パッションの感想
2010年に急逝したアラン・コルノー(「インド夜想曲」の監督)の遺作「ラブ・クライム 偽りの愛に溺れて」のリメイクで、脚本は基本的に変えず、結末も同じらしい。「デ・パルマが久々にサスペンスに回帰した」と評判になった。
ところが、おなじみピノ・ドナッジオ(「キャリー」「殺しのドレス」)のスコアを背景に長回し、画面分割、夢オチ、ドッペルゲンガーと往年のデ・パルマ節がてんこ盛りにもかかわらず、本作は、その「映像美」にすんなり酔えないようになっている。
というのも、演出が不可解に観客をはぐらかすからだ。
これは「誰が犯人かわかりにくくするため」とのことだが(デ・パルマ談)、ブニュエル的に「信用できない映像」が延々と続き、しかもファーストカットからレズビアン要素を入れていて、主人公のセクシュアル・プリファレンスもよくわからないまま終盤を迎える。
もともとが「精神衰弱を偽ってわざと自白した後でそれを翻して無実の証拠を警察に見つけさせる」という裏をついた展開の脚本なので、誰がどういう感情を持っているかがはぐらかされ続けるのには、ちょっとストレスを感じた。
金髪のレイチェル・マクアダムスをクリスティーンに、黒髪のノミオ・ラパス(そもそもこの女優を起用するのがおかしい)をイザベルに、というコルノー版(イザベルがリュディヴィーヌ・サニエ、クリスティーヌがクリスティン・スコット・トーマス)と逆のキャスティング、そして唐突な「クリスティーンの双子の姉」の登場など、いまだにデ・パルマは「めまい」を忘れられないようなのである。
パッションのあらすじ
ニューヨークに本社を持つ世界的広告会社のベルリン支社で働くイザベルと上司クリスティーヌは、公私にわたる良きパートナーだったが、カイロ出張をきっかけに関係が崩壊。イザベルは出張先でクリスティーヌの恋人フィリップと関係を持ち、クリスティーヌはイザベルの功績を横取りし、彼女を敵視するように。イザベルはクリスティーヌに対する殺意を抱き、緻密な計画を実行。クリスティーヌを殺害し、自分に嫌疑がかかるように工作する。一旦は逮捕されるも、薬物依存を装い自供を無効化して無罪放免に。さらにフィリップの不正経理を証拠に、クリスティーヌ殺害を彼の犯行に見せかける。
クリスティーヌの死後、イザベルは重役に昇格して順調に仕事をこなすが、助手のダニエルが彼女の薬が偽物であることを突き止め、犯罪計画に気づいてしまう。イザベルはダニエルの発見に愕然とし、自分の計画が露見する危機に直面する。
パッションを観るには?
パッション キャスト
イザベル・ジェームス(クリスティーンの部下) – ノオミ・ラパス
ダニ・ヴィルト – カロリーネ・ヘルフルト
ダーク・ハリマン – ポール・アンダーソン
バッハ刑事 – ライナー・ボック
検事 – ベンヤミン・サドラー
ニンフ役のバレエダンサー – ポリーナ・セミオノワ
牧神役のバレエダンサー – イブラヒム・オイク・オナル
パッション 作品情報
脚本 – ブライアン・デ・パルマ
原作 – オリジナル脚本:ナタリー・カルテール、アラン・コルノー
製作 – サイード・ベン・サイード
音楽 – ピノ・ドナッジオ
撮影 – ホセ・ルイス・アルカイネ
編集 – フランソワ・ジェディジエ
製作会社 – SBSプロダクションズ、Integral Film、フランス2シネマ、Canal+、フランス・テレビジョン、シネ+、メディエンボード・ベルリン=ブランデンブルク、ドイツ映画基金、ワイルドバンチ
配給 – フランス ARP Sélection、ドイツ Ascot Elite Entertainment Group、日本 ブロードメディア・スタジオ
公開 – イタリア 2012年9月7日(VIFF)、フランス 2013年2月13日、ドイツ 2013年5月2日、日本 2013年10月4日
上映時間 – 101分