2014年10月17日から12月19日まで毎週金曜日22:00 – 22:54に、TBS系の「金曜ドラマ」枠で放送。金曜ドラマ枠では2013年1月期に放送された『夜行観覧車』以来の湊かなえ作品のドラマ化で、同作のスタッフが再結集して制作された。主演は榮倉奈々で、第83回ザテレビジョンドラマアカデミー賞最優秀作品賞ほか部門賞を受賞するなど高評価を受けた。
Nのために あらすじ
2004年、野口貴弘と妻・奈央子が殺害され、西崎真人が逮捕される。10年後、西崎が出所し、高野茂が彼に事件の真相を聞き出そうとする。高野は警察官として、時効寸前の放火事件を調べており、その事件とスカイローズガーデン殺人事件に共通する人物・杉下希美と成瀬慎司に疑念を抱く。高野は安藤望や希美と会い、妻・夏恵が放火事件の詳細を記した置手紙を残し、成瀬と出会う。放火事件は解決するが、スカイローズガーデン殺人事件は謎のまま。主要登場人物は全員イニシャル「N」で、現在と過去を交錯させながら、殺人事件の真相と愛の物語を明らかにする「純愛ミステリー」。
Nのために 見どころ
本作は、奥寺佐渡子の脚本と塚原あゆ子の演出が見事に結晶したドラマである。この二人が組むことで、原作にあった陰鬱さと希望の微かな光が両立し、単なるサスペンスを超えた“感情の濃密なドラマ”に昇華していると思う。
奥寺佐渡子は「人の心の綾と影を描く脚本家」だが、本作では、湊かなえ原作のミステリーを次のように再構築している。台詞の“言葉足らず”を活かし、視聴者に“行間を読む”ことを強いることで生まれる余白が、心理劇にした。
- 「語られない想い」を中心に据える
原作の構造を活かし、複数の語り手の“回想”が交錯する。ドラマでは、台詞よりも「語られなかったこと」「視線・間」の方に比重を置く。
たとえば杉下希美(榮倉奈々)が成瀬慎司(窪田正孝)を見つめるカット。台詞は少なくても、内面の“好き”が強烈に伝わる。 - “N”たちの連鎖する痛み
杉下・成瀬・西崎・野口という「4人のN」の物語が過去と現在を行き来する。奥寺は、この構造に「誰も悪人ではないのに傷つけ合う関係性」を丁寧に編み込み、湊かなえ特有の「加害者と被害者の境界が曖昧になる物語」にリアリティを与えている。
一方、塚原あゆ子は“静謐さと感情の爆発”のコントラストを得意とする演出家である。本作では、次のような演出が光っている。
- 無音とロングショットの多用
対話シーンでもしばしば無音の間を挟む。カメラは引き気味で人物を捉え、周囲の風景(瀬戸内の海、坂の町並み)と一体化させる。
これにより、登場人物の孤独感と「どこにも逃げ場がない心理」が増幅されている。 - ロケーションの生かし方
瀬戸内の穏やかな海や夕焼けは、一見美しいが、登場人物の孤独と対比される。希美と成瀬が初めて本音をぶつけ合う海辺のシーンは、その象徴と言える。
塚原の映像は“感情の静かな爆発”を描いている。特に光と影の使い方が秀逸で、暗がりの中で浮かぶ顔のアップは「心の奥のざわめき」を視覚化した。
奥寺×塚原の相乗効果としては、台詞と画面の“呼吸”が挙げられる。
奥寺があえて書かなかった台詞を、塚原のカメラが拾い上げる。
例えば、成瀬が希美の後ろ姿を見つめる長回しや、希美が微かに震える指先のアップは、、台詞以上に「想いの重さ」を視聴者に伝えている。
『Nのために』は、北川悦吏子のように愛を叫ばず、坂元裕二のように理屈で語らず、ただ“黙ったままの想い”で胸を打つ。奥寺×塚原だからできた“静かな名作”である。
Nのためにを観るには?
