これは経費で落ちません!の感想
多部未華子は相変わらずキメ台詞とキメポーズがある役がどハマりなのだが、いつまでもそれでいいのか…
原作ラインナップを見ると、真汐ちゃんは、ちょうど「架空OL日記」の困ったサエちゃんに当たる役と想像されるのだが、伊藤沙莉が演ると、佐藤玲とは違う「獣になれない私たち」の夢子になってしまう。
最後まで面白く観て、やはり多部未華子はいつまでも制服役でヒットしてもらいたいという結論。
伊藤沙莉の鉄板な感じもいいが、ベッキーはこんな好感度の低い役で良いのか。
これは経費で落ちません!の見どころ
ここでは、多部未華子が本作をはじめとして「有能な女性」役を演じ続ける理由について考えてみたい。
多部は「頭脳明晰」「仕事ができる」女性を演じる一方で、冷徹・完璧すぎない。
本作での森若さんは、経理としては極めて有能だが、プライベートでは恋愛に奥手であり、決断に迷ったり心が揺らいだりもしている。多部の演技はその“人間らしい欠け”を自然に見せ、観客に共感を生む。
多部の演技は、表情の変化が極めて繊細であり、大げさに怒らず、大声で笑わない。小さな眉の動き、視線の揺れ、呼吸のテンポで感情を表現している。「感情をコントロールできる有能さ」と同時に、「本音を隠しきれない弱さ」を同居させているのである。
昭和~平成初期の女性像は、仕事一筋の“バリキャリ”(冷酷・孤高)か守られる“お嬢様ヒロイン”という極端の中にあったが、令和のドラマが求めるのは「能力もあるが、弱さや悩みも持つリアルな女性」である。多部未華子はこの像にぴったり合致する。
職場で頼れる存在、でも完璧主義ではなく、仲間や恋愛に悩む。自立していながらも、時に誰かに頼る柔らかさをもつ。
さらに、いわゆる「派手な美人」ではなく親しみと品を併せ持っている。
有能な職場の先輩としても、恋愛ドラマのヒロインとしてもどちらにも無理なく馴染むのである。
『デカワンコ』や『これは経費で落ちません!』以降、多部は「職場ドラマで有能女性を演じる」代表的存在となったが、感情過多にならず、ユーモアや皮肉も自然にこなし、女性視聴者からも「こうなりたい」と思わせる存在として、演出家から見て非常に貴重である。
多部が演じた「有能女性」三選
作品名 | キャラクター | 有能さの種類 | 欠けている部分 | スタイル |
---|---|---|---|---|
デカワンコ (2011) | 花森一子(通称ワンコ) | 嗅覚の天才、新人刑事 | 捜査手法・社会常識 | コメディ・ポップ |
これは経費で落ちません! (2019) | 森若沙名子 | 経理能力、倫理観、分析力 | 恋愛・感情表現の不器用さ | ヒューマンドラマ |
私の家政夫ナギサさん (2020) | 相原メイ | 仕事力・管理能力・決断力 | 家事スキル・生活力 | ロマンティックコメディ |
デカワンコ – 天然×有能の破壊力
有能さ:犬並みの嗅覚で事件の真相を暴く。捜査能力は抜群。
欠けている部分:社会常識や刑事としての経験値。奇抜なファッションで周囲と浮く。
多部の演技メソッド:表情豊かで子犬のような愛嬌。視線の動きや身振りで“天然さ”と“天才性”を同時に表現。
これは経費で落ちません! – クール×誠実な現代女性
有能さ:経理部のエースとして、社内の不正や問題を冷静に解決。
欠けている部分:恋愛への奥手さ、時折見える頑なさ。
多部の演技メソッド:感情を抑えた話し方、視線のコントロール。小さな表情の揺れ(口元のわずかな笑みや目線の外し)で内面を表現。
私の家政夫ナギサさん – 仕事人間×成長するヒロイン
有能さ:MRとして抜群の営業成績、チームマネジメントも得意。
欠けている部分:家事能力ゼロ、プライベートの無頓着さ。
多部の演技メソッド:キビキビした動きと早口で「仕事モード」を演出。ナギサさん(大森南朋)との掛け合いでは徐々に肩の力が抜けていく様子を繊細に描く。
