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あなたのことはそれほど

4.5
波瑠(あなたのことはそれほど) ドラマ
波瑠(あなたのことはそれほど)
2017年4月18日から6月20日までTBSテレビ系「火曜ドラマ」枠で放送された。主演は波瑠。

あなたのことはそれほどの感想

ファーストインプレッション

クドカンと堤幸彦作品でおなじみの金子文紀が演出だが、わりとオーソドックス。
波瑠が驚くほどブサイクに映る瞬間があるのは偶然なのか。
たしかにイメージとまったく合わない話で、普通に展開するだけでサスペンスになってしまうのはこの女優の弱点だと思う。

そして・・・

あれはドラマの役柄であって自分は主人公にまったく感情移入できないが演じているだけだ、というコメントを波瑠が発表したという芸能ニュースを見て、何が起こっているのかと放置されている録画を最新話まで見てみたら、東出昌大が春彦さん化するというありがちな展開ながらも、意外と面白くなっていた。これもすべて波瑠の微妙な立ち位置から来るものである。

さらに

ゲイであることをカミングアウトして腐女を沸かせた山崎育三郎は、根源的な第三者として波瑠を客観的に捉えられる存在のはずだが、「女のダメなところが煮詰まっている」という一見容赦なさげな台詞は、とくに波瑠を打ちのめすほどの力はなかった。

それよりも最後に東出が波瑠に投げつけた「自分を肯定することにかけては天才的」という批判こそ、ヒロインの本質を言い当てたものだっただろう。

しかし波瑠は最後まで大してめげた様子もないままで、それぞれの登場人物たちは相手から心を離していく(「それほど」というタイトルがここで繰り返される)。原作通りの結末なのだろうと思うが、これは心に残るものであった。

うーむ

テーマは波瑠が演じるヒロインの存在そのもので、ほぼすべての登場人物がその行動を批判し、一体何をしたいのかと波瑠に問いかけるが、彼女は何も答えることができないまま、あまりに無垢だが思慮に欠ける行動をとる(中心となるオブセッションは「自分は二番目に好きな人と結婚した」という一点なのだ)。
東出昌大の「奪い愛、冬」的なサイコぶりは、波瑠を批判的でなく描くために必要な演出で、他作品ではヒロインを陥れる常習犯のはずの大政絢は、羨望を押し隠して女友達を心配する役だし、麻生祐未は娘の勝手さにあきれて毒親ぶりを中和されてしまう。

対抗する仲里依紗のこわーい嫁ぶりは、「何をしたいのか自分でもわからない女」の別のありようと言える。暴走してミステリ要素を加えたしょこたんもまた同様と言える。

結論

結局、これは大変な傑作と言えるドラマだった。「自分が何をしたいのかわからない女」を演じた波瑠は、今回もまたその素材力を遺憾なく発揮したと言える。他の女優では成立しなかったのではないか。

あなたのことはそれほど 見どころ

  1. 「二番目に好きな人と結婚した女」が主役という問題作!
    主人公・渡辺美都(波瑠)は、優しくて安定志向の涼太(東出昌大)と結婚したものの、心の中にはいつまでも“初恋の人”・有島(鈴木伸之)への想いを引きずっている。そんな中、有島と偶然再会し、不倫関係に――。
    ドラマは「本当に好きな人と結ばれない現実」や「抑えきれない衝動」を描き、共感と反発の声が飛び交った問題作となった。
  2. 波瑠の“善人じゃない主人公”に挑戦した演技
    清純・好感度路線の波瑠が「自分の欲望に正直な女性」を体当たりで演じ、話題に。“ちょっと身勝手だけどリアルにいそう”なヒロイン像は、視聴者の賛否を巻き起こしつつも強烈な印象を残した。
  3. 東出昌大の“狂気の夫”が怖すぎる!
    最大の見どころは夫・涼太(東出昌大)の変貌。最初は優しくて穏やかだった彼が、美都の不倫を知ってからは…異常なほどの笑顔、無言の圧力、じわじわと追い詰める心理戦、と、“静かに壊れていく夫”の恐怖を見事に演じ切りった。視聴者からは「ホラー級の怖さ」「東出の真骨頂」と称賛の声も。
  4. いくえみ綾原作らしい“空気感のリアルさ”
    女性同士のマウント、SNSに依存する関係、自分に都合よく世界を見る甘さ、愛されていると錯覚する危うさ、といったリアルな日常のズレや欲望の描写は、いくえみ作品ならでは。セリフのひとつひとつに“イヤなリアルさ”がにじみ出ており、視聴者の心をざわつかせる。
  5. “正義”も“悪”もない、それが現実?
    不倫を扱ったドラマでありながら、「断罪」や「制裁」だけで終わらせないのがこの作品の特徴。欲望に流された美都、裏切られた夫・涼太、不倫相手の有島とその妻。それぞれに“正しさ”と“愚かさ”があり、明確なヒーロー/ヒロインが存在しない。ラストも「スカッと解決!」とは程遠く、むしろ「それでいいの?」と問いかけられるような余韻の残る結末である。

