ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書の感想
映画は、民主党本部のあるウォーターゲートビルの警備員が、自動ロック扉にテープが貼られているのを発見するくだりを幕切れに描いて終わる。
本作のペンタゴン・ペーパーズ事件の翌年のことであり、ワシントンポストはそのスキャンダルも特報して宿敵ニクソンを辞任に追い込み、ピューリッツァー賞をとるのである。
映画はペンタゴン・ペーパーズの漏洩とワシントンポストの株式公開を同時並行で描き(IPOが6月15日、タイムズが特集記事を載せたのが6月13日だから、これは正確である)、専業主婦から新聞社の社主となったキャサリン・グラハム(メリル・ストリープ)の難しい立場を描いている。
躁鬱病の夫が自殺してから7年が経っているわけだが、女性CEOモデルのいない時代でかなりの苦労があったのは本当らしい。
当時、財政を握っていたのはウォーレン・バフェットだったが、その後の2000年代に出版不況で経営が傾き、ジェフ・ベゾスがハンズオフオーナーになった成り行きは、なんというか、無常を感じさせる。
キャサリンもベン・ブラッドリー(トム・ハンクス)も報道の自由を守ったヒーローとして描かれるが、映画中でも描かれたように、グラハム家はJFKやRFK、ジョンソン、キッシンジャー、そしてマクナラマその人とも親しく(キャサリンの母親は有名なボヘミアンだ)、明らかに政治的な親交をもっていた。
ベンも、JFKと親しいために女性問題のことを書かなかったことをキャサリンに指摘されている。
つまりここにはエスタブリッシュメントの二面性もあることを見逃してはならないだろう。
ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書のあらすじ
1971年、ベトナム戦争への不信が高まる中、軍事アナリストのエルズバーグは政府の嘘を示す最高機密「ペンタゴン・ペーパーズ」を流出させ、『NYタイムズ』がスクープする。政府は記事を差し止めるが、ライバル紙『ワシントン・ポスト』の発行人キャサリンと編集主幹ベンは、報道の自由を守るため残る文書を入手し掲載を決断。会社の危機や友人マクナマラへの葛藤と闘いながら、政府と法廷で争い、報道の正義を貫く。
ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書を観るには?
ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書 キャスト
ベン・ブラッドリー(編集主幹) – トム・ハンクス
トニー・ブラッドリー(ベン・ブラッドリーの妻) – サラ・ポールソン
ベン・バグディキアン(編集局次長・記者) – ボブ・オデンカーク
フリッツ・ビーブ(取締役会長) – トレイシー・レッツ
アーサー・パーソンズ(取締役) – ブラッドリー・ウィットフォード
ロバート・マクナマラ(国防長官) – ブルース・グリーンウッド
ダニエル・エルズバーグ(軍事アナリスト) – マシュー・リース
ラリー・グラハム・ウェイマウス(キャサリン・グラハムの娘) – アリソン・ブリー
メグ・グリーンフィールド(社説編集) – キャリー・クーン
ロジャー・クラーク(顧問弁護士) – ジェシー・プレモンス
アンソニー・エッセイ(顧問弁護士) – ザック・ウッズ
ハワード・サイモンズ(編集局次長) – デヴィッド・クロス
フィル・ジェイリン(記者・社説編集) – パット・ヒーリー
ジーン・パターソン(編集局長) – ジョン・ルー
マレー・マーダー(記者) – リック・ホームズ
チャルマーズ・ロバーツ(外交特派員主任) – フィリップ・キャズノフ
ジュディス・マーティン(記者・コラムニスト) – ジェシー・ミューラー
エイブ・ローゼンタール(ニューヨーク・タイムズ編集局長) – マイケル・スタールバーグ
アン・マリー・ローゼンタール(エイブ・ローゼンタールの妻) – デボラ・グリーン
ドナルド・E・グラハム(記者。キャサリンの息子) – スターク・サンズ
マイケル(インターン記者) – ウィル・デントン
リズ・ハイルトン(キャサリンの個人秘書) – ジェニファー・ダンダス
ジェームズ・グリーンフィールド(ニューローク・タイムズ編集人) – クリストファー・インヴァー
ニール・シーハン(ニューヨーク・タイムズ記者) – ジャスティン・スウェイン
リチャード・ニクソン(大統領) – カーゾン・ドベル
ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書 スタッフ
脚本 – リズ・ハンナ、ジョシュ・シンガー
製作 – エイミー・パスカル、スティーヴン・スピルバーグ、クリスティ・マコスコ・クリーガー
製作総指揮 – トム・カーノウスキー、ジョシュ・シンガー、アダム・ソムナー、ティム・ホワイト、トレヴァー・ホワイト
撮影監督 – ヤヌス・カミンスキー,ASC
プロダクションデザイナー – リック・カーター
編集 – マイケル・カーン,A.C.E.、サラ・ブロシャー
衣裳デザイン – アン・ロス
音楽 – ジョン・ウィリアムズ
キャスティングディレクター – エレン・ルイス

