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あいつの声の感想
90年代の韓国三大未解決事件(いずれも映画化されている)の一つとのことで、犯人は最後までわからないのだが、カン・ドンウォンがキャストされており、ファンはすぐに肝心の声でわかってしまい、モヤモヤするようだ。
人気キャスター(実際の事件は会社社長)の9歳の息子サンウ君が誘拐され、犯人から1億ウォンの身代金を要求する電話がかかってくる。電話はその後、映画終盤まで60回以上もかかってくるのだが、韓国警察のいつもの無能あるあるで、逆探知は失敗。身代金を積んだ車のトランクには刑事が潜んでいたのだが、ガスで眠らされて犯人の顔すらわからないままという体たらく。この刑事(トランクまで出前を運ばせたりしている)はじめ、デブの女班長や科学捜査研究員など警察の面々は個性豊かでちょっと楽しい。
映画は翻弄され続けるサンウ君の両親を描き、結末を知っていても思わず手に汗握るシーンが展開しては、からぶりに終わる。
サンウ君の父親を演じるソル・ギョングは「殺人の記憶法」でアルツハイマーの殺人鬼を演じていた人。ラストシーンでは、息子を失った悲しみ(結局誘拐直後に窒息死していた)と犯人への怒りを涙ながらにテレビで訴える演技が真に迫っていた。
息子の死で決定的にはなるものの、誘拐からの44日間で夫婦は次第に壊れていく。母親を演じているのはキム・ナムジュで、この人も有名な女優らしいが、犯人に赤い服を指定され、毛皮姿で指定場所に走り(犯人の指定場所は基本的にどこも渋滞しているのだ)、力尽きて道に倒れるシーンもなかなか鬼気迫る。
ドキュメンタリー色の強い映画だが、監督はテレビ局で報道系の仕事をしていたらしく、実際の事件の被害者インタビューもしたらしい。本作が公開された2007年に誘拐事件は時効を迎え、監督は本作を犯人捜索の手がかりとして制作したとのこと。
あいつの声 見どころ
- 実話に基づいた重厚なリアリティ
1991年にソウルで発生した「イ・ヒョンホ君誘拐殺害事件」がモチーフ。犯人逮捕に至らず時効を迎えたこの事件は、韓国三大未解決事件の一つとされている。映画では、この事件の悲劇と、遺族の無念、そして警察の捜査の限界を生々しく描く。エンディングで実際に犯人の脅迫電話の肉声が流れる演出は衝撃的。 - ソル・ギョングの鬼気迫る熱演
主人公の父親、ハン・ギョンベを演じるソル・ギョングの演技が圧巻。息子を誘拐され、犯人に翻弄され、徐々に精神的に追い詰められていく父親の絶望、怒り、憔悴しきった姿を全身で表現。終盤、ニュースキャスターとしてテレビカメラに向かって犯人に訴えかけるシーンは、鬼気迫る。彼のキャリアの中でも特に印象的な演技と言える。 - キム・ナムジュの繊細な演技
母親のオ・ジソンを演じるキム・ナムジュも、息子の安否を案じる母親の精神的な苦痛や、絶望していく姿を繊細に演じた。夫婦の絆が崩壊していく過程も描かれる。 - カン・ドンウォンの「声の出演」
犯人の声は人気俳優のカン・ドンウォン。顔はほとんど映らず、声だけで犯人の冷酷さ、狡猾さ、どこか不気味な雰囲気を表現。実際の犯人の声の特徴を科学的に分析し、再現したとのこと。 - 警察の無能さの描写と社会への問いかけ
映画では、警察の捜査のミスや、犯人の巧妙な手口によって翻弄される姿が描かれる。当時の警察に対する国民の不信感、未解決事件に対する社会の苛立ちを反映している。事件が未解決に終わった事実を突きつけ、犯人だけでなく、社会全体への問いかけも込められた。
あいつの声 あらすじ
人気ニュースキャスターのハン・ギョンベ(ソル・ギョング)の一人息子サンウが、公園で誘拐された。犯人からの脅迫電話は巧妙で、警察の捜査網を嘲笑うかのようにかわし続けます。唯一の手がかりは、犯人の「声」だけだった。警察は秘密捜査本部を設置し、必死に犯人を追いますが、犯人は緻密な計画で身代金を受け取り、警察を翻弄します。連絡が途絶え、44日後、サンウの遺体が発見されるが、犯人は逮捕されず、事件は未解決のまま時効を迎える。ハン・ギョンベと妻のオ・ジソン(キム・ナムジュ)は、我が子を失った絶望と、犯人を捕まえられない警察への不信感、そして犯人への激しい怒りに苦しめられる。
あいつの声を観るには?
あいつの声 キャスト
あいつの声 スタッフ
脚本 – パク・チョンピョ
音楽 – イ・ピョンウ
撮影 – キム・ウヒョン
製作会社 – Zip Cinema
配給 – CJエンタテインメント
公開 – 韓国:2007年2月1日/日本:2011年9月3日
上映時間 122分
『あいつの声』は、未解決事件の悲劇を忘れさせない、そして犯罪撲滅への願いを込めた映画です。この記事で少しでも興味を持たれた方は、ぜひ本編をチェックしてみてください。