映画1990年代の映画1998年の映画

トゥルーマン・ショー

4.0
ローラ・リニー(トゥルーマン・ショー) 映画
ローラ・リニー(トゥルーマン・ショー)
トゥルーマン・ショーは、1998年のアメリカ映画。原題は「The Truman Show」。6月1日にロサンゼルスでワールドプレミアを開催し、6月5日に北米で公開された。

トゥルーマン・ショーの感想

初見。ジム・キャリーの演技というより、その内容によって今も有名な映画だが、私の世代(脚本を書いたアンドリュー・ニコルは3歳下で同世代だ)は、60年代からこういうものを見まくり、読みまくってきたわけなので、さほど驚かない。ジムの妻メリルを演じるハンナを演じるローラ・リニー(良き妻を演じながらさりげなくキッチン用品を宣伝)の作り笑顔がたまらない。

問題は、単に世界が書き割りであるというだけでなく(本作は、外側の世界に退場するという楽観的なハッピーエンドで終わる)、自分がショーの主人公として監視されてきたのだという2つの妄想が重なり合っているという点だ。

これとて、例えば「地上のアリを踏みつけている人間をはるか上から踏みつけようとしている巨大な足(創造主の箱庭で生かされているペットとしての人間)」というように、いくらでもある構図なのだが、神と人の視点というか、人格化された超越論的存在という発想は、少し興醒めなものだと思う。

不世出のアイディアマンだったリチャード・マシスンの短編も、鮮烈な出だしに比べると常にオチは弱かった(例外のひとつは「激突!」だが、スティーヴン・スピルバーグは映画で変なオチをつけてしまった)。本作も終わりに近づくにつれ、面白さが失われていく。

トゥルーマン・ショーの見どころ

トゥルーマンは、“安全だが偽りの楽園”に留まり続ける無意識の欲望に縛られている。
「セーヘブン島」は、彼にとって完全に管理された楽園、つまり“母なる子宮”のようなものと捉えることができる。「外海」への恐怖(トラウマとして植え付けられた父の溺死)は、外界=現実=“象徴界”への移行を阻む心理的障壁なのだ。一種の「母胎依存」である。
トゥルーマンの中には、外界=未知=危険への恐怖(シャドウ)があり、それが「海」や「死」のイメージとして投影される。物語後半でトゥルーマンは荒れる海を越えようと決意し、シャドウとの対決を通じて自己を統合しようとする。

最終シーンでは、ついに出口の扉が出現するが、これはラカン的な「象徴界への通路」である。
シーヘブンという想像界(鏡像的に与えられた自我)」から、苦痛や不確実性を含む現実(象徴界)へと歩み出す行為は、「主体の真の誕生」を意味する。
そう考えれば、クリストフ(エド・ハリス)はトゥルーマンの人生全てを監視・操作する全能の父/超自我的存在ということになる。
トゥルーマンが、自分の現実が人工的であることに気づき始める過程は、すべて「超自我の視線からの脱出」と解釈できるのだ。

ではトゥルーマンの人生を見守る何億もの視聴者は何か。
これは無意識的な voyeurism(覗き見欲求)のメタファーと考えられる。映画の観客とは「現実をコントロールしたい無意識の欲望」を投影したものであり、トゥルーマンはその犠牲者なのだ。

本作は、現実という不安定な大海原に向かうために人間が“幻想の楽園=母胎”を捨てる物語である。

トゥルーマン・ショーのあらすじ

『トゥルーマン・ショー』は、ジム・キャリー演じるトゥルーマン・バーバンクが、自身の人生が24時間撮影されるリアリティ番組の主役であることを知る物語。彼は離島シーヘブンで暮らし、水恐怖症のため島を出たことがない。しかし、周囲の異常さに気づき、真実を求めて島からの脱出を試みる。彼の世界は巨大なドーム状のセットで、周囲の人々は俳優。番組プロデューサーは彼を止めようとするが、トゥルーマンはヨットで海へ繰り出し、嵐や障害を乗り越え、ついに世界の端にたどり着き、出口の扉を開ける。この作品は、現実と虚構の境界を問う深いテーマを扱っている。

トゥルーマン・ショーを観るには?

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トゥルーマン・ショーのキャスト

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トゥルーマン・バーバンク – ジム・キャリー
クリストフ – エド・ハリス
メリル・バーバンク / ハンナ・ジル – ローラ・リニー
マーロン / ルイス・コルトラン – ノア・エメリッヒ
ローレン・ガーランド / シルビア – ナターシャ・マケルホーン
アンジェラ・バーバンク – ホランド・テイラー
カーク・バーバンク – ブライアン・ディレイト
過去のトゥルーマン – ブレア・スレイター
ローレンス – ピーター・クラウス
ヴィヴィアン – ハイジ・シャンツ
ロン – ロン・テイラー
ドン – ドン・テイラー
ディレクター – ポール・ジアマッティ
ディレクター – アダム・トメイ
マイク・マイケルソン – ハリー・シェアラー
クロエ – ウナ・デーモン
ネットワーク・エグゼクティヴ – フィリップ・ベイカー・ホール
ネットワーク・エグゼクティヴ – ジョン・プレシェット
キーボード・アーティスト – フィリップ・グラス
バーのウェイトレス – オーラン・ジョーンズ
日本人視聴者 – ユウジ・オクモト

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トゥルーマン・ショーのスタッフ

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監督 – ピーター・ウィアー
脚本 – アンドリュー・ニコル
製作 – スコット・ルーディンアンドリュー・ニコルエドワード・S・フェルドマンアダム・シュローダー
製作総指揮 – 製作総指揮
音楽 – ブルクハルト・ダルウィッツ、フィリップ・グラス
撮影 – ピーター・ビジウ
編集 – ウィリアム・M・アンダーソン、リー・スミス
製作会社 – スコット・ルーディン・プロダクションズ
公開 – アメリカ 1998年6月5日 日本 1998年11月14日
上映時間 – 103分
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