監督はセリーヌ・ヘルド、製作はM・ナイト・シャマランほか。
伏線の細部も楽しい複雑系タイムスリップ(キャドー湖の失踪の感想)
キャドー湖というアメリカ南部の地(ビッグフット伝説が生まれたところだという)が本作の舞台で、バイユーというミステリアスな湿地の織りなす迷路が本作のややこしさを表している。
映画は、青年が水没した車の運転席でもがくところから始まり、いかにもシャマラン節を感じさせる。事故の原因は母親の発作で、母親は溺死したのだが、青年(パリス)は納得がいかず、母親の発作と湖の水位の関係を突き止める。
それと並行して、再婚した母と義父との折り合いが悪い少女エリーの話が進行する。ある日、義父の連れ子アンナが失踪してしまう。
いつまで経ってもパリスとエリーが交わらないので、大抵の人は二人の時間軸が違うことに気づくだろう。実はパリスの事故は2003年、アンナの失踪は2022年なのだ。
パリスの恋人とエリーの母親がどちらも赤毛(演じているのはローレン・アンブローズとダイアナ・ホッパー)というのが伏線で、二人は1952年と2005年にタイムスリップして自分たちの運命がつながっていることを知る。
序盤に、下半身を斜めに切断されたワニの死体が出てくるが、これも伏線で、その切断面はラスト近くでエリーが見つめるロープの切断面と同じ。こういった細部があちこちに隠されていて楽しい。
キャドー湖の失踪のあらすじ
キャドー湖で母と継父と暮らす少女・エリーは母と仲が悪く喧嘩ばかりしていた。ある日、エリーの義理の妹・アンナがキャドー湖へボートを出して行方不明になる。
エリーはボートで湖の奥まで行きアンナを必死に探していた。ある地点を通過すると時間が1日前に戻っていた。湖にタイムリープする地点があることが判明。
一方、パリスは数年前の事故で心に傷を負っていた。パリスは母が運転する車の助手席に乗っていたが、母が発作を起こしてキャドー湖に落下。パリスは助かったが母は死亡したのだ。パリスも湖のある地点からタイムリープすることを発見し、母を救うために過去へ戻ろうとする。しかしパリスは湖の陸地で倒れていたアンナを発見し、事態は予想だにしない方向へ転がるのだった…。
キャドー湖の失踪 見どころ
『キャドー湖の失踪』は、タイムリープと家族の絆をテーマにした複雑な物語構造を持つ作品である。物語の伏線や象徴的なモチーフが巧みに配置されている。製作に関わっているシャマランの作品に見られるような予想外の展開や深いテーマ性が感じられる。
- タイムリープと時間の交錯
キャドー湖には、干ばつ時に出現するタイムリープの地点が存在し、登場人物たちは過去や未来へと移動するという設定により、物語は複数の時間軸が交錯する構造となっており、観客は時間の流れと因果関係を注意深く追わなければならない。 - 家族の絆と血縁の複雑さ
パリスがタイムリープを経てエリーの父親となるという事実が終盤で明かされる。失踪したアンナが過去に移動し、家族の一員として新たな人生を歩んでいたことも判明。家族の絆や血縁の複雑さを描いている。 - 象徴的なモチーフ
ネックレスや壊れた橋、ワニなどの象徴的なモチーフは物語の伏線であり、時間の循環や登場人物の運命を暗示している。ネックレスの模様が無限を表すように、物語自体も無限のループを描いているのである。 - 演出と演技
キャドー湖の神秘的な雰囲気が巧みに演出され、ディラン・オブライエンとエリザ・スカンレンはキャラクターの内面を繊細に表現している。
キャドー湖の失踪を観るには?
キャドー湖の失踪 キャスト
エリー – エリザ・スカンレン
シー – ダイアナ・ホッパー
アンナ – キャロライン・ファルク
ベン – サム・ヘニングス
ダニエル – エリック・ラング
セレステ – ローレン・アンブローズ
キャドー湖の失踪 スタッフ
製作 – M・ナイト・シャマラン、アシュウィン・ラジャン、カラ・ダーレット、ジョシュ・ゴッドフリー
製作総指揮 – キンバリー・スチュワード、ハリソン・ハフマン、ウィル・グリーンフィールド
脚本 – セリーヌ・ヘルド ローガン・ジョージ
撮影 – ローウェル・A・マイヤー
美術 – デビー・デビラ
衣装 – ベゴニア・バージェス
編集 – ローガン・ジョージ
音楽 – デビッド・バロシュ
キャスティング – レベッカ・ディーリー