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グリーン・ゾーン

エイミー・ライアン(グリーン・ゾーン) 映画
エイミー・ライアン(グリーン・ゾーン)
グリーン・ゾーンは、ブライアン・ヘルゲランド脚本、ポール・グリーングラス監督のスリラー映画。アメリカ占領下のグリーン・ゾーンで起こるミステリー作品。
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神がかり的な編集のバグダッド夜間シーン(グリーン・ゾーンの感想)

ネオコンと反フセインのシーア派が画策し、ブッシュJrが2003年に始めたイラク侵攻は、すでに2004年10月には「大量破壊兵器は存在しない」という調査団の最終報告書が出て大義を失った。2010年に公開された本作は、原作に基づくセミフィクションでありながら、「ボーン」シリーズの監督と俳優による陰謀暴露エンタテインメントとして作られたため、「大量破壊兵器はデッチアゲ」とオチをつけられても、「それ知ってるし」という今さら感満載の残念な映画になってしまった(マイケル・ムーアは本作をホメながら、「愚かにも、アクション映画として公開されてしまった」と言っている)。

主人公(マット・デイモン)はアメリカ軍MET隊(移動捜索班)の上級准将で、バグダッドで大量破壊兵器の捜索を続けるも空振りばかりで、情報の信憑性を疑い始める。そもそも大量破壊兵器の情報をもたらしたのは暗号名マゼランで、エイミー・ライアン演じるウォール・ストリートジャーナルの記者(チェイニー副大統領の自作自演を垂れ流し、「大量破壊女」と呼ばれたNYタイムズの記者ジュディス・ミラーがモデル)はマゼランから入手したという政府高官の情報を裏も取らずに記事にしていた、というところから、マゼランが誰なのかを探り始めるというストーリーである。

夜のバグダッドでデイモンがマゼランを追い、それをさらに特殊部隊が追うというクライマックスは、暗い上にほとんどが手持ちキャメラによる撮影にもかかわらず、神がかり的な編集によって、観客には何が起こっているのかわかる、奇跡を実現している。

グリーン・ゾーン 見どころ

イラク戦争を題材に、戦争の現実と政治的な陰謀を描いたサスペンス映画。リアルな戦場描写と緊迫したストーリー展開が見どころ。案は、ジャーナリストのラジャフ・チャンドラセカランによるノンフィクション『インペリアル・ライフ・イン・ザ・エメラルド・シティ』。ポール・グリーングラスとマット・デイモンは『ボーン・スプレマシー』『ボーン・アルティメイタム』でもタッグを組んでいる。

  • 見どころ1. リアルな戦場描写
    手持ちカメラを多用したドキュメンタリータッチの映像で、戦場の臨場感と緊迫感をリアルに再現。まるで戦場にいるかのような感覚を味わえる。
  • 見どころ2. 政治的陰謀とサスペンス
    イラク戦争の開戦理由となった大量破壊兵器の存在に疑問を投げかけ、アメリカ政府内の陰謀を描く。戦争の裏側にある政治的な駆け引きや情報操作がスリリングに展開される。
  • 見どころ3. マット・デイモンの熱演
    マット・デイモンが正義感に突き動かされる兵士ロイ・ミラーを熱演。物語に深みと説得力を与えている。

グリーン・ゾーンのあらすじ

ロイ・ミラー率いるMET隊(移動捜索班)は、WMD(Weapon of Mass Destruction;大量破壊兵器)の隠された倉庫があるという情報で出動したが、そこは何もないただの廃工場だった。作戦の失敗はこれで3度目であり、ミラーは情報に誤りがあるのではないかと主張したのだが、上官はそれを無視しようとする。納得できないままの次の作戦の途上、イラン・イラク戦争を経験したイラク人フレディの情報提供をきっかけに、断片的な情報が段々と繋がっていく。アメリカ政府の高官パウンドストーンの妨害に合いながらも、戦争の原因たる情報の提供者「Magellan(マゼラン)」に同じく怪しさを感じるCIA捜査官や記者を味方につけ、隠された真実を追う。

グリーン・ゾーンを観るには?

