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影武者

倍賞美津子・桃井かおり(影武者) 映画
倍賞美津子・桃井かおり(影武者)
影武者は、1980年公開、監督は黒澤明、主演は仲代達矢。カラー、ビスタ、180分。ハリウッドの大手スタジオから世界配給された最初の日本映画。
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影武者の感想

見ている間はわからなかったが、左が倍賞美津子(於ゆうの方)、右が桃井かおり(お津弥の方)である。これ以上アップになることはないのだが(この映画でアップになるのは、ほぼ、信長と家康だけである)、この無邪気な二人が騒ぎ立てたため仲代達矢は影武者の任を解かれてしまう。

本作は、先週見た「」の予算を軽減化するために作られた映画だというが、二つの映画はまるで趣が違う。信長(明晰)や家康(実務的)の描写が青空などを背景にやたら明るいのに対し、影武者の秘密を押し隠しながら躑躅ヶ崎館内を行き交う武田の重臣たちはむっつりと暗く、まるで幽霊のようである。そして合戦シーンはことごとく隠喩的で、そのへんも「乱」とは大分違う。

影武者 見どころ

勝新太郎の降板劇など公開前から話題を呼び、当時の日本映画の歴代映画興行成績(配給収入)1位を記録した。第33回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞し、第53回アカデミー賞で外国語映画賞と美術賞の2部門にノミネートされた。
黒澤を敬愛するフランシス・フォード・コッポラ、ジョージ・ルーカスが外国版プロデューサーとして参加した。黒澤にとっては、前作『デルス・ウザーラ』(1975年)以来、5年ぶりの作品であり、久しぶりの時代劇でのスペクタクル巨編。黒澤作品では唯一の実在の戦国武将(武田信玄)にまつわるエピソードを取り上げ、戦国時代後期に影武者として生きる運命を背負わされた小泥棒の姿を描く。

  1. 黒澤明監督による壮大な合戦絵巻
    『七人の侍』などでも知られる黒澤明監督が、戦国時代の合戦を圧倒的なスケールと迫力で描く。武田騎馬隊の進軍、長篠の戦いにおける激しい攻防など、その映像美と臨場感は圧巻。美術や衣装、セットの細部に至るまで徹底的にこだわり抜かれた映像は、まさに動く絵巻物のよう。
  2. 仲代達矢の鬼気迫る二役演技
    仲代達矢が武田信玄と、その影武者となる盗人の二役を演じ分ける。信玄としての絶対的な威厳とカリスマ性、そして影武者が本物になりきろうとする苦悩と、役割を終えてからの孤独と葛藤を、鬼気迫る演技で表現。
  3. 「影」の存在と人間のアイデンティティ
    核となるのは、「影武者」という存在を通して描かれる人間のアイデンティティ。自分が何者なのか、役割を演じることの意味、そして本物と偽物の境界線といった哲学的なテーマが掘り下げられる。影として生きることで人間性が揺らぎ、存在自体が曖昧になっていく姿が描かれる。
  4. 豪華なキャスト陣とアンサンブル
    萩原健一(武田勝頼)、隆大介(織田信長)、油井昌由樹(徳川家康)、山﨑努(武田信廉)、根津甚八(土屋宗八郎)といった豪華な俳優陣がそれぞれ個性的なキャラクターを演じ、物語に深みと重厚感を与えた。
  5. 戦争の虚しさ、人間の哀れさ
    壮大なスケールの合戦シーンが描かれる一方で、戦乱の世における人間の命の儚さ、そして戦争がもたらす悲劇や虚しさが、詩的な映像と重厚な音楽と共に表現された。長篠の戦いの結末は、歴史の悲劇を象徴的に描き出す。

影武者のあらすじ

天正元年、武田信玄は野田城攻めで狙撃され死亡。その死は秘匿され、盗人が影武者として信玄を演じる。影武者は信玄の威厳を保ち、評定をまとめるが、信長や家康は陽動作戦を展開。諏訪の勝頼は独断で出陣し、武田家内に不協和音が生まれる。影武者は信玄の愛馬から落ち、正体がばれお役御免に。勝頼が総領となり、長篠で織田・徳川連合軍と戦うが、武田騎馬軍は鉄砲隊に惨敗。影武者は槍を手に敵へ突進し、戦場で力尽きる。彼の屍は風林火山の御旗と共に河に流される。

影武者を観るには?

影武者のキャスト

武田信玄、影武者:仲代達矢(予告編、本編)勝新太郎(特報)
武田信廉:山﨑努
諏訪勝頼:萩原健一
土屋宗八郎:根津甚八
山縣昌景:大滝秀治
織田信長:隆大介
徳川家康:油井昌由樹
お津弥の方:桃井かおり
於ゆうの方:倍賞美津子
馬場信春:室田日出男
内藤昌豊:志浦隆之
跡部大炊助:清水綋治
原昌胤:清水のぼる
小山田信茂:山本亘
高坂弾正:杉森修平
武田竹丸:油井孝太
森蘭丸:山中康仁
竹丸付き老女:音羽久米子
丹羽長秀:山下哲夫
雨宮善二郎:阿藤海
托鉢僧:江幡高志
原甚五郎:島香裕
傀儡子:田辺年秋
温井平次:井口成人
塩売り:山口芳満
甘利おくら:金窪英一
信玄を狙撃した足軽:杉崎昭彦
友野又市:宮崎雄吾
泥武者:栗山雅嗣
酒井忠次:松井範雄
伝騎:矢吹二朗
石川数正:土信田泰史
伝騎:渡辺隆
本多平八郎:曽根徳
織田の使者:伊藤栄八
宣教師:フランシスコ・セルク
武田屋形番頭:梁瀬守弘
宣教師:アレキサンダー・カイリス
医師付きの小者:加藤敏光
武田屋形小者:ポール大河
上杉謙信:清水利比古
武田屋形小者:大村千吉
田口刑部:志村喬
医師:藤原釜足
能「田村」シテ:浦田保利(観世流)
鏑馬武田流司家:金子有隣

影武者のスタッフ

監督:黒澤明
プロデューサー: 黒澤明田中友幸
外国版プロデューサー: フランシス・コッポラジョージ・ルーカス、アシスタントプロデューサー:野上照代
シナリオ:黒澤明、井手雅人
監督部チーフ:本多猪四郎
アドバイザー:橋本忍
撮影:斎藤孝雄、上田正治
撮影協力:中井朝一、宮川一夫
美術:村木与四郎
録音:矢野口文雄
照明:佐野武治
音楽:池辺晋一郎
指揮:佐藤功太郎
演奏:新日本フィルハーモニー交響楽団
協力:東京コンサーツ
音響効果:三縄一郎
整音:安藤精八
監督助手:岡田文亮
スチール:橋山直巳
武家作法:久世竜
馬術指導:白井民平
騎馬訓練:長谷川敏
現像:東洋現像所
製作担当者:橋本利明
衣裳提供:三松
協力:日本航空、上野市(現・伊賀市)・伊賀上野城、熊本市・熊本城、姫路市・姫路城

『影武者』は、黒澤明監督の芸術性、スケールの大きな時代劇アクション、そして人間の存在意義を深く問いかける哲学的なテーマが融合した、日本映画史に残る傑作です。この記事で少しでも興味を持たれた方は、ぜひ本編をチェックしてみてください。

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