あなたのことはそれほど あらすじ

29歳の美都は、初恋の相手・有島光軌と再会し、不倫関係に陥る。有島は既婚者であり、美都も夫・涼太がいることを明かすが、関係は続く。美都は有島の妻・麗華と対面し、涼太も有島夫妻と接触したことで、麗華は夫への疑念を深める。涼太は美都を愛し続けるが、美都は有島との関係を続けたいと思い、家を出る。有島は麗華との関係が悪化し、美都に別れを告げる。美都は最終的に涼太と離婚し、母親の介護に専念する。一方、有島は麗華と復縁し、家族のもとに通う日々を送る。涼太は美都への未練を抱えながらも、メッセージを送ることができないでいる。

あなたのことはそれほどを観るには?

あなたのことはそれほど キャスト

主要人物
渡辺美都(武蔵野眼科で医療事務として勤務) – 波瑠(中学生時代:内田愛)
渡辺涼太(美都の夫) – 東出昌大
有島麗華(有島の妻) – 仲里依紗
有島光軌(美都の中学生時代の同級生) – 鈴木伸之(劇団EXILE)(中学生時代:小原唯和)
その他
飯田香子(美都の中学生時代からの親友) – 大政絢(中学生時代:喜多乃愛)
横山皆美(有島と麗華が暮らすマンションに引っ越してきた主婦) – 中川翔子
森留美(美都と眼科クリニックの同僚) – 黒川智花
榎本祐機(有島が行きつけのバーで働くバーテンダー) – 成田偉心
中野晴夫(悦子のスナックの常連客) – 春海四方
小田原 真吾(涼太の働くインテリア会社の同期) – 山崎育三郎
千葉翔太(有島の部下) – 平間壮一
有島佳菜(有島の妹) – 大友花恋
有島陽子(有島の母) – 唐木ちえみ
横山良明(皆美の夫) – 山岸門人
美苗(有島の大学の同級生) – 立石晴香
佐藤美由紀(陶芸教室の生徒) – 山田真歩
和田悟(陶芸教室の講師) – 長野克弘
戸川多恵(麗華の母) – 清水ミチコ
花山司(美都の働くクリニックの眼科医。バツ3で独身) – 橋本じゅん
三好悦子(美都の母。シングルマザー) – 麻生祐未

あなたのことはそれほど スタッフ

原作 – いくえみ綾あなたのことはそれほど』(祥伝社フィールコミックス)
脚本 – 吉澤智子
主題歌 – 神様、僕は気づいてしまった「CQCQ」(Atlantic Japan)
演出 – 金子文紀竹村謙太郎福田亮介
編成 – 池田尚弘、中島啓介
プロデューサー – 佐藤敦司
製作 – ドリマックス・テレビジョン、TBSテレビ

あなたのことはそれほどの原作(いくえみ綾)


いくえみ綾が描く、底無しW不倫。「私はいつかきっと罰があたる」 占い師は、中学生の美都(みつ)にこう言った。「二番目に好きな人と結婚するのがいい」 医療事務として働く美都は、飲み会の帰り道に想って想って想い続けた初恋の人・有島(ありしま)に再会、男女の仲に。しかし彼は既婚者で、美都にもすでに優しい夫がいて───。美都と夫、有島と妻。四者四様の視線と思惑が交錯する、出口なしのマリッジライフ、待望の第1巻。
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