悪魔のようなあいつ

悪魔のようなあいつの感想

那智わたるは非常に人気のあった宝塚男役のスターとのことだが、映画やドラマへの出演は非常に少ない。
1975年放映のドラマで、上村一夫の原作から長谷川和彦が脚本を書き、久世光彦が演出。

筒井康隆にしか見えない藤竜也、フランス映画風の若山富三郎が印象的だが、沢田研二（ジュリー）が恰好よすぎるものの、話はわかりにくい。ジュリーと電話するうちに、なぜかコーフンして裸になってしまう藤竜也のモーホー演出がおかしい。
「時の過ぎゆくままに」と「三億円事件時効まであと×日」というヤマト風のテロップでなんとかまとめているが、かなりしっちゃかめっちゃかなドラマである。

悪魔のようなあいつ　見どころ

本作（金曜ドラマである）は当時としては異例づくしの挑戦的な作品だった。

主人公・長谷川周平（沢田研二）は冷酷な知能犯でありながら三億円事件の犯人であり、末期脳腫瘍の青年。甘さと色気を纏う破滅的な人物である。当時の連ドラでは「善良で共感できる主人公」が王道であり、倫理観が揺らぐ“反ヒーロー”を主役に据えたのがまず異例である。沢田研二のロックなカリスマ性が、長谷川周平というキャラクターの危うさとシンクロし、視聴者を魅了すると同時に不安にさせた。アイドルでありながら“悪の美学”を体現したジュリーの存在感が、70年代ドラマの型を破った。

藤竜也は両性愛者を演じ、男性とも女性とも肉体関係を持つ（主人公の孤独や人間関係の断絶のメタファーとして機能している）。1970年代の地上波ドラマで同性愛的要素を正面から扱うのは極めて斬新であり、社会的にも物議を醸した。

高度経済成長期の終盤に、都市化による疎外感・人間関係の希薄化を背景に置いたドラマである。犯罪ドラマといえば勧善懲悪が当たり前だった時代に、犯人の内面と社会の歪みを重ねる構造は新しかった。

久世光彦と長谷川和彦はシネマライクな画作りを連ドラに持ち込んだ。ロングショットの多用、都市の雑踏を活かしたロケ、静寂と間による緊張感の演出、映画のような編集・テンポ感が当時の家庭ドラマや職場劇とは一線を画した。久世の“本気で殴らせる”演出と長谷川脚本の爆発する暴力衝動が、テレビとしての限界を突破している。さらに毎回エンディングで「時効まであと○日」と表示し、冒頭から時限装置的なサスペンス構造を視聴者に植えつけた。
井上堯之バンドは、当時の連ドラ音楽において異例のロックとファンクのサウンドトラックえお提供。バンドが放つ生音が、ドラマ全体の都会的な空気感と不穏さを支える。

“家庭の茶の間ドラマ”だった金曜ドラマ枠を、都会の闇を描く“テレビシネマ”に変貌させたエポックだった。

悪魔のようなあいつのあらすじ

元刑事の野々村修二が横浜・山下町で経営するバー「日蝕」の歌手で男娼の可門良は「三億円事件」の犯人だった。良に惹かれて夜を共にする女たち、良をつけ狙う刑事、良の三億円の金に集まる男。そして、良自身もGLIOBLASTOMA（神経膠芽腫）に冒されており、余命いくばくもない。

悪魔のようなあいつを観るには？

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悪魔のようなあいつのキャスト

悪魔のようなあいつのスタッフ

悪魔のようなあいつの原作（上村一夫・阿久悠 ）

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可門良、27歳。元バンド・ボーイ。女を狂わせる妖しい魅力を持つ男…。元競輪選手で、足の不自由な街のゴロツキ、八村。元会社員でバーのマスターをしている野々村。三億円事件の追及に異常な執念を燃やす刑事の白戸。この三人が絡み合い、三億円強奪事件の時効までの日を数えながら、物語は展開して行く…。大型ピカレスク・ロマン!!収録作「春の雪」ほか「錆びた海」「狂い咲き」「4月馬鹿」「重荷」「反逆のブルース」「傷」「日蝕」「男3人」「静かな日々」「乱れる」「もう一人の女」の全12話を収録。