多部未華子が“共感されるヒロイン”になる演技メソッド
- 引き算の演技
過剰な感情表現は控えめ。大声で泣かず、激しく笑わず、視線や呼吸で心情を見せる。これが「有能さ=冷静」「人間味=抑えた揺らぎ」として成立。 - 身体の“緩急”で人間味を出す
仕事シーンでは背筋が伸び、歩く速度も速い。プライベートシーンでは肩が落ち、動きがゆったり。緊張と弛緩のコントラストが視聴者に「この人も頑張ってるんだな」と思わせる。 - 目の演技が感情の全て
視線の移動で心理を伝えるのが極めて巧み。 “一瞬の視線の外し” で気まずさ、戸惑いを表現し、“目を合わせる時間の長さ”で覚悟や好意を表現。森若沙名子や相原メイの「一瞬ためらって目を伏せる」芝居は、多部未華子特有。 - 台詞のテンポとトーンの調整
職場ではやや低めで落ち着いた声、ハキハキしたテンポ。プライベートでは声が高く柔らかく、ゆったりとした言葉運び。
これは経費で落ちません! あらすじ
森若沙名子は中堅石鹸会社「天天コーポレーション」の経理部員。経理部は新発田部長、ベテラン田倉、森若、異動してきた佐々木の4人。森若は「イーブン」を好み、「ウサギを追うな」を座右の銘とするマイペースな20代後半。部長の信任が厚く、仕事をきっちりこなすが、プライベートでは会社の人間と深く関わらない主義。同期の鏡美月以外とは食事にも行かない。
天天コーポレーションには、犬猿の仲の営業部長と経理部長、広告塔の広報部員、特殊枠の秘書、反目する女子社員、問題を起こす契約社員、正論を唱える中途入社社員など、様々な社員がいる。経理部員は領収書に隠された問題を解決する役割を担う。そんな中、年下の営業部員・山田太陽が森若にアプローチし、森若はペースを乱されながらも食事を承諾するが……
これは経費で落ちません!を観るには
これは経費で落ちません!のキャスト
経理部
森若沙名子 – 多部未華子
佐々木真夕 – 伊藤沙莉
田倉勇太郎 – 平山浩行
新発田英輝 – 吹越満
麻吹美華 – 江口のりこ
営業部
山田太陽 – 重岡大毅(ジャニーズWEST)
山崎柊一 – 桐山漣
中島希梨香 – 松井愛莉
吉村晃広 – 角田晃広
鎌本義和 – 髙橋洋
澤井博之 – 林田直樹
奥田雅人 – 濱嵜凌
溝口彩香 – 乙倉遥
高岡奈央子 – 渥美友里恵
下村純子 – 大川原咲
森本拓馬 – 蒼井遼
営業部広報課
皆瀬織子 – 片瀬那奈
室田千晶 – 真魚
野瀬泰 – 阿部翔平
総務部
新島宗一郎 – モロ師岡
横山窓花 – 伊藤麻実子
石川有希 – 秋里由佳
吉田緑 – 井上あすか
上野圭子 – 西山なずな
後藤道行 – 中松俊哉
谷川翔太 – 稲葉年哉
その他部署
鏡美月(研究開発室) – 韓英恵
有本マリナ(総務部秘書課) – ベッキー
円城格馬(専務取締役) – 橋本淳
これは経費で落ちません!のスタッフ
脚本 – 渡辺千穂、藤平久子、蛭田直美
音楽 – 安田寿之
主題歌 – 阿部真央「どうしますか、あなたなら」
制作統括 – 管原浩(NHK)、坂下哲也(AX-ON)
プロデューサー – 難波利昭、戸谷志帆梨、岡宅真由美
演出 – 中島悟、松永洋一、本田繁勝
制作・著作 – NHK、AX-ON
これは経費で落ちません!の原作
#1 たこやき代は経費で落ちますか? 営業部のエース・山田太陽が持ってきた、2枚の領収書。私的に利用した疑惑が上がり、真相を探ろうとする森若さんだが…? #2 160円と、公開土下座。 物販の金額に、プラス160円の誤差が発覚。試用期間中の受付・大谷咲に話を聞くと、何か隠しているようで…。 #3 入浴剤も人生も想定外! 内覧会で使用する入浴剤が、すり替わっていた! それを積み込んだのは、太陽の先輩・鎌本義和。太陽の大ピンチに、森若さんは!?