赤い死線の感想
山口百恵引退記念スペシャルと銘打たれた「赤いシリーズ」最終作で、放送は80年11月(伝説のファイナルコンサートは10月5日)。全2回だが、大幅に重複するシーンがあるので正味は1時間もないのではないか。
ウィリアム・アイリッシュの原作「暁の死線」は5回もドラマ化されているのだが(「幻の女」も同じ5回)、1944年の話を現代に置き換えるのはかなり無理がある出来になっている。
三浦友和は悪徳社長である高橋昌也を殺したとされて逃亡中でありながら、朝一番の飛行機(原作では長距離バス)の搭乗までに真犯人を捕まえなければならないと思い込んでいるという「幻の女」同様のタイムリミット物なのだが、会って数時間しか経っていない百恵(挫折したダンサー)は、友和と同郷だというだけで盛り上がって、一緒に飛行機に乗れないと世界が終わるような思いつめ方をしている。
百恵はその30分前まで「バレエ団で良い役をもらった、バンザーイ!」というヤケクソのようなウソ手紙を襟裳の母に向けて書いていたのに、飛行機はちゃっかり予約済みでチケットを持っているのは腑に落ちない。
二人が警察に追われながら怪しいと思われる人間を順番に当たり、ことごとく空振りに終わる展開で、無駄に色気のある松原智恵子(このへん増村保造っぽい)、5億の土地を奪われた山本學、スナック経営者のアン・ルイスとジョニー大倉など、豪華ゲストが入れ替わり立ち替わり現れる。ちなみに百恵の雇い主であるディスコの支配人は石立鉄男、二人を追う刑事は三國連太郎。
結局、松村達雄の守衛が犯人であることがわかり、二人は親切な宇津井健(実は札幌行の機長)に羽田空港まで送ってもらう。宇津井はたしか百恵友和の仲人だったはずで、なかなか粋な配役と言える。
赤い死線 あらすじ
バレリーナを目指し上京した川波良子は、母への仕送りのためバレエ団に内緒で高級ディスコでダンサーをしていたが、退団処分を受けていた。
ある夜、良子はディスコのオーナー江藤に言い寄られていたところ、江藤から投資金1000万円を騙し取られた青年が現れる。揉み合いの末、青年は警察に連行されるが、夜遅く良子のアパートに姿を現す。彼は北村明夫、偶然にも良子の故郷・襟裳の隣人だった。明夫は江藤の事務所から持ち出した1000万円を返そうと良子と共にビルへ向かうが、そこで江藤の遺体を発見する。
2人は真犯人を追う過程で、売春を強要された野中令子など複数の容疑者と対峙するが、真犯人は江藤に騙されてビルを奪われた守衛の堀田だった。堀田は警察に自首し、飛行場へ急ぐ良子と明夫を元パイロットの中年紳士が送る。
2人が8時30分発の札幌行き飛行機に乗り込むと、操縦席から挨拶したのは、先ほどの中年紳士だった。こうして良子と明夫は故郷へと飛び立っていった。
赤い死線を観るには?
赤い死線 キャスト
北村明夫:三浦友和
「ミルキーウエイ」支配人:石立鉄男
ケイ:アン・ルイス
トオル:ジョニー大倉
野中令子:松原智恵子
堀田(守衛さん):松村達雄
村田(タクシー運転手):坂上二郎
タクシー運転手:辻シゲル、浅見小四郎
マスター:小鹿番
鈴木一之助刑事:三國連太郎
鈴木の妻:春川ますみ
江藤:高橋昌也
野中健二(令子の夫):前田吟
鈴木一郎:山本學
刑事:小林稔侍
中年紳士:宇津井健
赤い死線 スタッフ
製作:川勝昭信
監督:増村保造、国原俊明、合月勇
脚本:安本莞二
撮影:中川芳久
音楽:宇崎竜童
振付:西条満
協力:日本航空、ホリプロダクション
ナレーション:城達也
製作:大映テレビ、TBS
赤い死線の原作
ニューヨークで夢破れたダンサーのブリッキー。孤独な生活を送る彼女は、ある夜、挙動不審な青年クィンと出会う。なんと同じ町の出身だとわかり急速にうち解けるふたり。出来心での窃盗を告白したクィンに、ブリッキーは盗んだ金を戻そうと提案する。現場へと向かうが、そこには男の死体が。このままでは彼が殺人犯にされてしまう。潔白を照明するタイムリミットはたった4時間。『幻の女』で名高い著者の傑作サスペンスを新装版で贈る。