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哀しき獣

タク・ソンウン(哀しき獣) 映画
タク・ウンソン(哀しき獣)
哀しき獣は、2010年公開の韓国のサスペンス映画。原題は「황해」(黄海)、公開時間は140分。『チェイサー』のナ・ホンジンが脚本と監督を務めた。
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三つ巴の血みどろバトル(哀しき獣の感想)

チェイサー」が良かったので、ナ・ホンジンを続けて観る気になった。

「チェイサー」でデリヘルオーナーの主役だったキム・ユンソクが闇ブローカーの帝王、サイコパスのハ・ジョンウが、田中邦衛のような髪型をした主人公というふうに立場を逆にしており、あと主要人物しては、バス会社社長(韓国のバス会社が大抵ダークなのはなぜだろう)がいるのだが、文字通り三つ巴となるこの3人が不死身級にタフで、中盤からはド派手というか、血みどろの展開になる。

映画全体は「タクシー運転手」「殺人者」「朝鮮族」「黄海」という起承転結に章が分かれており、それぞれに丁寧なクライマックスが設けられている。

ハ・ジョンウは延辺の廃墟のようなアパートに住むしがないタクシー運転手で、妻が韓国に出稼ぎに行った旅費の借金に苦しんでいる。延辺朝鮮族自治州というのはロシア国境近くの中国で、私は不勉強で知らなかったが、朝鮮半島から満州国に殺到した人々ということらしい。中国人からも韓国人からも「朝鮮族」と差別されるアンタッチャブルな層だ。映画にはハが黄海を密入国するルートとして蔚山の打ち捨てられた民宿、雑然としたソウルの異郷・加里峯洞などを描写し、中盤では人気のない釜山の貨物港なども舞台になるのだが、いずこもザラザラ殺伐としたところばかりである。

ハはキム・ユンソクから、ソウルの韓国人の殺人を依頼され、ついでに妻探しも行うことにする、というところから話は始まり、この依頼殺人の実行までの丁寧な描写が緊張感を存分に高めたところで、映画は一挙に底が抜けたような壮絶なアクションに崩壊していく。このカタルシスはすごかった。

ハの妻(タク・ソウウン)を含めて何人かの女優が登場するのだが、同じようなコリアンビューティなので、観る者は混乱する。誰が誰をハメたのか、女優を見分けられないと正解に辿り着けないので、とめどないアクションシーンに溺れる格好になってしまう。タク・ソンウンが、とどめのようにエンドクレジットの合間に登場するのは残酷で、脚本の容赦なさを表していた。

哀しき獣 見どころ

韓国と中国の国境地帯を舞台に、借金返済のために殺人を請け負った男が、思わぬ陰謀に巻き込まれていく姿を描いた映画。社会的背景を織り交ぜた骨太なストーリー、迫力あるアクションシーンが見どころ。韓国ノワールやクライム・サスペンス好きにおすすめ。

  • 見どころとトリビア1. リアルなバイオレンス描写
    斧や包丁などの近接武器を用いた戦闘が多く描かれ、暴力シーンは計146回に及ぶ。牛骨を使った戦闘シーンは強烈。
  • 見どころとトリビア2. 朝鮮族の描写と社会的背景
    主人公グナムは中国籍の朝鮮族で、韓国と中国の狭間で生きる姿を通して、朝鮮族が直面する差別や貧困などの社会問題がわかる。
  • 見どころとトリビア3. ナ・ホンジン監督の演出
    前作『チェイサー』に続き、緊張感あふれるストーリーテリングとリアリズムに富んだ演出。逃亡劇のスリルと人間ドラマが巧みに融合している。
  • 見どころとトリビア4. **ハリウッドでのリメイク計画
    ストーリーと演出が評価され、ハリウッドでのリメイクが計画された。20世紀フォックス制作で脚本家との交渉が進められたという。

哀しき獣 あらすじ

中国に暮らす韓国系中国人のタクシー運転手グナム。苦しい生活を送る彼には、韓国に出稼ぎに行った妻と、最愛の娘がいた。そんな娘も母親に預けて仕事に励む日々を送る中、彼は妻を韓国に送り出すときに作った借金に加えて賭け麻雀でも大負けしてしまい、窮地に陥る。そんな時、裏社会の顔役ミョンがグナムにある取引を持ちかける。それは、韓国で1人の男を殺害してくれば、借金を棒引きにしてやるというものだった。

哀しき獣を観るには?

哀しき獣のキャスト

キム・グナム – ハ・ジョンウ
ミョン・ジョンハク – キム・ユンソク
キム・テウォン – チョ・ソンハ
キム・スンヒョン – クァク・ドウォン
チェ・ソンナム – イ・チョルミン
グナムの母 – ソン・ビョンスク

哀しき獣のスタッフ

監督 – ナ・ホンジン
脚本 – ナ・ホンジン
製作 – ハン・スング
製作総指揮 – ピュン・ジョンウンユ・ジョフン
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