ダブル・キッチンの感想
西荻弓絵か、と思いながら見始めるが、第2話全編を占める通夜のウェルメイドな脚本に思わず唸らされる。1993年には、ドラマはまだちゃんとしていたのだ。
29歳の山口智子はやっぱり可愛い。このドラマを経て翌年に「29歳のクリスマス」を主演し、2年後に「ロンバケ」に出て、ブランクに入る。
ダブル・キッチンの見どころ
山口智子と高嶋政伸は、前年の日本テレビ『いとこ同志』でも夫婦役で共演していたが、視聴率が振るわず失敗作とされていたため、本作の企画段階ではプロデューサーの貴島誠一郎が編成から大きな反発を受けたという。しかし「今回は山口智子を前面に押し出す」という条件で説得し、結果として平均視聴率22.3%、最終回30.7%(関東・ビデオリサーチ調べ)を記録する大ヒット作となり、1990年代のTBSドラマを代表する一本となった(ただしソフト化は1993年に全4巻でVHSが発売されたものの長らく再販されず、2007年にDVD-BOXになるまで顧みられなかった)。
1994年にはスペシャル版『ダブル・キッチンお正月スペシャル 花岡家ハワイに行く』が放送され、布施博(『スウィート・ホーム』で山口とダブル主演している)や賀来千香子が特別出演する豪華な内容であった。
本作は、二世帯住宅で暮らす若夫婦と姑の同居生活を描き、日常の些細な衝突が笑いと共感を生む作り。毎回ラストで山口智子が部屋の物に当たり散らす姿と、野際陽子が鼓を打つ姿が交互に映る“お約束の演出”が名場面として人気を博した。この演出手法は同じく貴島プロデュースの『トリプル・キッチン』や『地獄の沙汰もヨメ次第』(江角マキコ主演)にも受け継がれた。
貴島誠一郎は、前年に社会現象を起こした『ずっとあなたが好きだった』を手がけており、野際陽子はそこでも陰険な姑を演じていたが、貴島は野際を再び起用し、今度は明るくちょっとおせっかいな姑役にした。同様に、「冬彦さん」を演じた佐野史郎も、頼りないがお調子者の男性という正反対のキャラクターに挑戦し、前作とのギャップが大きな見どころになっている。
野際陽子は、その後もTBSドラマ『長男の嫁シリーズ』(浅野ゆう子主演)や『理想の結婚』(常盤貴子主演)、『地獄の沙汰もヨメ次第』などで似た立ち位置の姑役を演じ、“姑ドラマ”の定番キャラクター像を確立していく。
ダブル・キッチンのあらすじ
出版社に勤めるキャリアウーマンの都は保険会社に勤務する忍とスキューバダイビングで知り合って結婚。忍の両親、啓三、真知子夫妻、二人の妹、静、るみと二世帯住宅で同居することになった。現代的な嫁と古風な姑はことあるたびに対立し、さらに妹の静の夫で売れないミュージシャンの寺田ユウノスケが加わり、問題はさらに複雑化していくが、都と忍の間に長男が誕生し、都が子育てと仕事の両立をしなければならなくなった頃より、都と真知子が和解していくようになる。
ダブル・キッチンを観るには?
ダブル・キッチンのキャスト
花岡都 – 山口智子
花岡真知子 – 野際陽子
花岡忍 – 高嶋政伸
花岡るみ – 坂井真紀
花岡啓三 – 伊東四朗
寺田家
寺田(花岡)静 – 横山めぐみ
寺田ユウノスケ – 佐野史郎
寺田トシ子 – 原知佐子
その他
松井修一 – ルー大柴
倉本綾子 – 阿知波悟美
小島小夜子 – 細川ふみえ
三枝正樹 – 五十嵐光樹(現:林光樹)
藤原春子 – 岩本多代
谷村八重子 – 赤座美代子
下村カヨ – 野村昭子(ゲスト出演)
小松政夫(ゲスト出演)
深田貴子 – 佐々木すみ江(ゲスト出演)
菅原波子 – 大方斐紗子
園子 – 山本道子
奥村公延(ゲスト出演)
羽場裕一(ゲスト出演)
山田雅人(ゲスト出演)
草村礼子(ゲスト出演)