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2004年公開の日本映画。第13回PFFスカラシップ作品。荻上直子監督の長編劇場デビュー作品。
バーバー吉野のあらすじ
山あいの田舎町では、散髪屋「バーバー吉野」の経営する母親によって子供たちは皆「吉野ガリ」という同じおかっぱ頭にされていた。ある日、茶髪の横分けヘアの東京からの転校生・坂上君が現れる。散髪屋の息子・慶太と友人たちは、最初は坂上君も同じ髪型にするべきだと思っていたが、彼の家でエロ雑誌を発見したことをきっかけに仲間に迎える。しかし、グッチがエロ雑誌を持ち出して先生に見つかる騒動が起き、吉野のおばちゃんは坂上君の髪型に反発。最終的に坂上君も「吉野ガリ」にされてしまうが、少年たち5人は団結して髪を染め、天狗祭りで反対演説を行う。その結果、町の人々の意識が変わり、子供たちは自由な髪型を選べるようになった。
バーバー吉野の感想
「その町の少年は皆、同じ髪型をしていた…」という惹句のとおり、吉野刈りをしているのはひとつしかない小学校の男子だけなのだから、本作の世界には、特権的に少年(具体的には12歳前後の少年)のみが存在していると言っていい。
だから、たとえば「スタンドバイミー」と同じように、そこでは大人になるためのイニシエーションが描かれることになり、そこでお決まりの「和製スタンド・バイ・ミー」などという枕詞が付されたりする。
そういえば「ミスティックリバー」の宣伝コピーにまで「スタンド・バイ・ミー」が引き合いに出されていたのには、いいかげんうんざりで、さほどのオリジナリティがあるわけでもなく、スティーヴン・キングの映画化の中では比較的よくできているにすぎないロブ・ライナーの映画を、文字通り人生最高の映画のように称える人の多さにには、今さらながら驚かされる(アメリカ人はどうなのだろうか)。
「女性であるにもかかわらず」少年特有の生態をよく捉らえていると荻上直子監督を称賛することに対して、なんだかねえと思うのも、そんなことを言う奴が「スタンド・バイ・ミー」を特権化しているのにちがいないと決めつけたくなるからだ。
たしかにきめ細かい編集や画面設計、青空をバックにプッチーニを歌う「ケケおじさん」森下能幸の演出などには潔癖な大胆さを感じはするものの、そんなにうまくない子役たちの動きを活かしたロングの画面が多い中で、見分けのつかない吉野刈りをした主要5人の少年を個性づけて撮ることは、スティーヴン・キングが得意とすノスタルジックな時空間の現出とはまた別の能力と技術の問題だと思えるからである。
そもそも、ここでの主題は「見分けがつかないこと」だったはずだ。
床屋常連の桜井センリが説明するように、町の吉野刈り風習の由縁が、子供を掠おうとする天狗に少年たちの見分けをつかなくさせることにあったのだとしたら、その隠蔽の対象は、もちろん、大人になろうとしている少年にこそほかならず、画面にほかの年齢の少年は現れることがないのもそうしたせいであろう。
子供でもないのに吉野刈りをしている父親の浅野和之は、大人になりそこね、共同体から逸脱しつつある者で、近寄ることのないキャメラが映す、感情を押し殺した担任教師の三浦誠己のよそよそしさこそが大人であり、映画の外部なのだ。
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バーバー吉野のキャスト
もたいまさこ – 吉野のおばちゃん(慶太の母)
石田法嗣 – 坂上洋介(都会からの転校生)
大川翔太 – 矢島真之介(ヤジ)
村松諒 – 川口貴弘(カワチン)
宮尾真之介 – 山口修平(グッチ)
岡本奈月 – 上杉真央(慶太たち4人の同級生)
浅野和之 – 吉野武雄(慶太の父)
桜井センリ – 三河盛平(子供たちに三河のじいちゃんと呼ばれる)
森下能幸 – ケケおじさん(町の変わり者)
三浦誠己 – 北野先生
たくませいこ – 吉野香苗(慶太のお姉ちゃん)
バーバー吉野のスタッフ
撮影 – 上野彰吾
編集 – 普嶋信一
美術 – 松塚隆史
装飾 – 中澤正英
衣装デザイン – 松川好伸
ヘアメイク – 宮崎智子
ヘアメイク助手 – 百瀬広美
音楽監修 – 井出博子
音楽プロデューサー – 北原京子
現像 – IMAGICA
スタジオ – 日活撮影所
撮影協力 – フィルムコミッション伊豆、松崎町役場商工観光課、松崎町立岩科小学校、下田市役所商工観光課 ほか
協力 – 全国理容生活衛生同業組合連合会
製作者 – 矢内廣、中村雅哉、児玉守弘、黒坂修、高野力
プロデューサー – 天野真弓
バーバー吉野を観るには?
バーバー吉野を観た人の感想
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田舎の閉鎖的な空間の中で言い伝えや伝統を守ってきた子どもたちが転校生の到来をきっかけに町の伝統に疑問を抱き、新たに成長し前進していく姿が清々しくて良かった。
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