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ある男

安藤サクラ(ある男) 映画
安藤サクラ(ある男)
「ある男」は、2022年に監督石川慶、主演妻夫木聡で実写映画。第79回ヴェネツィア国際映画祭オリゾンティ・コンペティション部門正式出品作品。第47回報知映画賞作品賞受賞。第44回ヨコハマ映画祭 脚本賞・撮影賞受賞。第46回日本アカデミー賞 最優秀作品賞を含む8つの最優秀賞を受賞。
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安部公房の読者には懐かしいアイデンティティの話(ある男の感想)

妻夫木君を、存在感がありすぎる3人の女優が取り巻く。
一人は太い義実家をもつ妻の真木よう子
事故死した男Xの妻安藤サクラ
そしてXが名乗っていた人物の元カノ、清野菜名である(原作では「三勝四敗主義」を唱える)。

3人の女が3様であるように、妻夫木君もまた事件を追ううちに分裂してゆく、というのが原作者の「分人主義」なのだが、このアイデンティティの問題は安部公房の読者には懐かしいものだろう。
中でも、柄本明演じるエキセントリックな戸籍交換屋は、すぐれて公房的な人物と言える。
奇しくも石井聰亙(石井岳龍)の「箱男」が今年公開されているので、見比べてみたい。

ある男 見どころ

亡くなった夫が実は別人だったという衝撃の事実から始まり、アイデンティティや人間の本質に迫る深いテーマを描く。

  • 原作者の平野啓一郎が提唱する「分人主義」(人は関係性によって異なる自分を持つ)という概念が映画に反映されている。妻夫木聡は、弁護士・城戸を演じる際、シーンごとの関係性に応じて異なる側面を見せるよう意識したという。
  • 城戸は在日コリアン三世という設定。この背景が他人として生きた「ある男」の物語と重なり、アイデンティティの複雑さを浮き彫りにする。
  • 本作は第79回ヴェネチア国際映画祭のオリゾンティ部門に正式出品され、国内外で高い評価を受けた。石川慶監督にとっては、『愚行録』以来2度目のヴェネチア参加。
  • 主演の妻夫木聡をはじめ、安藤サクラ、窪田正孝など実力派俳優が集結。窪田は名前も過去も変えて生きた男を繊細に演じ、観客に強い印象を残した。

ある男の原作のあらすじ

横浜在住だった里枝は離婚し、幼い息子を連れて故郷の宮崎に帰り、そこで出会った谷口大祐と再婚、新たに生まれた女児と4人で静かに暮らしていた。数年後に大祐は事故で他界するが、大祐が長年疎遠にしていた兄・恭一が法要に訪れ、遺影に写っているのは大祐ではないと言い出す。自分が結婚していた男が誰なのか悩み、離婚調停で世話になった弁護士・城戸章良に身元調査を依頼する里枝。城戸は本名不詳の男をXと呼び、調査を始める。

ある男を観るには?

ある男のキャスト

城戸章良: 妻夫木聡
谷口里枝: 安藤サクラ
谷口大祐(ある男X): 窪田正孝(幼少期: 伊藤駿太
後藤美涼: 清野菜名
谷口恭一: 眞島秀和
中北: 小籔千豊
谷口悠人: 坂元愛登(幼少期: 森優理斗
武本初江: 山口美也子
伊東: きたろう
柳沢: カトウシンスケ
茜: 河合優実
小菅: でんでん
谷口大祐(本物): 仲野太賀
城戸香織: 真木よう子
小見浦憲男: 柄本明
谷口花: 小野井奈々
城戸颯太: 岩川晴
高木: 芹澤興人
鈴木: 矢柴俊博
田島: 水間ロン
奥村: 山野海
城戸の義父: モロ師岡
城戸の義母: 池上季実子
黒木: 松浦慎一郎
坂崎の父: 中村シユン
坂崎の母: 眞田惠津子
小野信博: 小笠原覚
小林謙吉: 窪田正孝

ある男のスタッフ

原作:平野啓一郎『ある男』
監督・編集:石川慶
脚本:向井康介
音楽:Cicada
製作:髙橋敏弘、木下直哉、田中祐介、中部嘉人、浅田靖浩、佐渡島庸平、井田寛
エグゼクティブプロデューサー:吉田繁暁
プロデューサー:田渕みのり、秋田周平
撮影:近藤龍人(J.S.C.)
照明:宗賢次郎(J.S.L.)
美術:我妻弘之
録音:小川武
装飾:森公美
スタイリスト:高橋さやか
ヘアメイク:酒井夢月
VFXスーパーバイザー:赤羽智史
特殊メイク:中田彰輝
音響効果:中村佳央
助監督:中里洋一
スクリプター:藤島理恵
製作担当:前場恭平
プロダクションマネージャー:山田彰久
ラインプロデューサー:高根澤淳
プロデューサー補:鴨井雄一
音楽プロデューサー:高石真美
宣伝プロデューサー:湯浅正美
制作プロダクション:松竹撮影所
企画・配給:松竹
製作:「ある男」製作委員会(松竹、木下グループ、GYAO、文藝春秋、イオンエンターテイメント、コルク、松竹ブロードキャスティング)

『ある男』は、アイデンティティや人間関係の本質に迫る深いテーマを持つ映画です。この記事で少しでも興味を持たれた方は、ぜひ本編をチェックしてみてください。

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ある男の原作

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【第70回読売文学賞受賞作】
『マチネの終わりに』『本心』の平野啓一郎による、傑作長編。
人間存在の根源と、この世界の真実に触れる文学作品。
「愛したはずの夫は、まったくの別人でした──」
弁護士の城戸は、かつての依頼者である里枝から、「ある男」についての奇妙な相談を受ける。
宮崎に住んでいる里枝には、2歳の次男を脳腫瘍で失って、夫と別れた過去があった。長男を引き取って14年ぶりに故郷に戻ったあと、「大祐」と再婚して、新しく生まれた女の子と4人で幸せな家庭を築いていた。
ところがある日突然、「大祐」は、事故で命を落とす。悲しみにうちひしがれた一家に、「大祐」が全くの別人だという衝撃の事実がもたらされる……。
愛にとって過去とは何か? 人はなぜ人を愛するのか。幼少期に深い傷を負っても、人は愛にたどりつけるのか?
「ある男」の人生を探るうちに、過去を変えて生きる男たちの姿が浮かびあがる。
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