汚れた舌の感想
BSで再放送していて、内館牧子の「ドロドロ4部作」なるものの一つらしいのだが、それより、子供が泣きそうなオープニングとテンションの高い演出に驚く。
ヒロイン飯島直子にひと目惚れする若社長・加藤浩次には牧瀬里穂という妻がいるのだが、同い年の義母森口瑤子は牧瀬に激しいコンプレックスを抱いていて、聞こえよがしに唇を歪めて罵る日々。
一方、飯島の母親松原智恵子は夫を自殺に追い込んだ藤竜也を呪って、「あいつを見つけたら殺せ!」と娘(飯島)に命じるのだが、じつは飯島は松原に隠れて藤の住む金沢に隔週で通う愛人で…というのが初回で紹介される人間関係。最後までこの配置は変わらず、ひたすらもつれて進むらしい。
松原智恵子は映画が娯楽の王様だった時代にデビューし、10年で100本以上の映画に出たのだったが、後年のおっとりした役とはかけ離れたエキセントリックな女優だったことを思い起こさせる。
加藤浩次(まだ贅肉が少ない)が唯一の準主役を演じるドラマで、飯島直子と牧瀬里穂はあまりドラマに出ることもなくなり、今でもよく見るのは森口瑤子ぐらいである。出世頭は森口の息子役の田中圭だろう(当時からファンがついていた)。
森口瑤子(汚れた舌)
汚れた舌 見どころ
欲望・復讐・愛憎が複雑に絡み合う濃厚なドロドロ愛憎劇で、平成以降のゴールデンタイム民放ドラマでは異例の「昼ドラ級の背徳感」を夜に持ち込んだ挑戦的作品。
- 愛と性と権力が絡む“背徳のメロドラマ”
物語の中心にいるのは、佐藤浩市演じる広告会社の鬼才プロデューサー・三条完治。その周囲に、彼を愛する女たち、騙す男たち、嫉妬に狂う者たちが渦巻く。“師”として慕っていた男に裏切られた女、“愛人”の立場を利用する女、“男の妻”を奪おうとする女、“プライド”と“愛欲”の間で揺れる女……一人の男を中心に、5人の女たちの感情と肉体がもつれ合う構図が、昭和の香りを漂わせる。 - 飯島直子 VS ともさかりえの“女の火花”
飯島直子(ヒロイン・遠野奈々)と、ともさかりえ(完治の秘書・香織)の対立構造が、この作品のハイライト。表面上は抑制されていながら、視線と沈黙に込められた“静かな戦争”が背筋がぞくっとするような緊張感を生み出す。
ともさかりえはこの作品で、昼ドラ系悪女の新境地を開いたとも言われ、「口数の少ない怖さ」「いつ爆発するかわからない情念」を体現して話題になった。 - タイトルの“汚れた舌”に込められた意味
タイトルは、嘘を重ねる「言葉」の象徴、愛をささやくふりをして、人を傷つける「舌」、肉体関係と心理操作の境界線としての「口」を意味する。人を操る力=言葉と欲望の象徴と言える。
ドラマ全体が、この“汚れた舌”を持つ人間たちが、相手を欺き、支配し、愛し、復讐する物語である。 - キャスト陣の“振り切った”演技合戦
佐藤浩市は絶対的カリスマ性と、男としての業の深さが絶妙に両立。飯島直子は、清楚で理知的な表面の奥に、痛々しいまでの愛情依存がにじむ。ともさかりえは、無表情な悪意、冷酷さ、狂気の寸前の抑制が秀逸。その他、京野ことみ、伊藤英明、小泉孝太郎など脇を固める若手勢も、情緒不安定な役どころを熱演している。全員が、どこか“壊れていく”人間を演じており、視聴者は「誰にも共感できないのに、目が離せない」ということになる。 - “エロスとミステリ”の境界を攻める演出
放送当時は「昼ドラの深夜版」「R指定スレスレ」と評されるほど、性的描写・心理描写が濃密だった。愛人の妊娠と嘘、セックスを使った支配、心のないキス、心を持たせない抱擁など、“愛と欲望のギリギリ”を描く演出が常に画面に漂っており、家庭では見づらい…と噂されるほどの大人のドラマとして異彩を放った。
愛という名の支配と依存を描いた異色の愛憎劇。『汚れた舌』は、倫理や道徳が通用しない世界で、人が“誰かを愛してしまったときにどう狂うか”を描くドラマである。
『真珠夫人』『牡丹と薔薇』系の愛憎ドラマが好きな人、“毒親/トラウマ/執着”など、重いテーマをじっくり描いた人間ドラマを求める人、佐藤浩市の“モラハラ風色気”を全開で味わいたい人には、自信をもっておすすめできる。
汚れた舌のあらすじ
東京・白金で花屋を営む江田千夏(飯島直子)と、祖父の代から続く花屋を全国規模の店に発展させた39歳の涼野耕平(加藤浩次)の恋愛を軸に、2人を取り巻く生き方や葛藤を描く。
汚れた舌を観るには?
汚れた舌のキャスト
汚れた舌のスタッフ
音楽 – 栗山和樹
演出 – 佐々木章光、藤尾隆
主題歌 – dorlis「肌のすきま」(ビクターエンタテインメント)
プロデューサー – 矢口久雄(テレパック)
製作 – テレパック、TBS
制作 – テレパック
汚れた舌 巷の感想
- 汚れた舌2005(20歳)地獄絵図に癒しのみっちゃん可愛い〜田中圭さんについてのひとことレビュー〜涼野光哉 役(愛を叫ぶ(田中圭マニア))
- 軸を持って生きる(レビューン)
- 汚れた舌・感想(雑記帳2)