『グリーン・ゾーン』で描かれたアメリカ政府の陰謀とは

主人公ロイ・ミラー(マット・デイモン)は、2003年のイラク侵攻直後、米軍の兵器捜索部隊のリーダー。彼はイラク国内でWMD(大量破壊兵器)を探すものの、発見された場所には何もない。ミラーは次第に、米国政府が拠り所にしているWMDの情報源「マジック・インフォメーション(Magellan)」が捏造されたものという疑いを持ちます。

マット・デイモンが突き止めたこと

  • 「Magellan」は、実在のイラク人亡命者だとされるが、その証言は存在しなかった
  • 情報を操作していたのは米国政府高官(映画では「クラーク・パウンドストーン」)で、イラクの政権転覆と親米政権樹立を目的とした政治的な策略だった
  • CIAや一部の報道関係者は懐疑的だったが、主流メディア(架空の記者「ローリー・デイン」)は政府の情報をそのまま報じてしまっていた

映画は最後に、ミラーがこの偽情報の証拠をマスコミに暴露しようとするシーンで締めくくられる。

現実世界で判明していること

映画はフィクションだが、実際の出来事に深く基づいている。

  1. イラク戦争の開戦理由
    アメリカ政府(ジョージ・W・ブッシュ政権)は、以下の理由で2003年にイラクへ侵攻した。
    • フセイン政権が大量破壊兵器(化学兵器・生物兵器・核兵器)の開発・保有をしている
    • フセインが国連決議を無視し、査察を妨害している
    • テロ組織(特にアルカイダ)との関係がある可能性
  2. WMDは実在したのか?
    戦後の調査で以下のことが明らかになった。
    • 大量破壊兵器は発見されなかった
    • アメリカが主張していた情報は、イラク人亡命者(通称「カーブボール」)による虚偽の証言や、裏付けのない諜報情報に基づいていた
    • CIA内部でも情報の信頼性には疑問がもたれていたが、政権上層部(とくに国防総省と副大統領チェイニー陣営)が情報を政治的に利用していた
    • 2004年のドゥルファー報告(Iraq Survey Group)では、「フセイン政権は1991年以降、WMDを製造・保有していなかった」と結論づけている
  3. 後の調査と証言
    • 2005年、アメリカ政府の公式調査報告書が、イラク戦争の開戦理由となったWMDの情報が「誤っていた」ことを認めた
    • イギリスでも、チルコット報告(2016年)において、開戦の正当性が十分ではなく、外交的手段が尽くされていなかったと批判された
  4. 映画と現実の対応関係

    項目 グリーン・ゾーン 実際の出来事
    主人公 ロイ・ミラー(米軍兵士) ミラーのような存在はおらず調査官
    情報源「Magellan」 架空のイラク人亡命者 「カーブボール」(ラフィド・アル=ジャンナービ)
    陰謀の中心 米国政府高官が情報を操作 実際にもブッシュ政権が情報を政治利用した疑いが濃厚
    メディアの描写 真相を追わず政府の発表を報道 ニューヨーク・タイムズなども後に報道姿勢を反省
    結末 真相を暴露しようとする 実際には戦後に誤情報と判明、政府は謝罪または弁明

    グリーン・ゾーンのキャスト

    ロイ・ミラー – マット・デイモン
    クラーク・パウンドストーン – グレッグ・キニア
    マーティ・ブラウン – ブレンダン・グリーソン
    ローリー・デイン – エイミー・ライアン
    ファリド・ラーマン – ハリド・アブダラ
    ブリッグス – ジェイソン・アイザックス
    大佐 – アントニ・コロン
    ムハンマド・アル=ラーウィー将軍 – イガル・ノール

    グリーン・ゾーンのスタッフ

    監督 – ポール・グリーングラス
    脚本 – ポール・グリーングラスブライアン・ヘルゲランド
    原案 – ラジーフ・チャンドラセカラン
    製作 – ティム・ビーヴァン、エリック・フェルナー、ロイド・レヴィン、ポール・グリーングラス
    製作総指揮 – デブラ・ヘイワード、ライザ・チェイシン

     

    『グリーン・ゾーン』は、戦争の現実と政治的な陰謀を描いたサスペンス映画です。この記事で少しでも興味を持たれた方は、ぜひ本編をチェックしてみてください。

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