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市民ケーン

ケーンの最初の妻エミリー(ルース・ウォリック) 映画
ケーンの最初の妻エミリー(ルース・ウォリック)
市民ケーンは、1941年のアメリカ合衆国のドラマ映画。原題は「Citizen Kane)」。オーソン・ウェルズの監督デビュー作で、世界映画史上のベストワンとして高く評価されている。ウェルズは監督のほかにプロデュース・主演・共同脚本も務めた。モノクロ、119分。RKO配給。
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市民ケーンの感想

新聞記者の中にはアラン・ラッドがいるらしいが、見分けられない。狂言回しの記者(ウィリアム・アランド)は常に背を向けており、顔が確認できない。

オーソン・ウェルズの監督作品といえば『市民ケーン』が有名だが、他の作品(『上海から来た女』、『黒い罠』、『審判』、『フェイク』、『秘められた過去』)はなかなか見返せない。ウェルズは監督としての才能を発揮しきれず、俳優として記憶に残る人になったとされる。

『市民ケーン』は、グレック・トーランドの撮影技法、スローモーションのモンタージュ、説話的なフラッシュバックで映画史に残る作品となった。しかし、新聞王ハーストが妨害し、サルトルも酷評した。擁護したのはアンドレ・バザンである。ハーマン・J・マンキーウィッツの脚本も優れていた(デヴィッド・フィンチャーの『マンク』の主人公はマンキーウィッツ)。

市民ケーン 見どころ

主人公ケーンが現実の新聞王ウィリアム・ランドルフ・ハーストをモデルにしたことから、ハーストによって上映妨害運動が展開され、本作は第14回アカデミー賞では作品賞など9部門にノミネートされながら、脚本賞のみの受賞にとどまった。
しかし、パン・フォーカス、長回し、ローアングルなどの多彩な映像表現などにより、年々評価は高まり、英国映画協会が10年ごとに選出するオールタイム・ベストテン(The Sight & Sound Poll of the Greatest Films of All Time)では5回連続で第1位に選ばれ、AFI選出の「アメリカ映画ベスト100」でも第1位にランキングされている。1989年にアメリカ国立フィルム登録簿に登録された。
今、本作はアメリカ映画史における金字塔とされる。その革新的な技法と複雑な構成は、映画芸術の可能性を大きく広げたとされる。

  1. 「ローズバッド」──謎から始まり、謎で終わる
    物語の起点は、新聞王チャールズ・フォスター・ケーン(モデルはウィリアム・ランドルフ・ハースト)の最期の言葉「ローズバッド」。彼の死をきっかけに、記者が彼の人生を探るという構成である。この謎解きの形式は、今日のミステリーや伝記映画に多大な影響を与えた。
    ラストでその言葉の意味が明かされることで、ケーンという人物の深層が静かに浮かび上がることで、観客は一種の“感情のパズル”を解かされるような体験をする。
  2. 非線形構成と多視点語り
    『市民ケーン』では、ケーンを直接知る者たちの証言が次々と提示され、同一人物を複数の視点から描くという複層的構成が採用された。文学ではすでに試みられていた手法だが、映画としては当時極めて斬新だった。
    この構成によって、ケーンは「英雄」「野心家」「孤独な子ども」などさまざまな側面を持つ多面的な存在として観客に提示され、彼の本質は一枚岩ではないことが示されている。
  3. 深度構成=ディープ・フォーカス撮影
    本作が革新的と言われる最大の理由が、撮影監督グレッグ・トーランドによるディープ・フォーカス(深度構成)の徹底的な活用である。前景・中景・背景のすべてにピントが合っており、観客は画面の隅々まで視線を動かし、能動的に物語を読み取らねばならない。
    これは演出の強力な武器であり、ケーンの成長や孤立を表現する視覚的メタファー(たとえば、幼少期の雪遊びの窓の外からの長回しなど)としても機能している。
  4. ケーンのモデルと社会批評性
    チャールズ・フォスター・ケーンは、実在の新聞王ウィリアム・ランドルフ・ハーストをモデルにしており、メディア帝国主義やアメリカン・ドリームの空虚さを象徴している。
    彼がいかにして富と名声を手にし、そして何を失ったのか。それは20世紀初頭のアメリカ社会が孕んだ矛盾──物質的成功と精神的荒廃の寓話として機能している。
  5. 孤独の物語としての普遍性
    『市民ケーン』は、壮大な社会批評の一方で、「たった一人の男の孤独」という極めて普遍的な主題も描いている。
    莫大な富と影響力を手に入れながら、心の中では「少年時代のソリ」を追い求めていたケーン。誰しもが持っている“取り戻せない時間”への郷愁が、観客の心に深く刺さる。
  6. すべての映画は市民ケーン以降に作られた
    『市民ケーン』は、技術的にも構成的にも演出的にも、モダンシネマの原点といえる存在である。1940年代の作品ながら、現代に至るまでその影響力は衰えておらず、映画芸術が単なる娯楽を超えて人間理解の手段たりえることを証明している。
    まさに「すべての映画は市民ケーン以降に作られた」と評される理由がある。

    ケーンの二番目の妻スーザン(ドロシー・カミンゴア)

    市民ケーン あらすじ

    新聞王チャールズ・フォスター・ケーンが「バラのつぼみ」という言葉を残して死亡。ニュース映画を制作する会社は、編集のジェリー・トンプソンに「バラのつぼみ」の謎を解くよう命じる。トンプソンは、ケーンの元妻スーザン、後見人サッチャー、旧友バーンステインとリーランド、執事を訪ね、ケーンの歴史を紐解く。

    市民ケーンを観るには?

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    市民ケーンのキャスト

    ※登場人物はすべてウェルズ主宰のマーキュリー劇団の役者である

    チャールズ・フォスター・ケーン – オーソン・ウェルズ
    ジェデッドアイア・リーランド – ジョゼフ・コットン
    スーザン・アレクサンダー – ドロシー・カミンゴア
    バーンステイン – エヴェレット・スローン
    ジェームズ・W・ゲティス – レイ・コリンズ
    ウォルター・サッチャー – ジョージ・クールリス
    メアリー・ケーン – アグネス・ムーアヘッド
    レイモンド – ポール・スチュアート
    エミリー・ノートン – ルース・ウォリック
    ハーバート・カーター – アースキン・サンフォード
    ジェリー・トンプソン – ウィリアム・アランド
    ジム・ケーン – ハリー・シャノン
    ロールストン – フィリップ・ヴァン・ツァント
    新聞記者 – アラン・ラッドアーサー・オコンネル

    市民ケーンのスタッフ

    監督 – オーソン・ウェルズ
    脚本 – ハーマン・J・マンキーウィッツ、オーソン・ウェルズ
    製作 – オーソン・ウェルズ

    『市民ケーン』は、映画史に燦然と輝く不朽の名作です。この記事で少しでも興味を持たれた方は、ぜひ本編をチェックしてみてください。

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