Nのために キャスト
主要人物
杉下希美(明央大学文学部英文学科4年生) – 榮倉奈々
成瀬慎司(大学中退後、シャルティエ・広田 アルバイト) – 窪田正孝
安藤望(三羽商事営業部・希美の大学の1年先輩) – 賀来賢人
西崎真人(法学部留年中・自称作家) – 小出恵介(少年期:若山耀人)
野口貴弘(三羽商事営業部プロジェクト課 課長) – 徳井義実
野口奈央子(野口貴弘の妻・結婚前は三羽商事の受付嬢) – 小西真奈美
高野茂(青景島の駐在所に勤務する警察官) – 三浦友和
青景島の人々
高野夏恵(高野茂の妻) – 原日出子
宮本由妃(杉下晋の愛人) – 柴本幸
成瀬周平(成瀬の父) – モロ師岡
成瀬瑞穂(成瀬の母) – 美保純
池園和幸(民生委員・後に早苗の夫) – 山中崇
杉下洋介(希美の弟) – 葉山奨之
磯野友子(希美の高校の同級生) – 梨木まい
杉下晋(希美の夫) – 光石研
杉下早苗→池園早苗(希美の母) – 山本未來
その他
桐野繭子(後に希美が就職する会社の上司) – 伊藤裕子
広田公之(シャルティエ・広田 オーナー) – 福田転球
溝口(成瀬の大学の同級生) – 山田裕貴
西崎寛(西崎の父) – 神崎孝一郎
野原兼文(野バラ荘 管理人) – 織本順吉
西崎美雪(西崎の母) – 中越典子
津嘉山弁護士(西崎の担当弁護士) – 渡辺憲吉
柴田医師 – 桜井聖
前田医師(10年後の高野夏恵の主治医) – 山田明郷
多田医師(10年後の希美の主治医) – 財前直見(特別出演)
杉下希美(明央大学文学部英文学科4年生) – 榮倉奈々
成瀬慎司(大学中退後、シャルティエ・広田 アルバイト) – 窪田正孝
安藤望(三羽商事営業部・希美の大学の1年先輩) – 賀来賢人
西崎真人(法学部留年中・自称作家) – 小出恵介(少年期:若山耀人)
野口貴弘(三羽商事営業部プロジェクト課 課長) – 徳井義実
野口奈央子(野口貴弘の妻・結婚前は三羽商事の受付嬢) – 小西真奈美
高野茂(青景島の駐在所に勤務する警察官) – 三浦友和
青景島の人々
高野夏恵(高野茂の妻) – 原日出子
宮本由妃(杉下晋の愛人) – 柴本幸
成瀬周平(成瀬の父) – モロ師岡
成瀬瑞穂(成瀬の母) – 美保純
池園和幸(民生委員・後に早苗の夫) – 山中崇
杉下洋介(希美の弟) – 葉山奨之
磯野友子(希美の高校の同級生) – 梨木まい
杉下晋(希美の夫) – 光石研
杉下早苗→池園早苗(希美の母) – 山本未來
その他
桐野繭子(後に希美が就職する会社の上司) – 伊藤裕子
広田公之(シャルティエ・広田 オーナー) – 福田転球
溝口(成瀬の大学の同級生) – 山田裕貴
西崎寛(西崎の父) – 神崎孝一郎
野原兼文(野バラ荘 管理人) – 織本順吉
西崎美雪(西崎の母) – 中越典子
津嘉山弁護士(西崎の担当弁護士) – 渡辺憲吉
柴田医師 – 桜井聖
前田医師(10年後の高野夏恵の主治医) – 山田明郷
多田医師(10年後の希美の主治医) – 財前直見(特別出演)
Nのために スタッフ
原作 – 湊かなえ『Nのために』(双葉文庫)
脚本 – 奥寺佐渡子
音楽 – 横山克
主題歌 – 家入レオ「Silly」(JVCケンウッド・ビクターエンタテインメント)
プロデュース – 新井順子(ドリマックス)
演出 – 塚原あゆ子、山本剛義、阿南昭宏
製作著作 – ドリマックス、TBS
脚本 – 奥寺佐渡子
音楽 – 横山克
主題歌 – 家入レオ「Silly」(JVCケンウッド・ビクターエンタテインメント)
プロデュース – 新井順子(ドリマックス)
演出 – 塚原あゆ子、山本剛義、阿南昭宏
製作著作 – ドリマックス、TBS
Nのためにの原作(湊かなえ)
超高層マンションの一室で、そこに住む野口夫妻の変死体が発見された。
現場に居合わせたのは20代の4人の男女。
それぞれの証言は驚くべき真実を明らかにしていく。著者初の純愛ミステリー。