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古畑任三郎 ファイナル~ラスト・ダンス~

3.5
松嶋菜々子(古畑任三郎 ファイナル~ラスト・ダンス~) ドラマ
松嶋菜々子(古畑任三郎 ファイナル~ラスト・ダンス~)
田村正和演じる警部補・古畑任三郎が、ゲスト演じる犯人による犯罪のアリバイやトリックを話術と推理力で崩していくシリーズの完結篇の最終回(通算で第42回)で、2006年1月5日に放送。「犯罪者は、まず、私を葬るべきだった。」。
本作は、唯一、同一人物が作中で1人2役を演じており、シリーズで初めて古畑の内面へと迫る。真犯人だけでなく真の被害者も伏せられており、解決編で初めて明かされる。

三谷幸喜による探偵ドラマの優雅なる終曲(古畑任三郎 ファイナル~ラスト・ダンス~の感想)

「ファイナル」というのは、2006年の正月に3夜連続で放映したスペシャルなのだが、本作はその3夜目、文字通り最終話である。
松嶋菜々子があまり気乗りしない感じで二役を演じているが、そこがポイントになるであろうと思って注意してみていたにもかかわらず、特徴的な左目元のほくろは隠されていた。

幕切れで田村正和(見たのは追悼再放送である)がなぜか唐突に古畑としての昔話を始める。

古畑任三郎 ファイナル~ラスト・ダンス~のあらすじ

大野もみじ・かえで(松嶋菜々子、二役)は一卵性双生児の脚本家。2人で協力し、「加賀美京子」というペンネームで何本ものヒット作を飛ばし続けていた。人気推理ドラマ「ブルガリ三四郎」もその1本。先ごろ最終回を迎えたこの番組の打ち上げパーティーには、ドラマの監修をしていた古畑も招待され、大盛況のうちに終わった。華やかなテレビ業界での成功のためには、不得手な部分を補い合う姉妹の長年の共同活動があっての成果だったが、方向性の違いから二人の仲は軋みだし、ついに自殺を装った殺人事件として、コンビ解消の形を迎える。古畑はドラマの監修をした縁で捜査を担当することになるが、その先には予想外の結末が待っていた。

古畑任三郎 ファイナル~ラスト・ダンス~ 見どころ

刑事ドラマに“倒叙形式”というスタイルを確立した掉尾を飾る『ラスト・ダンス』は、シリーズの集大成にして、主人公・古畑任三郎そのものの「終わり方」に対する明確な三谷幸喜の回答である。

ゲスト・松嶋菜々子の存在と“ファム・ファタール”の系譜

ゲスト犯人役を務めた松嶋菜々子は、過去の犯人像の中でも異色である。
犯罪の動機や心理描写において「女の業」や「美しさゆえの哀しさ」を前面に出し、古畑と一種の情念的な“ダンス”を踊る存在として描かれている。
これまでの犯人たちはどれも合理的で、自らのプライドや名誉を守るために殺人に手を染めた者だったが、本作の松嶋演じる井口薫子は、感情的な暴走と人間的な未熟さという、一種の「脆さ」が魅力でもあり、事件をより人間臭くしている。

“探偵としての限界”を描く最終章

本作最大のポイントは、古畑が犯人の逮捕に直接的には成功しないという皮肉な結末にある。
ラストシーンで、古畑は「これが私の最後の事件です」と静かに語る。それは体力的限界のようなものを示すのではなく、“探偵という存在が、人間の本質に迫ることはできても、それを変えることはできない”という厳しい現実を受け入れた決断である。
「真相にたどり着いても、すべてが解決するわけではない」。
これまでのシリーズにはなかった余韻を残す“終わり方”なのである。

メタフィクションとしての“古畑任三郎の終わり”

三谷脚本は常にメタ的な要素を内包しているが、本作ではそれがより明確になる。
たとえば、古畑が“自分のシリーズが終わることを知っているキャラクター”のように振る舞う場面。まるで俳優・田村正和と三谷幸喜が互いに「お疲れ様でした」と語り合うようなセリフ回しが、視聴者に強い感傷を与えている。
古畑任三郎というキャラクターは、「田村正和だから成立した」と言われるが、ラストの語り口や立ち居振る舞いは、まさにそれを証明する“終わりの美学”だったと言える。

音楽・演出の熟成と、シリーズ的演出の総まとめ

テーマ曲やアイキャッチ、音の使い方に至るまで、すべてが“古畑らしさ”に満ちている一方で、カメラワークや編集にはどこか“静けさ”と“終焉”を意識した作為が感じられた。
エンディングにおけるゆっくりとフェードアウトしていく演出には、喪失感と敬意が込められていた。

古畑は勝ったのか、負けたのか──いや、**彼は“降りること”を選んだ。

古畑任三郎 ファイナル~ラスト・ダンス~を観るには?

古畑任三郎 ファイナル~ラスト・ダンス~のキャスト

古畑任三郎 – 田村正和(中学時代:山田涼介
今泉慎太郎 – 西村雅彦
西園寺守 – 石井正則(アリtoキリギリス)
向島音吉(東国原音吉) – 小林隆
大野かえで – 松嶋菜々子
大野もみじ – 松嶋菜々子(二役)

古畑任三郎 ファイナル・ラストダンスのスタッフ

企画 – 石原隆金井卓也
脚本 – 三谷幸喜
音楽 – 本間勇輔/オーケストレーション – 丸山和範、村田陽一(一部回数のみ)
撮影 – 川田正幸、木村祐一郎、川村明弘、竹内義仁、山岸桂一、川越一成
記録 – 奥康代、木下真理子、石塚早苗、戸井田望、西浦康代
CGタイトル – 岩下みどり(TECICO→pdic→ケネックジャパン)
演出補 – 近藤杉雄、北川敬一、小山田雅和、平野眞、森永恭朗、村谷嘉則、佐藤祐市、梅沢利之、宇田川尚良、岩田和行、北川学、八十島美也子
プロデュース補 – 柴田圭子、鈴木則子、橋本芙美、郷田悠
プロデュース – 関口静夫矢吹東(第39回)、柳川由起子(ファイナル)、永井麗子(古畑中学生)
演出 – 星護河野圭太松田秀知鈴木雅之佐藤祐市平野眞(今泉慎太郎)
制作 – フジテレビ、共同テレビ
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