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(r)adius ラディウス

3.5
シャーロット・サリバン((r)adius ラディウス) 映画
シャーロット・サリバン((r)adius ラディウス)
『(r)adius ラディウス』は、2017年に公開されたカナダのSFスリラー 映画。監督・脚本はキャロリーヌ・ラブレシュとスティーブ・レオナール。

(r)adius ラディウスの感想

秀逸なアイディア一発の低予算映画。プロットもシンプルきわまりなく、「主人公たちの能力はどこからきたのか」「彼らがなくした記憶とは何か」という二つのポイントしかない。

自分が赴くところバタバタと人が死んでいくので驚く、という序盤はなかなかいいのだが、映画のキャッチコピーが完全ネタバレしているので、観客の驚きが奪われているのはいかにも残念だ。

男(記憶喪失ながら、免許証でリアムという名前だと知る)も、10人以上も死なせたあげくに、ようやく死の原因が自分にあると気づく。それにしても、人が倒れたり鳥が落ちてきたりするだけなので、映画的には非常に安上がりな超常現象と言える。

もうひとりの記憶喪失者であるジェーン(ジェーン・ドゥのような仮名で、本名はローズ)はリアムに近づいても死なないので、現象はおさまったのかと思いきや、じつはリアムの力を中和していることが判明し、リアムとジェーンが15m以上離れると強制死現象が発動する仕組みである。

ここまでのアイディアは秀逸で、中盤の病院でのアクションシーン(一方がエレベーターに乗り損ねたために、同乗者の命をかけて階段で追いかける)は、過去に例のないサスペンスを生んでいた。

しかしながら、おそらく作り手たちがかなり議論したであろうこの15mという距離は、かなり微妙だ。エドワード・ホールの「コミュニケーション距離」で言えば講演者のような1対多の「公衆距離」に当たるが、劇中ではソーシャルディスタンス(ご存じ120〜360cm)程度か、せいぜい5m程度にしか見えない。この距離の描き方によって、カーチェイスなどもっと面白い展開も考えられるのに、極力金のかからない演出にとどまっているのが惜しい。

なぜそのような能力が備わったのか(ひとつ目のポイント)は、一応後半であっさり説明されるのだが、それ以上でも以下でもなく、プロットはどん詰まりになっており、上記以外の展開要素はない。ということでオチは悲劇的なものになっている。

もうひとつのポイントである記憶喪失の謎は、何度もフラッシュバックでほのめかされ、クライマックスで全貌が明かされる。こちらはオイディプス的な軽いどんでん返しなのだが、殺されたジェーンの姉が双子という設定で、同じ女優が演じているので、ますます安上がりである。

主人公ふたりの演技がかなり下手くそな上、演出も平凡で、一種怪しいB級の雰囲気が逆に期待を煽っており、一発アイディアだけでも映画はできてしまうのだという悪い見本のような気がする。

(r)adius ラディウスのあらすじ

事故に遭い記憶喪失になった男は免許証の自宅住所に向かうが、その道中では多くの人が死亡しているた。ニュースでは生物兵器によるテロが報道されていたが、男は人々の死の原因が自分自身にあることを悟る。

(r)adius ラディウスを観るには?

(r)adius ラディウス キャスト

リアム – ディエゴ・クラッテンホフ
ジェーン/ローズ、リリー – シャーロット・サリバン
サム・デアウッド – ブレット・ドナヒュー

(r)adius ラディウス 作品情報

監督・脚本 – キャロライン・ラブレッシュスティーブ・レオナルド
製作 – アンヌ=マリー・ジェリナス、ブノワ・ボーリュー、ジャン・デュ・トワ
撮影 – シモン・ヴィルヌーヴ
編集 – スティーブ・レオナルド
音楽 – ブノワ・シャレスト
製作 – EMAフィルムズ、逍遥絵画、タイトルメディア
配給 – フィルムオプションインターナショナル
公開日 – 2017年7月17日
時間 ー 93分
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