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デ・パルマ無双状態を楽しむ(スネーク・アイズの感想)
見るのは二度目だが、嫌いではない映画だ。
舞台はハリケーン来襲中のアトランティックシティ、地元TV局のリポーターが中継する、ボクシングのヘビー級タイトルマッチを観覧しに来た国防長官をとらえた「映像が映るテレビ」のパンから始まり、現場スタジアムの中を縦横に動き回る
ニコラス刑事をステディカムで追い、ウォークウエーを通って1万4000人の観客がいるリングサイドで終わるかと思わせて、さらに主要人物全員の動きをおさめつつ、試合のヒートアップに乗じた国防長官の射殺まで続く長回しで映画は始まる。この間、ニコラス刑事は喋りっぱなしである。
この13分の長回し(実際には合成があり擬似的なもの)は、物語の中で主要人物の数だけ別角度から反芻されるという念の入ったものである(こっちの方がすごい)。そしてその後も、一人称キャメラによる長回し、スプリット、複数の部屋の俯瞰パン、すり抜け、監視カメラ映像など、
デ・パルマ節の集大成が最後まで持続するのだが、これは「ミッション・インポシブル」のヒットで得た資金をすべて注ぎ込むことで実現したと言われる。中でも、一人称キャメラが鏡を介して三人称に切り替わるというあっと驚くシーンには唖然とさせられる。
ニコラス刑事とコンビを組むヒロインは金髪カツラ(!)を付けたイタリア系のかわい子ちゃんカーラ・グギノ(下着姿が色っぽい)で、これがまたいかにもデ・パルマ好みな感じなのがたまらない。
スネーク・アイズの見どころ
アトランティックシティを舞台に、ボクシングの世界タイトルマッチ中に起こった殺人事件の真相を、唯一の目撃者である刑事が解き明かしていく、予測不能な映画。
- デ・パルマ監督の巧みなカメラワークとワンカット風映像
ブライアン・デ・パルマ監督の真骨頂である、流れるような長回しのオープニングシーンが最大の見どころ。ボクシング会場の熱気、観客のざわめき、そして事件の勃発までを、カメラがシームレスに移動しながら捉えることで、観客は一気に物語の世界に引き込まれる。その場にいるかのような臨場感と、息詰まる緊張感を生み出すデ・パルマらしい演出。 - ニコラス・ケイジの怪演と人間描写
ニコラス・ケイジは事件の目撃者で捜査の指揮を執る刑事リック・サンタロを演じる。口八丁手八丁で、ずる賢く、どこか怪しい人間ですが、事件の真相に迫るにつれて、彼の人間的な葛藤や正義感が露わになる。ニコラス・ケイジ独特の狂気と人間臭さが混じり合った演技が見どころ。 - 密室サスペンスの緊張感
巨大なボクシング会場という「密室」で起こった殺人事件を、証言の食い違いや隠された真実を突き止めながら解明していくサスペンス。事件の裏に隠された陰謀や、登場人物たちの思惑が複雑に絡み合い、最後まで誰が信用できるのか、何が真実なのかが読めない展開が続く。 - 登場人物たちの多面性
純粋なボクサー、事件の真犯人、そして事件の裏で暗躍する人物たちなど、それぞれの登場人物が持つ多面性も見どころ。「表の顔」と「裏の顔」が徐々に明らかになることで物語が複雑な様相を呈していく。 - 映像と音響の融合
全体に漂う不穏な雰囲気、緊迫感を高める音響設計も特徴。ボクシング会場の喧騒、事件発生時のパニック状態をリアルに再現することで、観客は視覚と聴覚の両面から作品の世界に引き込まれる。
トリビア・撮影裏話など
- 映画史に残る約13分の長回し(実際には複数のカットが巧妙に繋がれている)のオープニングシーンは、デ・パルマ監督のこだわりが詰まっている。延べ数日を要し、監督が綿密なカメラの動きや俳優の動線を指示したという
- 撮影のために、プロのボクサーやコーチが指導に入り、ボクシングの動きや試合の雰囲気をリアルに再現した
- デ・パルマ監督は「隠れた手掛かり」を随所に散りばめている。例えば背景に映り込むわずかな映像、登場人物の何気ない仕草が、後に事件の真相を解き明かすヒントになっている
- デ・パルマの作品にはしばしばヒッチコックへのオマージュが見られる。本作も、ヒッチコックが得意とした「無実の人間が事件に巻き込まれる」といったテーマやサスペンスの演出手法に影響が見られる
- ラスベガスに次ぐカジノの街として知られるアトランティックシティが舞台となることで、華やかさと、裏社会の闇を暗示している
- Snake eyesとは、米俗語でサイコロの「1のゾロ目」のことで、クラップス賭博においては「振り手の負け」という出目のため、そこから転じて「もう駄目、一巻の終わり」という意味もある
- 坂本龍一が音楽の一部を手掛けている
スネーク・アイズ あらすじ
大観衆を集めたボクシング王座戦の最中、リングサイドで観戦中の国防長官が暗殺される。その瞬間を間近で目撃した汚職刑事のリックは、真犯人探しに奔走する。
スネーク・アイズを観るには?
スネーク・アイズ キャスト
ケヴィン・ダン:ゲイリー・シニーズ
ギルバート・パウエル:ジョン・ハード
ジュリア・コステロ:カーラ・グギノ
リンカーン・タイラー:スタン・ショウ
ルー・ローガン:ケヴィン・ダン
ジミー・ジョージ:マイケル・リスポリ
チャールズ・カークランド国防長官:ジョエル・ファビアーニ
サイラス:ルイス・ガスマン
ネッド・キャンベル:デヴィッド・アンソニー・ヒギンズ
ウォルト・マクガーン:マイク・スター
アンシア:タマラ・チュニー
ミッキー・アルター:チップ・ジーン
CJ:マーク・カマチョ
セレナ:ジェイン・ハイトメイヤー
ゴードン・プリツカー刑事:ピーター・マクロビー
スネーク・アイズ スタッフ
『スネーク・アイズ』は、デ・パルマ監督の映像美と、ニコラス・ケイジの怪演が光る、息詰まる心理戦と予測不能な展開が魅力のサスペンス・スリラーです。この記事で少しでも興味を持たれた方は、ぜひ本編をチェックしてみてください。