宇野祥平の痩せた体が語る時の重さ(罪の声の感想)
先日、和田勉版「阿修羅のごとく」を見るためにNHKオンデマンドに入ったので、見逃していた「未解決事件」のグリコ・森永事件編を確認したばかり。予備知識なしで録画した本作を再生したらご存じの内容で、どうも個人的に事件後40周年記念になってしまった。
「ギン萬事件」ということになっているが(ギンガ・萬堂)、事件は細部までグリコ・森永をトレースしている。テーラーを営む星野源が、当時企業に送られた子どもの音声が自分のものであると偶然知るところから始まり、特集記事のために文化部から駆り出されて事件を追う新聞記者の小栗旬と中盤で合流する。当時使われた子どもの声は3種類。他の二人の子どもは誰で、今何をしているのかという話である。
映画人になる夢を砕かれた少女を演じる原菜乃華のエピソードはごくストレートに泣かせるもので、もう一人の宇野翔平のやつれた身体(首をくくる寸前)が一気にテーマに重みを与えていた。
ラスト近く、宇野翔平が棄てた母親と再会し、長女の声を聞きたいと乞われた小栗旬が、原菜乃華の声の録音を聞かせるのだが、この皮肉がかなりドラマチックだった。
事件の真相は途中から蔑ろになるのだが、それでもイギリスロケによって一応の解決を見せる。ここで出てくるのがまた宇崎竜童なのだが、それに続いて梶芽衣子の全共闘回想が入り(たしかに宇崎も梶もその世代なのだ)、ややしらけた。この終盤の組み立て方は失敗だったのではないかと思う。
野木亜希子・土井裕泰の「スロウトレイン」コンビ作品であり、「アンナチュラル」「MIU404」のキャストが目立つ。
映画 罪の声を観た人の感想
好意的な感想
- 小栗旬と星野源のダブルメインキャストで重厚感たっぷり。全く境遇の異なる二人の行動が徐々に繋がっていき、そこに至るまでの事件の背景を紐解く様々な証言が綺麗に結び付く展開は圧巻
- 起承転結がしっかりしていて途中間延びした感じもない
- 終始引き込まれっぱなし、圧巻。ものすごく重く悲しく胸が苦しくなるけど、最後はお母さんと聡一郎の未来に光が差す結末で良かった
批判的な感想
これは批判的といえるかどうか。。。
罪の声の見どころ
2020年10月30日に映画が公開。監督は土井裕泰、主演は小栗旬。小栗と星野源の初共演作品。第44回日本アカデミー賞で優秀作品賞を含む多数の賞を受賞し、批評家からも高い評価を受けている。特に、実際の事件を題材にしながらも、フィクションとして巧みに再構築された脚本と、主演二人の演技力が評価された。
原作は塩田武士のサスペンス小説(2016年講談社刊、2016年度週刊文春ミステリーベスト10国内部門第1位、第7回山田風太郎賞受賞)。
罪の声のあらすじ
平成終盤、大日新聞記者の阿久津英士は昭和最大の時効済み未解決事件を追う特別企画班に配属される。取材中、犯人グループが脅迫テープに使った3人の子どもの声が気になる。一方、京都でテーラーを営む曽根俊也は父の遺品から古いカセットテープを発見。再生すると幼い頃の自己の声だが、それは事件の脅迫テープと同一のものだった。俊也は知らぬ間に事件に巻き込まれていたのだ。真相を追う阿久津と、無意識に事件に関わっていた俊也ら3人の子どもたちの人生が、35年の時を経て激しく交錯する。
映画 罪の声を観るには?
罪の声のキャスト
曽根俊也:星野源(子ども時代:甘詩羽)
水島洋介:松重豊
鳥居雅夫:古舘寛治
生島聡一郎:宇野祥平(子ども時代:石澤柊斗、中学生時代:杉田雷麟)
生島千代子:篠原ゆき子
生島望:原菜乃華
生島秀樹:阿部亮平
曽根光雄:尾上寛之
林:水澤紳吾
青木龍一:山口祥行
立花幸男:堀内正美
藤崎勝:木場勝己
佐伯肇:橋本じゅん
臼井浩司:桜木健一
大島美津子:浅茅陽子
天地幸子:高田聖子
藤井清一:佐藤蛾次郎
秋山宏昌:佐川満男
山本志乃:宮下順子
ニシダ(仮名):塩見三省
須藤みち:正司照枝
三谷浩二:沼田爆
三谷晴美:岡本麗
津村克己:若葉竜也
葵(阿久津英士の姉):須藤理彩
曽根亜美:市川実日子
河村和信:火野正平
曽根達雄:宇崎竜童(若き日の達雄:川口覚)
曽根真由美:梶芽衣子(若き日の真由美:阿部純子)
罪の声のスタッフ
原作:塩田武士『罪の声』(講談社文庫)
脚本:野木亜紀子
音楽:佐藤直紀
主題歌:Uru「振り子」(ソニー・ミュージックレーベルズ)[17]
プロデューサー:那須田淳、渡辺信也、進藤淳一
撮影:山本英夫
美術:磯見俊裕、露木恵美子
照明:小野晃
録音:加藤大和
編集:穗垣順之助
助監督:藤江儀全
衣裳:宮本まさ江
記録:加山くみ子
制作担当:吉田智、間口彰
キャスティング:おおずさわこ
ラインプロデューサー:橋本靖
宣伝プロデューサー:江上智彦
配給:東宝
制作会社:TBSスパークル、フイルムフェイス
製作幹事:講談社、TBSテレビ、WOWOW
製作:「罪の声」製作委員会(講談社、TBSテレビ、WOWOW、TBSスパークル、トライストーン・エンタテイメント、ジェイアール東日本企画、TCエンタテインメント、朝日新聞社、毎日新聞社)
罪の声の原作
刊行たちまち、出版界が騒然!
累計80万部突破!!
「週刊文春」ミステリーベスト10 2016年 国内部門第1位
第7回 山田風太郎賞受賞作
第14回 本屋大賞 第3位
第44回日本アカデミー賞12冠 映画原作
昭和最大の未解決事件の〈真相〉に挑む。
「これは、自分の声だ」
京都でテーラーを営む曽根俊也。自宅で見つけた古いカセットテープを再生すると、幼いころの自分の声が。それはかつて、日本を震撼させた脅迫事件に使われた男児の声と、まったく同じものだった。一方、大日新聞の記者、阿久津英士も、この未解決事件を追い始め–。
圧倒的リアリティで衝撃の「真実」を捉えた傑作。