文学座に所属していた松田優作と中村雅俊が、横浜の架空の警察「相模警察」の本部捜査一係に所属する中野祐二、五十嵐貴久という性格の異なる若手刑事コンビを演じる青春刑事ドラマ。刑事コンビものの先駆けだが、「仲間意識」「チームワーク」を重視するものではなく、主人公コンビは最終回まで上司や先輩刑事から「厄介者」と侮蔑され、孤立していた。企画の狙いは「刑事ドラマと言いながら実は青春ドラマで、事件を解決する中で大人になっていく若者を描く」ことにあったという。
俺たちの勲章の感想
関根恵子という人は、デビュー直後(「高校生ブルース」「おさな妻」後の引退決意)から何度も芸能界から姿を消そうとして(77年の自殺未遂、79年のバンコク逃亡)、そのたびにショッキングな体当たり演技で復活してきた人である。それをなしえたのは類まれな美貌に恵まれていたからだ。
本作は75年のドラマの初回で、関根はゲスト。この時点でまだ20歳である。
このドラマは松田優作と中村雅俊のコンビに女優が絡む形式が原則になっており、この後、篠ひろ子、伊藤めぐみ、浅茅陽子、金沢碧、五十嵐淳子(中村と結婚するなれそめである)、真野響子、夏純子、吉行和子と続く。
俺たちの勲章 見どころ
本作は「俺たちシリーズ」第1作として、刑事ドラマの在り方に変革をもたらしたドラマである。
中野(松田優作)はアウトロー的な刑事の原型であり、無鉄砲で反骨心が強く、社会の“はぐれ者”である。のちの『探偵物語』や『太陽にほえろ!』のジーパン刑事にも繋がる松田優作のアウトローキャラの原点と言える。
北野(中村雅俊)のほうは、クールで理知的な相棒。正義感はあるが冷静沈着。熱血で粗野な中野との対比が絶妙である。“スマートな知性”という新しい若手刑事のイメージであり、のちの「クール系相棒」の原型になった。
2人の関係は『あぶない刑事』タカ&ユージ、『相棒』杉下&亀山の源流と言える。
本作は全編オールロケで、アクションシーンもセットを使わずリアルな街並みで撮影され、スタジオ撮影中心だった従来の刑事ドラマとは一線を画した。銃撃戦、カーアクション、追跡劇は映画さながらの緊張感である。のちの『あぶない刑事』(1986)の都会派アクション、『踊る大捜査線』(1997)のリアリティ追求にも影響している。
プロットは、事件の背後にある人間の業や社会の歪みを掘り下げ、刑事が必ずしも正義の執行者でないことを描写した。「正義の揺らぎ」を描く刑事・公安系ドラマに繋がる思想的下地を作ったと言える。
本作がなければ、『踊る大捜査線『相棒』は生まれていなかった。日本の刑事ドラマはここで“映画化”され、現代性を手に入れたのである。
俺たちの勲章 あらすじ
横浜の架空警察署「相模警察」を舞台に、射撃の名手・中野祐二(松田優作)と心優しい五十嵐貴久(中村雅俊)の「はみ出し刑事」コンビが描かれる。ルール無視の冷徹さと感傷的な性格の対照的な二人は、地方出張ばかりだが、果敢な捜査で事件に挑む。傷つきながらも犯人を追いつめ、事件解決を通して刑事として、人間として成長していく。1970~80年代のハードボイルド刑事ドラマの雰囲気を彷彿とさせる、熱血と人間ドラマが融合した物語。
俺たちの勲章を観るには?
俺たちの勲章のキャスト
五十嵐貴久 – 中村雅俊
野上係長 – 北村和夫(第1話 – 17話・最終話)
山下刑事 – 早川保(第2話・第5話・第6話・第8話・第10-12話・第15話・第16話・第18話・最終話)
宮本コンピューター室長 – 柳生博
上野原 – 山西道広
雪子 – 坂口良子(第1-4話・第6-8話・第11-16話・最終話)
大塚香子 – 結城美栄子
健次 – 佐藤蛾次郎(第1-3話・第5-最終話)
中野の恋人 – 鹿間マリ