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神の手

2.0
吉岡里帆(神の手) ドラマ
吉岡里帆(神の手)
神の手は、2023年5月15日に、テレビ東京の「月曜プレミア8」で放送。主演は吉岡里帆。

神の手の感想

な、なんて退屈なんだ…

文学賞を獲った大御所作家の小説に盗作の噂があり、ジャーナリストの吉岡里帆が3年前の幼児誘拐を追っているという2本のプロットが、最後に繋がるのだが、どうでも良すぎてスイッチを切ってしまった。謎がどんどん解けていくのに、見ている側のモヤモヤはさっぱり解消されないのだった。むしろ誰が誰を殺したかなんてどうでもいい。どうしたらこんなにつまらない展開になるのか。

コンビニに煙草を買いに行き、帰ってから思い直して最後まで見てみて、これは脚本ではなく原作のせいかもしれないと、まず考えた。

二つのプロットを繋ぐのは、入山法子演じる謎の小説家である。入山は職業作家でもないのに1000枚を超える大作を出版社に持ち込み、自室にはおそらくそれ以上(100作はありそうだ)の草稿を山積みにしているという、むしろ小説の中にしかいそうにない人物で、当然、文学賞受賞作を書いたのも入山なのだが、その内容は静岡の心療内科医(大谷亮平)との恋を綴ったものだった。大御所作家に仲立ちしたのは文芸出版社のベテラン編集者(安田顕)である。

さらに入山は幼児誘拐の小説を書き、もしくは犯行に及んだ後でそれを小説に書く。安田顕だけがそれを知っており、安田は入山を崖から突き落として殺してしまう。

中盤、吉岡里穂をライバル視する女ライターが入山のふりをして現れて殺されたりと意味なく絡んでくるのだが、原作では大谷亮平と安田顕が延々と対決し、中盤でようやく幼児誘拐を追う吉岡里穂が出てくるらしい(これは吉岡演じる木部美智子のシリーズ第1作なのだ)。たしかにその構成なら、わかる。

つまり吉岡里穂をヒロインに据えたために構成がガタガタになり空中分解したということか。問題はプロット上は別に破綻していないということだ。「誰も読まない小説を書き続ける女」という小説的な存在を誰も正しくイメージできないままにドラマを作ってしまったにすぎない。

神の手の見どころ

重厚な原作、演者のポテンシャル、多層的プロットといった可能性があったにも関わらず、それぞれが噛み合わずに中途半端に散ってしまったドラマと言えよう。
問題は、①動機の不明瞭さ(主要人物の心理が描き切れず、行動の根拠が弱い)、②プロット過剰(二重の事件がぶつかり合い、全体として焦点が定まらず、没入を阻害)、③演出/編集の粗さ(脚本と映像表現が噛み合っておらず、特に終盤が唐突)といったところか。
「文芸ミステリー」「知的ホラー」として尖るはずの作品が、記憶に残りにくい“よくある2時間ドラマ”の域を出なかった。

  1. 二重プロットの混乱と没入感の欠如
    謎解きが進行しても視聴者にとってのカタルシスが薄い。複数の事件(盗作と誘拐)が同時進行する構造は、かえって焦点をぼかし、作品全体を「中途半端」に感じさせるものである。
  2. キャラクターの心理描写の浅さ
    物語の核心を担う三村の来生恭子への思いが不明瞭で、共感できない。動機の不在はプロットの説得力を削ぎ、人物描写にも影響している。
  3. 演出と編集の不整合
    謎解きの部分はバタバタと早足で詰め込まざるを得ない感じ。吉岡里帆のやや不自然な聡明な役柄についても「狂言回し」に見えるという厳しい見方があり、脚本というより演出のバランス調整に課題があった。
  4. 原作改変による不調和
    「人気サスペンス小説のドラマ化ということで多少は期待しましたが、…粗製乱造された2時間ドラマと大差なくて残念」など、原作ファンからは「原作改悪」の声も散見される。原作ファンの期待感を裏切り、その魅力をドラマで再現できていない。
  5. “文学的ホラー”の行き過ぎと中途半端さ
    本作は、文芸性とホラー性の融合と受け取られたが、実際はホラーの不気味さなどはなく、文学的なドラマ性にも深みが足りなかった。「漂流するような展開」「理屈っぽく読む気が失せる序盤」など、原作の“読みにくさ”がむしろドラマにも逆輸入されてしまっているのではないか。

神の手のあらすじ

とある文学賞の受賞作に盗作疑惑がかけられる。ジャーナリストの美智子は編集者から、その件についての取材の依頼を受けるが断る。しかし、この盗作疑惑がやがて、思いもよらぬ事態へと発展する。

神の手を観るには?

神の手のキャスト

主要人物
木部美智子(フリージャーナリスト) – 吉岡里帆
三村幸(「新文芸」編集長) – 安田顕
周辺人物
広瀬達也(心療内科医) – 大谷亮平
来生恭子(失踪中の作家の卵) – 入山法子
中川春樹(「週刊フロンティア」編集部員) – 橋本良亮(A.B.C-Z)
高岡真紀(フリーライター) – 市川由衣
本郷素子(大御所作家) – 山本未來
真鍋竹次郎(編集長) – 尾美としのり
青島真由美(来生恭子の妹) – 佐藤めぐみ
赤沢健治(刑事) – 森岡豊
水田勇樹(刑事) – 平田雄也
佐山友理奈(広瀬の元婚約者) – 寒川綾奈
友理奈の娘 – 沢田優乃
今村幸恵(誘拐事件の目撃者) – 桜一花
大家 – 三田村賢二
駿河正徳病院職員 – 土井悠
野原悠太(行方不明者) – 田中寛人
悠太の母 – 小早川真由
タクシー運転手 – 大久保運
美智子と高岡真紀の上司 – 島崎義久
静岡県警刑事 – 目黒亮平
帝京出版重役 – 加藤満

神の手のスタッフ

原作 – 望月諒子「神の手」(集英社文庫)
脚本 – 山本むつみ
演出 – 塚本連平
音楽 – 青木沙也果
選曲 – 石井和之
技斗 – 二家本辰巳
チーフプロデューサー – 中川順平(テレビ東京)
プロデューサー – 木下真梨子(テレビ東京)、志村彰(The icon)、高橋香奈実(The icon)、稲田秀樹(テレビ東京)
制作著作 – テレビ東京、BSテレ東、The icon
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