『あ、春』ってどんな映画?
東京のサラリーマン家庭に死んだはずの「ろくでなしの父親」が突然フラリと戻ってきたことから始まる、可笑しくも切ないホームドラマ。1999年(第73回)キネマ旬報ベスト・テンの日本映画部門第1位。
真面目に生きてきた一流企業のサラリーマン・紘(佐藤浩市)の前に現れた、破天荒で自由奔放な父・笹一(山﨑努)。この二人のやり取りがとにかく最高。父親への嫌悪と、それでも抗えない血の繋がりを、昭和・平成を代表する二大名優が絶妙な間合いとユーモアで見せる。母親役の藤村志保、トラック運転手役の寺田農など今は亡き名優の素晴らしい仕事が刻まれているほか、若き日の斉藤由貴の瑞々しさ、医師役の塚本晋也、住職役の笑福亭鶴瓶といった顔ぶれも見もの。
『ションベンライダー』や『台風クラブ』など少年少女の躍動を描いてた作品で定評のある相米監督が、本作では一転して大人の「死と再生」という重いテーマを、しかし軽やかに、温かく描いている。おなじみの長回しも、登場人物たちの日常を切り取るために使われている。
映画・演劇界の伝説的スタイリストである北村道子が手がけた衣装(特に山﨑努の絶妙な浮浪者風ファッション!)と、大友良英の劇伴が、この一風変わった家族の物語に映画的な魔法をかけている。
「お父さんだよ」の一言から始まる、可笑しくて、やがてじんわりと涙が溢れる春の嵐のような物語。山﨑努の圧倒的な「生」のエネルギーを味わってほしい傑作。
あらすじ
一流大学を出て証券会社に入社、良家の娘と逆玉結婚して可愛いひとり息子にも恵まれた韮崎は、ずっと自分は幼い時に父親と死に別れたという母親の言葉を信じて生きてきた。ところがある日、彼の前に父親だと名乗る男が現れた……
キャスト
韮崎瑞穂 – 斉藤由貴
浜口笹一 – 山﨑努
水原郁子 – 藤村志保
韮崎公代 – 富司純子
韮崎義明 – 三浦友和 (友情出演)
韮崎千鶴子 – 余貴美子
富樫八重子 – 三林京子
韮崎充 – 岡田慶太
沢近 – 村田雄浩
菊池雛子 – 原知佐子
住職 – 笑福亭鶴瓶 (友情出演)
医師 – 塚本晋也
看護婦 – 河合美智子
トラックの運転手 – 寺田農
サラリーマン – 木下ほうか
サラリーマン – 掛田誠
感想
相米慎二らしい、見返したくなる名場面は、雨を避けながら富司純子と店の前の駐車場で話し合う夜の場面ということになると思う。しかし、ここはやはり斉藤由貴の可愛すぎる主婦が心に残る。線の細い斉藤の不安定ぶりは、まこと年季の入ったものだということがわかる。
寺田農と「ラルジャン」を見に行った相米慎二が「映画は絵よりも音だ」と語ったという話は興味深い。
大友良英も相米は異様に耳が良かったと書いているが、この映画でも何度か謎のノイズが挿入されており、また、クライマックスの病院シーンでも、佐藤浩市がヒヨコが殻を破る小さな音がモチーフになっているからだ。
あ、春を観るには?
あ、春のスタッフ
製作 – 中川滋弘
プロデューサー – 榎望、矢島孝
原作 – 村上政彦 「ナイスボール」
脚色 – 中島丈博
撮影 – 長沼六男
美術 – 小川富美男
編集 – 奥原好幸
衣装(デザイン) – 北村道子
音楽 – 大友良英
音楽プロデューサー – 佐々木次彦
照明 – 熊谷秀夫
録音 – 野中英敏
スクリプター – 今村治子
スチール – 中原一彦
助監督 – 宮城仙雅
あ、春の原作
23回忌の法要を済ませたばかりなのに!死んだ筈の父が突然、現れた。そのまま息子夫婦の家に居着き、彼らの生活を乱し始める…。家族の本質を捉え直す問題作。映画「あ、春」の原作。





