、前作『デルス・ウザーラ』(1975年)以来、5年ぶりの作品であり、久しぶりの時代劇でのスペクタクル巨編。黒澤作品では唯一の実在の戦国武将(武田信玄)にまつわるエピソードを取り上げ、戦国時代後期に影武者として生きる運命を背負わされた小泥棒の姿を描く。
勝新太郎の降板劇など公開前から話題を呼び、当時の日本映画の歴代映画興行成績(配給収入)1位を記録した。第33回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞し、第53回アカデミー賞で外国語映画賞と美術賞の2部門にノミネートされた。

影武者のあらすじ

天正元年 (1573年)、武田信玄は東三河で野田城を攻め落とそうとしていたが、ある夜、城内から狙撃され、上洛の野望叶わずして死亡。自己の死は秘匿し、幼い嫡孫(竹丸)が成長するまで3年は動かずに領地を固めてほしいとの遺言を残した。
後を託された信玄の弟・武田信廉と重臣らは信玄の死を明かさず、死刑寸前のところを拾ってきた盗人を影武者とする。盗人は逃げようとしたため一度は解任されたが、信玄が死んだこと、かつその死が信長や家康の間者にばれたところを目撃すると、以前の信玄の威厳や助命の恩義を思い出し、あらためて影武者になることを重臣たちに土下座して願い出る。
影武者は嫡孫竹丸や側室たちとの対面を危うく果たし、やがては評定の場においても信玄らしく振舞って収めるなど、予想以上の働きを見せたが、信玄の存命を疑う信長や家康は陽動作戦を展開。諏訪の勝頼が独断で出陣し、武田家内には不協和音がもたらされる。勝頼は側室の子ゆえ嫡男とはみなされず、自身の子竹丸の後見人とされており、かつ、本来は下賤の影武者にかしずかねばならないことに憤懣やる方なかった。
ある日、影武者は信玄の愛馬から振り落とされ、川中島の戦いの傷がないことを側室に見られ、ついにお役御免となる。重臣らはやむを得ず、勝頼を武田家の総領と決めるが、功にはやる勝頼は重臣たちの制止を振りきり、長篠で織田・徳川の連合軍と相対。三段構えの敵鉄砲隊の前に武田騎馬軍の屍が広がる中、影武者だった男は槍を拾い上げ、ひとり敵へと突進していく。
戦が終わり、男は死屍累々の戦場の中を徘徊して風林火山の御旗を見つける。駆け寄ろうとして力尽き斃れ、男の屍は河に流されていく。

影武者の感想

見ている間はわからなかったが、左が倍賞美津子(於ゆうの方)、右が桃井かおり(お津弥の方)である。これ以上アップになることはないのだが(この映画でアップになるのは、ほぼ、信長と家康だけである)、この無邪気な二人が騒ぎ立てたため仲代達矢は影武者の任を解かれてしまう。

先週見た「」の予算を軽減化するために作られた映画だというが、二つの映画はまるで趣が違う。信長(明晰)や家康(実務的)の描写が青空などを背景にやたら明るいのに対し、影武者の秘密を押し隠しながら躑躅ヶ崎館内を行き交う武田の重臣たちはむっつりと暗く、まるで幽霊のようである。そして合戦シーンはことごとく隠喩的で、そのへんも「乱」とは大分違う。

影武者のキャスト

武田信玄、影武者:仲代達矢(予告編、本編)勝新太郎(特報)
武田信廉:山﨑努
諏訪勝頼:萩原健一
土屋宗八郎:根津甚八
山縣昌景:大滝秀治
織田信長:隆大介
徳川家康:油井昌由樹
お津弥の方:桃井かおり
於ゆうの方:倍賞美津子
馬場信春:室田日出男
内藤昌豊:志浦隆之
跡部大炊助:清水綋治
原昌胤:清水のぼる
小山田信茂:山本亘
高坂弾正:杉森修平
武田竹丸:油井孝太
森蘭丸:山中康仁
竹丸付き老女:音羽久米子
丹羽長秀:山下哲夫
雨宮善二郎:阿藤海
托鉢僧:江幡高志
原甚五郎:島香裕
傀儡子:田辺年秋
温井平次:井口成人
塩売り:山口芳満
甘利おくら:金窪英一
信玄を狙撃した足軽:杉崎昭彦
友野又市:宮崎雄吾
泥武者:栗山雅嗣
酒井忠次:松井範雄
伝騎:矢吹二朗
石川数正:土信田泰史
伝騎:渡辺隆
本多平八郎:曽根徳
織田の使者:伊藤栄八
宣教師:フランシスコ・セルク
武田屋形番頭:梁瀬守弘
宣教師:アレキサンダー・カイリス
医師付きの小者:加藤敏光
武田屋形小者:ポール大河
上杉謙信:清水利比古
武田屋形小者:大村千吉
田口刑部:志村喬
医師:藤原釜足
能「田村」シテ:浦田保利(観世流)
鏑馬武田流司家:金子有隣

影武者のスタッフ

監督:黒澤明
プロデューサー:黒澤明田中友幸
外国版プロデューサー:フランシス・コッポラジョージ・ルーカス
アシスタントプロデューサー:野上照代
シナリオ:黒澤明、井手雅人
監督部チーフ:本多猪四郎
アドバイザー:橋本忍
撮影:斎藤孝雄、上田正治
撮影協力:中井朝一、宮川一夫
美術:村木与四郎
録音:矢野口文雄
照明:佐野武治
音楽:池辺晋一郎
指揮:佐藤功太郎
演奏:新日本フィルハーモニー交響楽団
協力∶東京コンサーツ
音響効果:三縄一郎
整音∶安藤精八
監督助手:岡田文亮
スチール:橋山直巳
武家作法:久世竜
馬術指導:白井民平
騎馬訓練:長谷川敏
現像:東洋現像所
製作担当者:橋本利明
衣裳提供:三松
協力:日本航空、上野市(現・伊賀市)・伊賀上野城、熊本市・熊本城、姫路市・姫路城

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