内海の輪の感想
斎藤耕一監督の映画(71年)と十朱幸代版のドラマ(2001年)があるが、今回見たのは82年のドラマ版。主役は滝田栄だが、二番目にクレジットされているのは、なぜか宇津宮雅代ではなく、原作に出てこない岡まゆみである。
兄の浮気を咎めるために愛人宅に乗り込んだ帰り、やけになった宇都宮は義弟の滝田を籠絡する(このくだりは漱石の「行人」のようだ)。それが過ちの始まりで、3年が経って銀座のデパートでばったりと会った二人は関係を再燃させる。宇都宮は結婚して松山で暮らしていたが商売のために定期的に上京するというので、考古学の助教授である滝田は、後腐れのない相手として定期的に情事を重ねることに。
瀬戸内海の発掘調査にかこつけて尾道に出張した滝田は宇都宮と旅館で待ち合わせて不倫旅行を楽しむのだが、別れがたい宇都宮は、最後の日になって妊娠したと言い出し、夫と離婚して東京で暮らす決意を漏らす。みうらじゅんのいわゆる「清張スイッチ」が入る瞬間であり、滝田は宇津宮を宥めつつ神戸まで戻り、蓬莱峡に誘って断崖から宇都宮を突き落とすのである。
事件が発覚しないまま1年が経ち、弥生中期の高地性集落が専門の滝田は、蓬莱峡での発掘調査にいやいや参加することに。現地に着くと、案の定、前日に宇都宮の遺骨が発見されていた。気になるのは当日女に渡したライターだ。それが入ったハンドバッグを探すうち、滝田は画期的な遺物であるガラス釧(上代の腕輪で、原作はその発見を予言したと言われている)を見つけてしまう。発表すれば間違いなく教授になれるのだが、大々的な発掘が始まりライターも見つけられてしまうだろう。滝田は懊悩する。
映画版の岩下志麻
内海の輪あらすじ
新進考古学者の江村宗三は、かつての兄嫁・西田美奈子と再会し、密会を重ねる。モーテルで強盗殺人事件に遭遇し、宗三は逃げる。宗三は美奈子と旅に出て、別れ話を切り出すが、美奈子は妊娠を告げ、脅す。宗三は美奈子を断崖から突き落とすが、美奈子は宗三のライター入りのバッグを持ったまま転落。1年後、強盗事件犯人が逮捕され、目撃者の存在が浮上。蓬莱峡で遺跡が発見され、宗三と佐世子は発掘作業に参加する。
内海の輪を観るには?
内海の輪 キャスト
西田美奈子(宗三の元兄嫁、松山の洋品店主の妻) – 宇津宮雅代
中根佐世子(宗三の教え子) – 岡まゆみ
串田刑事 – 井川比佐志
塚田(宗三の助手) – 三ツ木清隆
江村照代(宗三の妻) – 松本留美
江村寿夫(宗三の兄、美奈子の元夫) – 小坂一也
主任教授(宗三の師) – 高橋昌也
遺跡発掘隊の助手 – 長塚京三
寿夫の愛人 – ひし美ゆり子
橘助教授(宗三のライバル) – 小沢象
田上シンスケ(殺人犯) – 粟津號
警備員(佐世子の父の同僚) – 小林まさひろ
秋間登
松浪志保
村上幹夫
ナレーター – 寺田農
内海の輪 スタッフ
脚本 – 中島丈博
監督 – 井上昭
音楽 – 田辺信一
撮影 – 小林節雄
美術 – 川崎軍二
助監督 – 息邦夫
ロケ協力 – 岡山市、鞆シーサイドホテル、水上藤屋ホテル
プロデューサー – 小林重隆(大映テレビ)
企画 – 春日千春(大映テレビ)、樋口祐三(TBS)
制作 – 大映テレビ、TBS
内海の輪の原作(松本清張)
男女の愛憎真理を鋭くえぐる、ミステリの巨匠・松本清張の傑作推理長編!
考古学会の新進として注目されていたZ大助教授・江村宗三は、松山の老舗商店に嫁いだ元兄嫁の美奈子と度々逢瀬を重ねていた。しかし、2 人で計画した瀬戸内海旅行の中で、美奈子は宗三に妊娠を告げる。「もう松山には戻れないわ。あなたなしには生きてゆかれなくなったわ」……子を産む決意だというが、それは宗三の学界からの追放を意味した。宗三は美奈子の殺害を計画するが――。男女の愛憎心理を鋭くえぐる松本清張の傑作長編推理。ほか一遍収録。