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元彼の遺言状の感想
どういうわけか、遺産相続物が苦手な私。
そりゃあ、「女系家族」「遺産争族」といった例外はあるのだが、そういう理由で「危険なビーナス」も1話しか見なかったのだ(本作はこの吉高由里子のドラマに雰囲気が似ている)。
しかし世の中には、遺産相続物を好んで見る人も多いのだろう。本作中に出てくるクリスティの「ねじれた家」も然りである。
遺産相続物といえば、まず、欲と感情のドロドロ描写がつきものだ。
多かれ少なかれ金銭が絡むため、金銭欲が剥き出しになり、家族という関係性の中で愛情、憎悪、嫉妬、裏切りが入り乱れる面白さがある。それまで隠されてきた性格や関係性が、遺産という大きな利益を前にして露呈していく過程の面白さと言える。
次にミステリー・サスペンス要素である。
遺言書の隠蔽、不正な財産分与、隠し子や秘密の存在など、遺産相続には様々な謎や秘密が絡む。誰が何を企んでいるのか、真相は何かということを追う楽しみがある。登場人物の思惑が交錯し、物語が予測不能な方向に進んでいくこともある。
高齢化社会であるから、意外と身近な題材ということもある。
さらに核家族化、再婚、婚外子など、多様な家族形態が重ね合わされることにより、ドラマで描かれる相続トラブルや法的な問題の発生と解決は啓蒙的な意味をもつ。
作り手としては、複雑な人間ドラマを描くため、実力派の俳優を多数起用しやすい。演技合戦が視聴者を引きつけ、作品の質を高めることに直結するのだ。登場人物の立場や感情を丁寧に描くことで、視聴者は特定のキャラクターに感情移入しやすくなり、その行く末に注目する。
その結果、カタルシスが得やすく、教訓にたどり着きやすくなる。
遺産を巡る争いの中で、感情移入するキャラクターが苦境に立たされたり、悪巧みをする人物が登場した結果、最終的に悪役が制裁を受け、正義が報われる展開になれば、カタルシスになり、争いを経て家族の絆が再構築されたり、人生における本当に大切なものに気づかされたりすれば、それは感動と教訓を与えることになるのだ。
遺産相続物を仕切ったり、最後に生き残るのはたいてい女優で、綾瀬はるかはこういう全能感のある役が似合う。竹内結子なき今、ということか。
元彼の遺言状の見どころ
原作では、亡くなった元彼の残した「僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る」という奇妙な遺言を受けた敏腕女性弁護士が依頼人と共謀して巨額の遺産を手にしようとする様が描かれているが、ドラマではオリジナルのエピソードを交え、原作とは異なるエンディング。第3話からは『元彼の遺言状』シリーズ第3弾『剣持麗子のワンナイト推理』収録の事件やオリジナル事件を1話完結で描いた。
- 奇妙な「遺言状」と予測不能な展開
最大の魅力は、奇妙な内容の遺言状から始まる予測不能なストーリー展開。「全財産を僕を殺した犯人に譲る」という前代未聞の遺言状を巡り、弁護士の剣持麗子が奮闘。次々と現れる容疑者たち、状況は二転三転する。 - 個性豊かなキャラクターたち
主人公は、大手法律事務所をクビになったのに、お金への執着から奇妙な遺言状の謎に挑む剣持麗子。型破りな行動と、時折見せる人間らしい一面が魅力。麗子の元彼で、今回の遺言状の主となるのが森川栄治。生前の彼のキャラクターも物語の重要な要素となる。その他、遺言状に関わる様々な人物たちはそれぞれ個性が強く、物語を面白くする。彼らが織りなす人間模様も見どころ。 - コメディとシリアスの絶妙なバランス
ミステリーでありながら随所にコメディ要素が散りばめられている。麗子の突飛な行動、登場人物のユーモラスなやり取りが軽快なリズムとなっている。しかし遺言状の真相に迫るにつれてシリアスになり、その緩急のバランスが秀逸。 - 法律の知識を面白く学べる
啓蒙的なリーガルドラマでもあり、法律の専門用語や判例などが頻出。ただし難解になりすぎず自然に説明され、楽しみながら法律の知識に触れられる。 - 勧善懲悪ではない結末
結末は一般的なミステリーのような単純な勧善懲悪にはならない。真相が明らかになった後、登場人物たちがどのような選択をし、どのような道を進むのか、その人間ドラマにも注目。
元彼の遺言状 あらすじ
大手法律事務所に勤務する弁護士の剣持麗子は、大学時代に3ヶ月だけ付き合っていた元彼、森川栄治の訃報を受け取った。栄治が遺した遺言状には「僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る」という奇妙な一文が。麗子は栄治の友人で遺言執行人である篠田から遺言状の執行を依頼される。
遺産を巡る争いを避けるため、麗子は栄治を殺害した犯人を「選考」し、遺産を相続させようと計画。しかしその過程で栄治の顧問弁護士が殺害されたり、遺言状が保管されていた金庫が盗まれたり、事件は複雑化。麗子は依頼人である篠田を犯人に仕立て上げようと奔走する中で、栄治の過去や、彼を取り巻く人々との関係、そして隠された真実に迫っていく。
元彼の遺言状を観るには?
元彼の遺言状 キャスト
剣持麗子 – 綾瀬はるか
篠田敬太郎 – 大泉洋
森川栄治 – 生田斗真
森川紗英 – 関水渚
津々井君彦 – 浅野和之
栄治の関係者
森川富治 – 生田斗真
原口朝陽 – 森カンナ
森川雪乃 – 笛木優子
森川拓未 – 要潤
堂上圭 – 野間口徹
堂上亮 – 白髭善
森川金治 – 佐戸井けん太
村山権太 – 笹野高史
森川真梨子 – 萬田久子
その他
神田フミオ – ト字たかお
橘五郎 – 勝村政信
松田大樹 – 古屋呂敏
黒丑益也 – 望月歩
元彼の遺言状 スタッフ
脚本 – 杉原憲明、小谷暢亮、中園勇也
演出 – 鈴木雅之、澤田鎌作、西岡和宏
音楽 – 川井憲次
法律監修 – 山崎健介(ノーサイド法律事務所)、阪口采香(イージス総合法律事務所)
警察監修 – 大澤良州(オフィス・ゴッホン)
プロデューサー – 金城綾香、宮﨑暖
『元彼の遺言状』は、ミステリーとコメディ、そしてリーガルドラマの要素が絶妙に融合した作品です。この記事で少しでも興味を持たれた方は、ぜひ本編をチェックしてみてください。