アイドルの感想
8月以来の再放送だが、今回見たのは未公開シーンやステージを追加した89分の特別版。録画を見ないでおいて良かった。
二・二六事件が起きた昭和11年に岩手から上京した古川琴音が、スタアではなくアイドルになるという話を書いたのは日曜劇場でおなじみの八津弘幸だが、山崎育三郎・愛希れいか(こちらは本当のスタア)のミュージカルから、地下アイドル的な古川たちの歌と踊りにつなげる演出を見て、意外とよくできていると感心した。
クライマックスでの「私はステージに立たなければならない」という古川の使命感は、たしかにスターのそれとは違ったものだろう。
私はムーラン・ルージュも明日待子もほとんど知らないのだが、浅草オペラの「恋はやさし野辺の花よ」を歌う古川の声があまりに良いので驚いた。
ラストシーンに美空ひばりらしき少女が出てきたので、やや興醒めしたのだが、この出会いはあながちフィクションでもないらしい。佐藤くららという子役がまたすごい歌ウマだった。
アイドルの見どころ
- 「戦時下のアイドル」という異色のテーマ
エンターテインメントが困難を極める時代に、「アイドル」として人々を励まし続けた女性の姿を描いている。戦争という過酷な状況と、舞台で輝くアイドルの光の対比が物語に深い奥行きを与える。 - 古川琴音の繊細かつ力強い主演演技
地方から上京してきた素朴な少女が、やがて時代の「トップアイドル」へと成長していく様を、古川琴音が、繊細な表情の変化と、舞台上での力強いパフォーマンスで表現。憑依型の演技が、明日待子の喜びも悲しみも描き出した。 - 当時の劇場「ムーラン・ルージュ新宿座」の再現
当時の活気ある劇場の雰囲気や、そこで繰り広げられた歌やダンスのショーをリアルに再現。 - 豪華な共演者たち
山崎育三郎(山口正太郎)、愛希れいか(高輪芳子)、椎名桔平(佐々木千里)といった実力派俳優陣が、明日待子を取り巻く個性豊かな人物を客演。椎名桔平演じる佐々木千里は、厳しさの中に愛情を秘めたプロデューサー像として、物語の重要な役割を果たしている。 - 「アイドル」の原点を考える
ファンとアイドルが互いを支え合う関係性、エンターテインメントが人々に与える影響など、現代の「アイドル」に通じる普遍的なテーマが描かれている。戦争という極限状況において、人々に希望を与え続けた「アイドル」という存在の意義について考えさせられる。
アイドルのあらすじ
歌手になる夢を抱いて岩手から上京してきた少女、小野寺とし子(古川琴音)。彼女は新宿にある劇場「ムーラン・ルージュ新宿座」のオーディションを受けるが、支配人兼プロデューサーの佐々木千里(椎名桔平)からは不合格を言い渡される。しかし、ムーラン・ルージュの看板女優・高輪芳子(愛希れいか)の計らいで、とし子はムーラン・ルージュの一員となる。
先輩の高輪芳子に憧れ、看板俳優の山口正太郎(山崎育三郎)や同僚たちと共に稽古に励む日々。そんな中、ある日突然、とし子は舞台のセンターに立つことになります。やがて彼女は「明日待子(あした まつこ)」という芸名で絶大な人気を誇るトップアイドルへと成長していきます。
しかし、日本は戦争へと突き進み、その影響はムーラン・ルージュにも及んでいきます。劇場のシンボルである赤い風車は取り外され、看板俳優の山口正太郎も出征。明日待子もまた、戦地のファンを励ますため、戦争に協力していくことになります。激動の時代の中で、アイドルとして、そして一人の人間として、明日待子が経験する喜び、悲しみ、葛藤が描かれます。
アイドルを観るには?
アイドル キャスト
小野寺とし子/明日待子 – 古川琴音
山口正太郎(ムーランルージュの看板俳優) – 山崎育三郎
高輪芳子(ムーランルージュのトップスター) – 愛希れいか
須貝富安(学生) – 正門良規
小柳ナナ子(同期) – 田村芽実
佐々木千里(支配人) – 椎名桔平
その他
男声合唱カルテット – 酒井一圭(純烈)、白川裕二郎(純烈)、小田井涼平(純烈)、後上翔太(純烈)
高木(楽屋口番) – 花王おさむ
山本(舞台演出) – 陰山泰
待子ファンの青年兵士 – 萩原護
軍人 – 白畑真逸
寺沢検閲官 – 古屋隆太
少佐 – 奥田洋平
隊長 – 中野英樹
美空和枝 – 佐藤くらら
ムーランルージュの座員 – 加治将樹、大山真志、高橋義和、重岡漠、吉岡睦雄