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恐怖の岬の感想
「帰らざる河」を見た後、ロバート・ミッチャムと「川」という連想から、ウン十年ぶりに「恐怖の岬」を再見。舞台は南部ノースカロライナ州のケープフィアー川。
お礼参りに来た前科者(パナマ帽に白いスーツのロバート・ミッチャム)にストーキングされる恐怖を描いたシンプルな映画だが、昔見た記憶ではもっと怖かったはずなのに、今見るとそうでもない。理由は、歌手としても活躍したポリー・バーゲンの演技が下手で、まったく魅力を感じないからだろう。ミッチャムに生卵を塗りつけられるシーンはヘイズコード末期の抑制された表現と思われるが、エロティシズムはほとんど感じられない。
主人公グレゴリー・ペックは弁護士だが、ミッチャムの不穏な言動を理由に、友人の署長に手を回して何度も別件逮捕したり、チンピラを雇って襲わせたりする。前科者に対する偏見的な警戒は今見ると違和感あるが、当時の感覚では普通だったのだろう。
ミッチャムは時間をかけて女をいたぶる本物の変態で、本命はペックの妻ではなく15歳の娘(ロリ・マーティン)。しかし、この子役も演技が下手だった。
ケープフィアー川での対決は、ペックの罠が杜撰で、ボートハウスに誘い込んだ理由も説明されない。ただ、水中で保安官を絞め殺すミッチャムの手練は、蛇のような執拗さで気味悪い。
恐怖の岬 見どころ
- ロバート・ミッチャムの不気味な怪演
主人公の弁護士一家を執拗につけ狙う元受刑者マックス・ケイディを演じるのは、ロバート・ミッチャム。暴力は直接的に振るわず、精神的な圧力と巧妙な手口で家族を追い詰めていく、ねっとりとした不気味な恐怖を表現している。口笛を吹いたり、皮肉な笑顔を浮かべたりしながら法の網をかいくぐる彼の存在が、生理的な嫌悪感と予測不能な不安を与える。 - グレゴリー・ペック演じる弁護士の苦悩
ケイディに執拗につけ狙われる弁護士サム・ボーデンを演じるのは、正義感あふれる役柄で知られるグレゴリー・ペック。法の力ではケイディを排除できない状況に追い込まれ、次第に自らも闇に足を踏み入れていく葛藤が描かれる。家族を守るため、そして自分の正義を貫くためにどこまで踏み込むのか、モラルと法の狭間での苦悩が見どころ。 - J・リー・トンプソン監督による緊迫した演出
「ナバロンの要塞」で知られるJ・リー・トンプソン監督がモノクロ映像の特性を最大限に活かし、影の表現、被写体をじりじりと追い詰めるカメラワークで、静かなる恐怖を演出。派手な暴力シーンは少ないものの、心理的なプレッシャーと、いつ何が起こるか分からない緊張感。 - バーナード・ハーマンによる不穏な音楽
ヒッチコック作品の音楽で有名なバーナード・ハーマンがスコアを担当。不穏で緊迫感あふれる楽曲が全体の雰囲気を支配し、観客の不安を煽る。 - 「フィルム・ノワール」的要素とモラルハザード
50年代フィルム・ノワールの特徴を色濃く残している。善と悪の境界線が曖昧になり、主人公が追い詰められていく中で、法が機能しない状況、社会のモラルが揺らぐ様が描かれる。正義と悪、復讐の連鎖といったテーマが掘り下げられている。 - クライマックスの嵐のシーン
クライマックスのケープ・フィアー(恐怖の岬)での最終対決は、荒れ狂う自然の中で繰り広げられ、極限のサスペンスを生み出している。逃げ場のない場所での心理戦と肉弾戦が効果的に描かれている。
恐怖の岬のあらすじ
弁護士のサムは妻のペギーと娘のナンシーとの3人で幸せに暮らしていた。だがある日、長い間服役をしていた性犯罪者のマックスという男が出所する。マックスは自分が牢屋に入れられたのはサムが証言したせいであると恨みを募らせており、サムへの復讐を開始する。マックスの目論みに気づいたサムは一家を守るために対抗手段をとる。
恐怖の岬を観るには?
恐怖の岬のキャスト
マックス・ケイディ – ロバート・ミッチャム
ペギー・ボーデン – ポリー・バーゲン
ナンシー・ボーデン – ロリ・マーティン
マーク・ダットン警察署長 – マーティン・バルサム
デーブ・グラトン – ジャック・クルーシェン
チャーリー・シーバース – テリー・サバラス
ダイアン・テイラー – バリー・チェイス
ジョージ・ガーナー – ポール・コミ
裁判長 – エドワード・プラット
恐怖の岬のスタッフ
脚本 – ジェームズ・R・ウェッブ
製作 – サイ・バートレット
音楽 – バーナード・ハーマン
撮影 – サム・リーヴィット
編集 – ジョージ・トマシニ
配給 – ユニバーサル・ピクチャーズ
上映時間 – 105分
「恐怖の岬」は、心理的な恐怖と緊迫感を追求した映画です。ロバート・ミッチャムの静かなる悪役ぶりと、グレゴリー・ペックの苦悩、そしてモノクロームの映像が作り出す独特な雰囲気を味わいたい方におすすめのサイコスリラーの傑作です。この記事で少しでも興味を持たれた方は、ぜひ本編をチェックしてみてください。